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あかみねくれは
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炭酸@サイダー🌠💙🎧️
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この作品はフィクションです。
実在する個人、団体などとは一切関係ありません。
ある国に、こどくな王子さまがいました。
その王子さまは、クリスタルのようにすきとおった白いはだのうつくしい男の子でした。
ある日、王子さまはとなりの国にも、王子さまがいることを知りました。
その王子さまは赤がすきで、いつも赤い服をきているということも、知りました。
白い王子さまは、赤い王子さまに会ってみたいとおもいました。
その子に会うために、おしろをぬけ出してさんぽをしていると、となりの国の庭に迷いこんでしまいました。
「どうしたの?」
とつぜんうしろから声をかけられて、王子さまはびっくりしました。
そこには、赤いドレスをきたお姫さまがいて、にっこりわらっていました。
お姫さまは、王子さまをひとめできにいりました。
「お花あげる。これ、にあうと思うんだ」
庭にさいていた、白いバラを1本折ってあげました。
王子さまはとてもよろこんで、代わりにこれを、とちいさな王かんの形をしたブローチをあげました。
そして、もらったバラの花を大切に両手でにぎって、かえりました。
「次に会うときは、ぼくがキミに、にあう花を持ってくるよ」
そんなやくそくをしてから10年、いろいろなことがあって、二人が出会うことはありませんでした。
しかし、ある日王子さまが歩いていると、見おぼえのある王かん の形をした
「ん、なんやこれ……あぁ、懐かし、笑」
家から出てきた児童向けの本。表紙の男の子がとあるメンバーもとい恋人になんとなーく似とって。それだけの理由で古本屋で衝動買いした代物やった。
ほんで帰って開いてみたはええけど途中からページが無くなっとる欠陥品で。
家の中のどっかにあるんちゃうかっていろんな場所を探した。けど、本棚に挟まっとるわけでもなく、裏に落ちてもない。当然何回見てもページが増えることなんか無くて、続きが気になるのに見つからんから知ろうにも知れん。
その古本屋にもっかい行って探してもらったけど見つからんし、返金しようかとか言われたけどなんとなく愛着湧いて手放せんかった。
そんな本が、今さら出てくるなんて。
「なぁ柔、これ覚えとる?」
「……? あぁ、三年前くらいに俺に似てるって買ったやつ」
「これの最後って、どんなんなんやろうな」
全体的な雰囲気が柔に似とる王子さまと、配色が俺と全く一緒なお姫さま。
おとぎ話の中の俺たちに似たこの子らも、二人で幸せに暮らしとったらええなあ。そんなことを漠然と考えながら、今日も俺は柔の白くて滑らかな頬にキスを落とす。
「ほな、俺仕事行って来るからええ子にしときや」
「ん、今日は19時までだよね。大人しくってるよ。… 行ってらっしゃい」
「行ってきます」
部屋の扉を閉める直前、もう一回だけ振り返った。
柔はまだ、さっきと同じ場所に同じように座っとる。目が合うと、少しだけ口角を上げて手を振ってくれる。
あぁもう、なんであんなに可愛いんやろ。
ほんまに可愛いなあ、俺の柔は。
こんなにも可愛い人が自分の帰りを健気に待っていてくれる。それだけで、今日も一日頑張ろうと思えるんやから不思議なもんよな。
「……よし」
俺は小さく呟いて、扉を閉める。そして流れるような動きで鍵をかけた。
個人仕事をこなして、グループの仕事もみんなで楽しくやって。
そういえばトイレットペーパーがもうなくなりそうだったから、買い物してから帰らなあかんな。
そんなことを考えながら一人でスーパーに足を踏み入れる。そしたら目に入ってくるのは柔の好きなもんばっかで。
これ買うて帰ったら喜ぶかなとか、たまに使っとるヘアオイルちょっと安なってるやんとか、前一緒に来たときこれ欲しがってたなとか。そんなことばっかり考えてまう。
でもやっぱ俺が大事にしたいのは柔本人であって、柔のことを考えとる時間ももちろん好きやけど正直早よ帰りたい。
目的のものをサッと取ってセルフレジでお会計して。夕飯どないしようかって思いながらタクシーを拾って家まで送ってもらった。
「ただいま、ええ子に待っといてくれた?」
柔がおる部屋に入る前に話し声が聞こえたから一瞬警戒したけど、ドアを開けた瞬間その警戒は無駄だったことに気付く。ただテレビを見とるだけやったみたい。
しかもめっちゃ集中しとるんか寝とるんかわからんけど、まあとにかくテレビの方からこっちに視線を向けん。それどころかおかえりさえも言ってくれん。
何見てたんやろって柔の隣に座ったら、ソファが大袈裟なくらいぐぅっと凹んだ。
パッと画面を見ると、丁度メンバーの一人である吉田仁人がバラエティに出とった。
「本日のゲストは、4人組アイドルグループであるM!LKのリーダー、吉田仁人さんです!」
「よろしくお願いしまーす」
仁ちゃんトーク力高いからなあ、こう言う頭の回転の速さとワードチョイスが重視される番組やったら映えるやろうな。
不意に仁ちゃんがカメラにすっぱ抜かれて、なんかフォーカス当てられるようなことがあったんやなってわかった。
「もう結成されてから10年以上経つんですよね?」
「あぁはい、そうです」
「下積みが長かったとお聞きしまして…」
「そ…うですねぇ、結構その…曲がヒットしなかったのと、メンバーチェンジとかもあって。今の5人に…」
プツリと小さく音が鳴ってテレビが消える。柔が起きたらあかんからな、あとテレビに出とる仁ちゃん見て変な気起こされてもたまったもんとちゃう。
もう二度と、柔に嫌な思いはさせとうない。柔から笑顔を奪うだなんて、絶対許せん。
そのためにも、芸能界みたいなところにはおるべきじゃない。悪い人からは、俺が守ってあげな。柔は俺がおらんとあかんのやから。
「ん”…ぁれ、おれ寝て……」
「おはよぉ、よう寝れた?」
「あ、しゅんおかえり。わかんない…けど寝ちゃってたみたい」
寝起きでまだぽわぽわしたままの柔はいつにも増してへにゃっと笑った、可愛い。
この笑顔が俺だけに向けられとるんが嬉しくて、もっと笑顔にしたくなる。俺が柔のために喜ぶことをしてあげたら、もっと俺だけの可愛い柔が増えるから。
早めに帰ってこれたから、柔の好物を作ってあげたい。それを一緒に食べて、美味しいねって言い合いたい。
柔が俺の料理を好きって言ってくれたから。どんなお店の料理よりも美味しいって、そう言ってくれたんよ。
やから、柔の血肉を構成するのは、俺が作ったご飯だけでええ。他の誰かが作った、何が入っとるかもわからんものなんか食べさせられへん。
「今日は柔が好きなチーズ買うて来たんよ」
「そうなの?嬉しい、ありがと」
「何になるか楽しみにしといてな!」
チーズと言う言葉を聞いて顔をほころばせる柔はなんか子供みたいでかわいかった。
好物とか趣味の話になるとほんまに幸せそうに笑うんよな。あと、俺が好きって伝えたときも。
「うん。…何か手伝うこととか、ある?」
「んや柔はここで待っとってくれたらええよ、全部俺がやったげるからな」
夕飯の話をすると、毎日何か手伝おうとしてくれる。可愛くて優しい俺の柔、でも火も刃物も危ないから使わせてあげられん。
俺の大事な柔が傷ついてしまう可能性のある場所になんて、よう連れていかん。その場所が外でも家でも関係ない。柔が心も体も元気で居られる場所を、俺が作ってあげんと。
買ってきたばかりの食材と日用品をガサッと袋ごと持ち上げて、部屋を出た。
「ごちそうさまでした」
「ご馳走さまー」
二人で夕飯を食べ終わって、食器を流しにつけて。
先に風呂に入っておいでと柔に言うと、ありがとうと微笑んで部屋を出ていった。多分下着とか部屋着を取りに行ったんやと思う。
柔は家から出ん日もちゃんと着替える。俺が不在の時に宅配とかが来たとして、寝巻きやったら出れんかららしい。
ファッションが好きで、見た目にちゃんと気を遣っとる柔らしい理由。
でも宅配の人やって、ええ人かどうかなんてわからん。ひょっとしたらナイフとか隠し持っとって、柔を刺してまうかもしれん。
もしかしたら柔の顔を見て柔やって気付いて、活動休止の理由について問うてくるかもしれん。
そんなことになったら、柔の心はいよいよ壊れてまう。やっと最近笑顔が増えてきたのに、今までの努力が無駄になってしまう。
「上がったよー、舜太もこの後すぐ入る?」
「ん、皿洗えたし入ろかな」
「じゃあ俺拭いとこうk…」
「ええよ置いといて、手滑って割れて破片で怪我とかしたら大変やし。な?」
にっこり笑いかけると、ありがとうとでも言うように柔も微笑を返してくれた。
あー可愛い、ほんまに可愛い。我慢しきれなくて早足で近づいていって。
天使みたいな彼をぎゅっと抱き締めると俺と同じシャンプーの香りがふわっと鼻腔を擽った。俺の匂いだけど、俺の匂いじゃない。
その事実が何ヵ月経っても興奮に直結してしまう。
コツンとおでこ同士をぶつけて、短いキスを落とす。1回だけじゃ足りなくて、2回、3回…回数が増して、体温が馴染めば馴染むほど、柔の身体からは力が抜けていく。
「…っん、ちょ舜、」
「んー?どうしたん」
「風呂は?入るんじゃないの」
「あ、そうやった。柔が可愛くてすっぽり頭から抜けてもーてたわ笑」
「もー…笑 ほら、早く行っておいで。上がってきたら今日もスるんでしょ」
へらりと笑うと呆れたように笑みを溢して早く風呂に入れと急かしてくる。
俺はまだ柔とおりたいのに…でも、風呂にさっさと入った方が結果的に柔と長くおれるんか?てことはいちゃつける時間も延びるやん!
頭の中で点と点が全部繋がって1本の線になった気がした。そうと決まったら早よ入るしかないな。
バタバタと部屋を出ると、後ろから柔の笑い声が聞こえた気がした。
「ふ…ぅ、ん、、」
静かな寝室に充満する微かな水音と柔の喘ぎ声。
顔を見られるのも声を聞かれるのも恥ずかしいからと、うつ伏せでぎゅっと枕を抱き締めている。
後ろから奥をトントンとノックするように突くと、その度に中が締まって可愛らしい声を漏らす。
俺が決定的な強い刺激を与えないと、シーツに自分のものを無意識に擦りつけて快楽を追っていて、それは恥ずかしくないんかなと思ったり。
まだ後ろだけじゃイけんみたいやけど、いつかは。俺がおらんと、俺じゃないとイけん身体にしてやろうと思いつつ、腹側の内壁をゆるゆると刺激する。
「は、…っぁ、あ、♡」
「あは、めっちゃ中締まった、…これ好きなん?♡」
「違、ぅ、♡違…から、ぁ、♡」
律動に合わせて震える身体が愛おしくて堪らない。
絶頂が近付いてくる毎に柔のそれの先っちょから垂れてきた先走りがシーツを濡らしてシミを作る。
違うとか、イきたくないとか、余裕が無くなって何も考えられんくなるとそんな言葉ばっかりを口にする。
ほんまは全然気持ちよくないんちゃうかとか思ったけど、反応を見る限りそんなことは無さそうで。嫌よ嫌よも好きのうち、ってやつなんかなぁ
「なぁんにも違わんよ、柔の身体はこれ好きやって言うてるやん」
「や、ぁ…っ、♡しゅ、ん、舜、」
多分その先に続くんは、イきそう、か、イきとうない。
柔は恥ずかしがり屋さんやからなぁ。
「も、イけない、出ないから、やめ…」
「んー?やめんよ、まだイけるからな、」
さっき以上にじっくりゆったりと柔の腹の中を犯しながら、片手で彼のものを掴んで、もう片方の手を下腹部に添えて軽く押してみる。
そうすると、俺のが中に入っとるんをハッキリ感じるからか、またぎゅうっと奥の方が締まる。
ものを掴んだ手の親指を先端に沿わすと、鈴口をぐりぐりと刺激して射精を促してみる。まあ、そんな上手いこといくわけでもなく柔から壊れたような喘ぎ声が漏れるだけで。
「はっ、…はぁ…っあ”、?!ぁ、っん、♡」
「ほら、まだイけるやろ?あと1回だけ、頑張ってや」
不意に流れ落ちていた先走りの量が減ってきて、代わりに鈴口が何かを吐き出そうと収縮し始める。
それを逃したくなくて、止められないのをいいことに弄りまくっていると、遂にサラサラした液体がプシャッと吹き出してきた。
同時に中が締まって俺も柔の一番奥で欲を吐き出して。
「ぁ…っ、あ、♡…は、ぁ…」
「柔?大丈…夫、とちゃうか…?」
ぴくぴくと痙攣しながらも、枕を抱きかかえて余韻から一生懸命抜け出そうとしとる姿が官能的でどうしようもなくて。
急にキスをしたくなって顔を此方へ向けると…やりすぎた、?焦点は合っとらんし、呼吸は浅いし。戻ってこられへんようになってもーてるわ…
今日の片付けも俺担当かな…掃除とか苦手やけど、柔のためでもあると考えたら気が楽で。
とりあえずまだ挿れっぱなしやった自分のそれを抜いて、下着だけ適当に履いて。
柔を綺麗にして服着せてシーツも買えて…次々とやることの計画を立てながら、とりあえずタオルを持ってこようと扉を開けた。
『舜太ー、探してた本あったよ、完全版』
…くそ、折角送ってやったのに気付かねえ。まあそうか、24時間営業のこの店とそこに今居る俺がおかしいだけで、今の時間帯、人は普通に寝てそうだし。
俺の手元にあるのは舜太がずっと探していたあの本で間違いないだろう。
先が気になって開いてみると、結末に何となく引っ掛かった。
柔太朗に似た王子様と、舜太に似たお姫様。
5ヶ月とちょっと前に失踪した柔太朗と、城に連れ帰られた王子様…?
まさかね。
奇妙にリンクするその状況へ生まれた疑問は誰にも言えないまま、俺はその本を閉じるしかなかった。
ある国に、こどくな王子さまがいました。
その王子さまは、クリスタルのようなすきとおった白いはだのうつくしい男の子でした。
ある日、王子さまはとなりの国にも王子さまがいることを知りました。
その王子さまは赤が好きで、いつも赤い服をきていると言うことも、知りました。
白い王子さまは、赤い王子さまに会ってみたいと思いました。
その子に会うために、おしろをぬけ出してさんぽをしていると、となりの国の庭に迷いこんでしまいました。
「どうしたの?」
とつぜんうしろから声をかけられて、王子さまはびっくりしました。
そこには、赤いドレスを着たお姫さまがいて、にっこり笑っていました。
お姫さまは、王子さまをひとめ見て、すてきな人だと思いました。
「お花あげる。これ、にあうと思うんだ」
庭にさいていた、白いバラを1本折ってあげました。
王子さまはとてもよろこんで、代わりにこれをと小さな王かんの形をしたブローチをあげました。
そして、もらったバラの花を大切に両手でにぎって、持ってかえりました。
「次に会うときは、ぼくがキミに、にあう花を持ってくるよ」
そんなやくそくをしてから10年、色々なことがあって、王子さまとお姫さまが出会うことはありませんでした。
しかし、ある日王子さまが歩いていると、見覚えのある王かんの形をしたブローチをつけた、背がたかい男の人に出会いました。
その人は王子さまに近づいてくると、いきなり手をとって言いました。
「…あぁ、やっと見つけた。おれの、うんめいの人」
王子さまは、何のことか少しもわかりませんでした。
しかし、その男の人とどこかで会ったような気はしていました。
つづけて男の人は、王子さまにしつもんをしました。
「おれのことわすれちゃった?…もしかして、あの時スカートをはいていたから、お姫さまだと思った?」
そう、この人は10年まえにあの庭で会ったお姫さまだったのです。
王子さまが探していた、となりの国の赤い王子さまと言うのは、じつはあの時のお姫さまでした。
赤い王子さまは、白い王子さまに小さな何かをあげました。
「これ…?」
「ティアラの形のブローチだよ。10年まえに、あなたから王かんのブローチをもらったから」
こうして再会した二人は、とても仲良くなりました。
二人でご飯を食べたり、庭をさんぽしたり、時には一緒に寝ることもありました。
そして、ある時赤い王子さまは白い王子さまにこう言いました。
「おれと、けっこんしてください。」
白い王子さまはにっこりとほほえみました。
そして王子さまは、おしろで幸せにくらしましたとさ。
いつから眠っていたんだろうか。同じベッドで眠る舜太の腕からこっそり抜け出して、ベッドの端に座る。
サイドテーブルに置いてあったスマホが突然光って、誰かからのメッセージが来たことを告げた。
『舜太ー、探してた本あったよ、完全版』
「…仁ちゃん」
かつて同じステージに立っていたメンバー。普段は色々とおぼつかないところがあれど、いざとなると頼りになる俺たちのリーダー。
彼に連絡したい、俺はここに居るよって伝えたい。なのに、彼がメッセージを寄越したのは俺ではなく俺の恋人で。
パスワードは知らない、生体認証だって彼の顔や指紋を使っても何故か開かない。
俺のスマホは、この生活が始まったと同時に預かられてしまって何処にあるのかすらもわからない。
「会いたいな、」
久々に漏れた、俺の本音。今も、これからも、誰にも届かずに消えていく俺の本心。
ふとあの本を思い出す。舜太が買って帰ってきた日のこと、楽屋で5人であれを見て続きを探そうと話した日のこと。
あの時は幸せだった。
…いや、今も幸せなのかもしれないけれど。
どうせ起きていたって何も出来やしない。舜太の腕の中に戻って目を瞑る。
「……ん、?どしたん柔、何かあったん?」
眠そうな声が上から聞こえてきて、俺の体温を確かめるようにぎゅっと抱き締められる。
冬じゃなかったら、突っぱねちゃってたかもなぁ。
「んーん、ちょっと目覚めちゃっただけ」
「そ…かぁ、まだ3時とかやし二人で二度寝しよか…」
数分もすれば規則正しい呼吸音が耳に届く。もう寝たのか…いやさっき起きたのだって、寝ぼけてたしほぼ寝てるようなもんか。
となると次に舜太が目を覚ますのは…、ぼーっと考えていると、またスマホの画面が光った。
目に飛び込んできた文字を追って、意味を理解した瞬間に視界が水滴でぐにゃりと歪む。
あぁ…まだ、俺のことを覚えていてくれる人が居たなんて。
『柔太朗が帰ってきたらまた5人で読むか』
…帰らなきゃ、俺の居るべき場所はここじゃない。俺が居たい場所も、ここじゃない。
ありがとう、仁ちゃん。
光っていた画面が消えて真っ暗になり、常夜灯を反射してオレンジ色の円をぼんやりと作る。
大丈夫、なんとかなる。なんとかする。
自分の胸を拳でトントンと軽く叩いてから、抽斗から観葉植物の手入れ用に買っておいた鋏を取り出して震える手で柄の部分を強く握った。
「…舜太、一緒に帰るためだから。ちょっとだけ我慢してね」
今日は月が綺麗だな。
月光に照らされて、手元の鋏がギラリと鈍く光った。
コメント
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読み終わりました。童話パートのほのぼのした可愛らしさと、現実パートのじわじわとした閉塞感のギャップがすごく効いてますね。白と赤の対比、ブローチの受け渡しが二人の関係を象徴していて美しいなと思いました。でも、舜太さんの「守ってあげる」が段々支配に変わっていく感じが…。最後の鋏、あれが何を意味するのか、続きがすごく気になります。伏線の貼り方が上手いですね、いなりさん。