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瞬間移動で魔王城に戻る。エンダーマンの能力の応用だから、少し体力を使われる。
「りーちゃん、なんで村なんかに行ってなにもせずに帰ってきたの?」
「そーだよ。村人何人かはやれたんじゃない?」
俺の側近、ぺんちゃんとまろくんが話しかけてくる。
「…あくまで偵察だからね。」
「そーお?ま、別にいいけどね。全ては魔王おんりーさまの仰せのままに、なーんてね。」
「なーんてね、じゃないよまろくん。」
そう。俺は魔王。突然言われた。
『貴方には、この世界の魔王になっていただきます。』
「….は?」
気がつくとそこは、なにもない空間だった。
目の前にいたのは一人の女性…というか、多分所謂女神様ってやつかな。そんなことより…
「魔王?せめて勇者とかではなく?」
『はい。公正な手続きの結果、貴方にはこちらの世界の魔王となっていただきます。』
「…こちらの世界。」
そういえば、さっきまで自分が何をしていたのか思い出せない。
『はい。魔物と人間が混在する世界です。あなたにはそこで、魔物を統べる魔王となっていただきます。魔王は不老不死の体を持つことができます。』
「…さっきから話が進んでないんだけど?魔王?不老不死?意味が分からない。」
『当然です。この状況で理解できるとは思ってません。ただ、先に申し上げておきますが、貴方に拒否権はありません。』
「….なんでだよ。」
『公正な手続きの結果ですので。』
「…話が通じそうにないな。それで?俺は何をしたらいいんですかね。」
『こちらの世界に来ていただき、魔王としてすべきことをしていただきます。』
「…すべきこと。」
『はい。あと、貴方のお仲間もこの世界に来る予定です。ただ、貴方の記憶はありませんが。』
「…記憶がない?会っても分からないってことか。」
『はい。そしてもうひとつ。不老不死なのは、貴方魔王ともう一人、勇者です。』
「…たいていのRPGだと、俺はその勇者に倒されるけどね。」
『ここでは、貴方次第です。』
「…?」
『そろそろ時間です。貴方を転送します。』
「え?わっ….」
『….ご武運を。』
というわけで、気づいたらこの魔王城にいたのだった。
側近として、ぺんちゃんとまろくんがいるけど、二人に記憶はない。女神様が言ってたのは多分こーゆーことなんだろう。
ちょっと寂しくはあるけど、この二人は魔物だから普通の人よりも寿命が長い。まぁ、不老不死に比べたら短い時間だけど。
そして、自分なりに仮説を立てながらこの世界を見てきた。
この世界はマイクラに近い性質を持つらしい。
でも、マイクラ世界にはない建造物や人間の王国もある。そして俺が統制する魔王軍も。
多分だけど、勇者が俺を倒しに来るまで、俺は永遠に魔物の王として生き続けなければいけないんだと思う。
永遠に。きっと、この世界が滅びるまで。そのころにはもう、俺の周りにはかつての仲間は誰もいないんだろう。
そう考えていたときだった。
ふと、ドズル社メンバーはこの世界にいるのかが気になって調べた。魔王だからか結構なチート能力が与えられていて、調べるのは容易だった。
そこで、ぼんさんが勇者になっていることを知った。
きっと記憶はない。でももしかしたら、と思って。一縷の望みに賭けて。
村に行ったときに会いに行った。
もし覚えているのなら。いや、覚えていなくてもいい。この世界で俺と生きられるのは勇者だけ。同じく不老不死の体を持っている人間。
…きっと俺と同じように悠久の時をたたかいに費やさなければいけないのなら。俺の隣にいて欲しかった。
でも───
「…おんりー…?」
いつもみたいに呼んでくれない。
きっとあの人の目には”魔王”しか写っていない。
現実は残酷だ。
だから、もう俺には待つことしかできない。
勇者のあなたが俺のところにくるのを。