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コメント
1件
うわ、第19話、めっちゃカッコよかった…!「海では接敵しなくても命の危険がある」って冒頭の一文で一気に引き込まれた。クラーケンは所詮イカだけど、海って立地が最強の武器になってるのが本当に厄介で。でもそこに「本来の姿を解放」したお嬢様?が潜り込んで、逆にクラーケンを蹂躙する展開が気持ち良すぎた…。普段の優しさとのギャップがたまらないです。
海での戦は、陸での戦と本質が違う。
陸で戦う場合には、接敵して相手から攻撃を受けることでダメージを負う。
だが、海では接敵如何に関わらず命の危険を伴う。
船から一歩足を踏み外せば、そこは大海原。
ちっぽけな人間の命など、容易く刈り取ってしまう。
それを分かっているからだろう、人間達は仰々しい船を用意して、その上で精一杯の虚勢を張っていた。
軍船の上で兵を指揮するのは、地獄で六十もの軍団を指揮する生粋の兵法家アビゴールだ。
彼奴が率いている以上、この戦に負けはない。
だが、海の上では如何なアビゴールとて、本領発揮は出来ないだろう。
クラーケンは、所詮はただの大きくなりすぎた魔物――巨大なイカだ。
ろくな知性もなく、ただ闇雲に人を襲うのみ。
恐るるに足らず。
しかし海という絶対的な立地が、クラーケンを強者にしていた。
船の上から攻撃を行うのでは、あまりに効率が悪い。
何より、あのイカは不利になれば海中に引っ込んでしまう。
そうなれば、陸の生き物達には為す術がない。
これがクラーケン退治が難航する一番の理由だ。
「まったく、仕方ないわねぇ」
お嬢は、優しい。
優しすぎるくらいだ。
アビゴールの実力を信じていない訳ではない。
だが、彼女は兵達に犠牲が出るのが嫌なのだろう。
その甘さ、嫌いになれないのよねぇ。
仕方ないから、アタシが一肌脱いであ・げ・る。
ぴしゃんと、水飛沫が飛ぶ。
アビゴールが指揮する軍勢は的確にクラーケンを包囲しているが、それでも唯一塞ぎきれない場所がある。
それが海中だ。
ざぶんと、海に潜る。
寸前、船の上で兵を指揮する知将と一瞬目が合った気がした。
アビゴールが率いているんだから、どうなっても平気でしょう。
それくらいの信頼は置いている。
銛と魔法で傷付いたクラーケンが、もう何度目になるか分からない海中への逃走を試みる。
その瞬間船上で指揮官が号令を発し、何艘もの船が勢いよく引いていった。
いい判断だわ。
兵士達は訳が分からないだろうけど、それでもアビゴールの指示に従ってくれている。
良い部下達ね。ちゃんと統率が執れている。
海中を潜れば、すぐにクラーケンと遭遇した。
人間姿のアタシとでは、比べものにならないほどの巨大さ。
うねる足を伸ばせば、小さな森の一つくらいは飲み込むんじゃないかしら。
クラーケンにとって、海に落ちた人間などただの餌に過ぎないのだろう。
吸盤のついた足を伸ばし、ぐわりとこちらに迫ってくる。
でも、残念ね。
海を住処としているのは、アナタだけじゃないの。
本来の姿を解放すれば、海が悲鳴を上げる。
湾全体がぐらりとうねり、波打ち際の岩が音を立てて崩れ落ちる。
クラーケンの伸ばした足が、水中を無様に掻く。
ふふ、きっと自分より大きな生き物なんて見たことないんでしょうね。
こんな小さな湾内で王様気取りだったようだけど、こういうのって何て言うんだっけ。
東洋では確か、井の中の蛙とか言っていたような……?
アタシにかかれば、アンタこそただの餌に過ぎないの。
お得意の海で、逃れることも出来ず、ただ一方的に蹂躙されるだけの恐怖――
……存分に味わうがいいわ。