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𝐀𝐘𝐀_

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メイ
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第二部
第十章 「ただいま」の帰る場所
春が終わり、初夏の風が吹き始めた頃。
結城家の朝は、今日も変わらず穏やかだった。
「にぃに、おはよぉ。」
「おはよう、ちーちゃん。」
毎朝の健康チェック。
体温。
顔色。
喉。
呼吸。
「今日も元気。」
「ごうかく?」
「もちろん。」
「やったぁ。」
いつもと変わらない笑顔。
千景は千弥の頭を優しく撫でた。
「大学、楽しんでおいで。」
「うん!」
大学へ送り届けた帰り道。
車を運転しながら、千景はふと笑った。
(最近、本当にちーちゃんには驚かされる。)
「ふたり、おたがいのこと、すっごくだいすきなんだね。」
「やきもち?」
何気ない一言。
けれど、その一言のおかげで、自分の心から目をそらせなくなった。
遥のことを考える時間が増えた。
笑っていてほしいと思う。
疲れていたら休んでほしいと思う。
誰かに誘われると胸がざわつく。
(もう答えは出てるんだ。)
ハンドルを握りながら、小さく息をついた。
会社。
「おはよう、ちか。」
「おはよう、はる。」
いつもの朝。
だけど今日は少し違った。
「……。」
目が合う。
二人とも自然に笑う。
その笑顔だけで安心する。
「今日の会議、午後には終わるよ。」
「じゃあ帰りは少し早くなりそうだね。」
「うん。」
ほんの少しの会話。
それだけなのに、心が温かい。
昼休み。
社長室。
珍しく二人とも仕事が一段落していた。
静かな部屋。
窓から差し込む柔らかな日差し。
「はる。」
「ん?」
千景はカップを置いた。
「少し話がある。」
その真剣な声に、遥も表情を改める。
「どうしたの?」
千景は少しだけ笑う。
「ちーちゃんのおかげで、分かったことがある。」
「……。」
「最初は親友だからだと思ってた。」
「うん。」
「でも違った。」
遥は静かに息をのむ。
「僕は。」
少しだけ照れたように笑いながら続ける。
「君が笑っていると嬉しい。」
「君が落ち込んでいると苦しい。」
「誰かと親しく話していると、嫉妬した。」
「それを認めたくなかった。」
「……。」
「でも。」
千景は真っすぐ遥を見つめる。
「もう誤魔化せない。」
部屋が静かになる。
「はる。」
「はい。」
「親友としてじゃなく、一人の大切な人として、これからも隣にいてほしい。」
「僕は……君が好きだ。」
その言葉に、遥は目を閉じた。
ずっと待っていた言葉。
高校生の頃から、何度も夢見た言葉。
「……ずるいよ。」
遥は小さく笑う。
「そんなこと言われたら。」
目を開けると、少しだけ涙が浮かんでいた。
「僕なんて、高校生の頃からずっと好きだった。」
「……え?」
今度は千景が驚く番だった。
「言わなかっただけ。」
「親友でいられなくなるのが怖かったから。」
「だから、ずっと隠してた。」
千景は思わず笑ってしまう。
「同じだったんだ。」
「うん。」
二人は顔を見合わせる。
自然と笑顔になる。
長い年月をかけて、ようやく同じ場所へたどり着いた。
千景はそっと手を差し出した。
「これからも、一緒にいてくれる?」
遥は迷うことなく、その手を握る。
「もちろん。」
二人の手が重なる。
高校生の頃から何度も並んで歩いてきた二人。
今日初めて、その手を”恋人”として握った。
夕方。
大学を終えた千弥は、いつものように会社へやって来た。
「こんにちは。」
受付の社員たちは笑顔で迎える。
「ちーちゃん!」
「今日も可愛いね。」
「社長室にいるよ。」
「うん!」
カードキーを使い、最上階へ向かう。
コンコン。
「ただいま。」
「おかえり。」
いつものように迎えてくれる二人。
だけど。
「……?」
千弥は首を傾げた。
何かが違う。
二人の雰囲気が、いつもより柔らかい。
「にぃに。」
「ん?」
「はるにぃ。」
「なあに?」
千弥は二人を見比べる。
そして、ふわっと笑った。
「あ。」
「どうした?」
「ふたりとも。」
「うん。」
「もっと、なかよしになった。」
千景と遥は思わず顔を見合わせる。
「分かる?」
「うん。」
「なんとなく。」
千弥は近付いて、二人の手をそれぞれ握った。
「はい。」
そう言って、二人の手をそっと重ねる。
「これでいい。」
「ちーちゃん。」
「?」
「ありがとう。」
千景が優しく言う。
「え?」
「君のおかげで、大切なことに気付けた。」
遥も頷く。
「本当にありがとう。」
千弥はきょとんとしたあと、嬉しそうに笑った。
「えへへ。」
「ちぃ、なんにもしてないよ?」
「ううん。」
千景は千弥の頭を優しく撫でる。
「君がいてくれたから、僕たちは前に進めたんだ。」
千弥は照れくさそうにくぅちゃんを抱きしめた。
「じゃあ。」
「うん?」
「みんな、しあわせ?」
千景と遥は同時に答えた。
「幸せだよ。」
その返事を聞くと、千弥は満面の笑みを浮かべる。
「よかったぁ。」
その笑顔は、二人が何より守りたい宝物だった。
夕焼けに染まる社長室。
兄弟としての絆。
親友から恋人へと変わった二人の想い。
そして、そのすべてを優しく結んだ千弥の純粋な心。
結城家の「ただいま」と「おかえり」は、これからも変わらない。
ただ一つ変わったことがある。
それは、この家に帰る人が、もう一人増えたということだった。
ーーー
第二部 第十章〜完〜
コメント
1件
みぃちゃん、読んだよ…🥀 この章、本当にあったかくて何度も読み返した。 千景が自分の気持ちを受け入れて、遥に「好きだ」って伝えるシーン、ずっと心臓がドキドキしてた。遥も高校の頃からずっと隠してたのに、涙ぐんで「僕なんて、高校生の頃からずっと好きだった」って…重ねた年月が愛しすぎるよ。 ちーちゃんが二人の手を重ねて「これでいい」って言うところ、胸がぎゅっとなった。帰る場所がもう一人増えたエンディング、すごく好き。お疲れ様、𝐀𝐘𝐀_さん。 (※連載中で続きがあればそっと待つね🌙)