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「では、最初だしいきなり実験という形でもいいが、とりあえず諸君に配っておこう。これが魔石くずと世間では言われている産業廃棄物だ。この魔石くずは現状そのまま捨てて地面に埋められる作業が行われるだけになっているが、私の研究……これはオープンキャンパスの時にゼミに遊びに来てくれた人なら知っている内容だが、エネルギー総量としてはこの一つの魔石から消費されたエネルギーの三倍のエネルギーが内包されていることが既に測定値から割り出されている」
この辺は二回とも遊びに来たオープンキャンパスで説明してもらったな。
「確か……現状ではスキル行使時にそのエネルギーを取り出すことで残りのエネルギーを完全に使い切ることができる、ということでしたか」
朝日奈君が質問をする。この少人数だ、毎回手を挙げて指さして話す……という煩わしい話し方をするよりも、この人数だしそれぞれある程度言いたいときに言いたいことを言える環境のほうがよりスムーズにことも進むだろう。
「そのとおりだ。ちなみにそれを目の前で実証してくれたのがそこのみき太君……と、この呼び方はこれからは失礼だな。本条君になる。彼は探索者としてそこそこの腕前も持っているからそこからスキルも入手することができたらしい。当ゼミではフィールドワークをする予定はないが、もしフィールドワークが必要な状態……例えば、全力ブッパしたらどのぐらいの威力のスキルが行使できて自分の魔力……ゲーム的に言えば魔力だな。そいつを使わなくてもお守りや外部タンクとして使いまわすことができる、といった具合に実践を踏まえた環境が必要にならない限りは基本的にデスクワークだと思ってくれていいぞ。私みたいに体力がなくてもできる仕事でもあるからな」
教授がコーヒーを注いで自分で飲んで、カップを置きながら講義の続きをする。ゼミだから許されるのか、この人だから許されているのか、そもそも許されてないのかはわからない。
普通にコーヒー飲みながら講義の内容を進めていく大泉先生に不安が少しよぎるが、まあ、その方が講義が早く進んで話し合いの機会や相談、それから今後どのようにして講義内容を進めていくか、等が確実に進んでいくならそれもまたヨシかな。
「現状では、人というインターフェイスを通してならば魔石の内包エネルギーを解き放つことができる、というところまではわかっているので、あとはこれをどのような形で実験ができれば人の手を介さず持続的にエネルギーを放出できるのか、という部分がこれからの研究課題になる。どんな手段や方法でもいいので、人という人件費を可能な限り排しての自動化が最終的な課題になるが、もしもエネルギー効率がいいならば人を介した状態でのエネルギー放射、再発電用の電力供給という形での人材確保が必要となってくる。その点では……少し期待して良いんだろう? 」
合法ロリがこっちを向いてニヤリとする。どうやらかなり便利な道具として使い倒す気満々らしい。使われるために来たわけではないが、まあ、そのぐらいは許容範囲と言えなくもないだろう。
「まあ、そうですね。できることがある以上やらないのはもったいないですから」
「そう言ってくれるとありがたいよ。では、早速実験ではないが、前回のゼミの続きからやろうか。朝日奈君と本条君たちは初顔合わせにもなるわけだし、同期同士で仲良くやってくれると嬉しいね」
早速魔石くずを手に取る。そして朝日奈と向かい合い、それぞれの魔石くずを見せあって話をまとめ始める。
「朝日奈はダンジョン探索者経験はあるのか? より確実に答えを言うならば、いわゆる遠距離攻撃手段としてのスキルを保持しているかどうか、という質問になるが」
「僕は三月生まれでね、そもそもダンジョン探索者になる余裕すらなかったよ。そういう君は何月生まれなんだい? 聞いている話の間だとかなり早くにダンジョン探索者になったようだけど」
「ああ、俺は四月生まれだったんだ。だからダンジョンにもかなり早い時期から潜り込むことが出来たし、結構深いところまで行くことが出来ている。その副次品というわけではないが、いくつかのスキルスクロールを拾って身に付けることが出来ているんだ」
「なるほどね。運のほうもかなり良かったわけか。僕は自分が潜れないから、勉強に貴重な一日を使って探索者講習を受けて、合格発表の後に探索者免許を持ったのは良いけど、結局今日までダンジョンに潜ったことはないんだ」
生まれ月の差か……残酷だが、これも仕方がないシステムではある。半年前から免許交付のための手続きだけでも終わらせられるのがまだ救い、と言えばそうなのだろうな。
「まあ、そんなわけで今持たされた魔石からエネルギーとして魔石の中の力を使っていくと、威力が上昇するわけではないが持久力……つまり行使時間が伸びるのは確認できた。そして……他のスキルでも同じように使えるかどうかはまだ試していない」
「試してないっていうのは、他にスキルを覚えてないという意味かい? それとも純粋に実験をしてないという意味かい? もしただ実験してないだけで、他のスキルでも効果がある、というならそれは魔石くずをダンジョン探索者が携帯して戦うことによって、いわばMPタンクのような働きをしてくれる、という意味でもかなり効果的になるだろうし、もし前者の意味なら今はどうしようもない、ということになるから、こればっかりはフィールドワークなりしてスキルスクロールを手に入れて覚える必要が出てくるよね」
結構賢いな、朝日奈。今の短いやりとりでそこまできちんと考えて話を結果まで持っていき、最終的に俺の一言で話をまとめられるように誘導してきやがった。これは中々手強い同期が仲間になった気がするな。
「今回の場合だと後者だな。正確に言えば、エネルギーボルトで実験をしたのが前回、そして、その後でマジックミサイルのスキルスクロールを身に付けることが出来ている。ただ、マジックミサイルは電力とかそういうものとは関係がないから、マジックミサイルで魔石くずの中のエネルギーを使い切れることに意味はないと考えていたんだが、朝日奈の言う通りだとすると確かに緊急回避用の物資としては一つ持っておいて損はない、という物質に早変わりするな。どちらにせよ金に換えることができる品物に早変わりすることは確実だ。お守り代わりに一つ魔石をポケットに忍ばせておくだけで一回分の戦闘の効果は出てくるのかもしれない」
「なるほどね。マジックミサイル……って、それ買ったの? 魔法系のスキルスクロールは結構なお値段がするはずだけど」
「いや、自分で取りに行った。具体的に言えば彩花と二人で、だけど」
彩花がコクコクと頷く。彩花はまだ人見知りしているのか、朝日奈との間に一定の距離感がある様子だ。
「二人とも探索者なのか。しかも十五層まで行けるってことは相当強いね。かなりの強運に恵まれてきたとも言えるね。いいなあ。僕も一度潜ってみたいんだけど、その時はお付き合い願えるかな? 」
「そうだな……俺の引っ越しが終わって一段落したら、大学の構内のダンジョンにも一度潜ってみたかったんだ。その時で良ければ付き合うぞ」
「ほんとかい? じゃあその時を楽しみにしておくね。装備は何がいいだろうか……中々悩むね」
朝日奈は潜れるのが心底嬉しい様子だ。ダンジョンパイセンとしては責任を取れるようにしないとな。朝日奈も隆介ほどスペックが高くないだろうという予想は付いてるとはいえ、ちゃんと初心者をダンジョンという特殊環境に慣れさせてその上できちんと活動が出来て、稼げるかどうかは二の次でまずは楽しんでもらうことを優先してもらわないとな。
「ほうほう、初回の講義から脱線を始めるとはなかなかいい度胸だな君達」
気が付くと、下方30センチメートルぐらいの所から声がする。下を向くと、合法ロリが俺達の間に入りこんで話を聞いていた様子だ。
「さて、約束はしたところで本筋に戻ろう。エネルギーボルトとマジックミサイル、どっちでも使えるがどっちにしよう。エネルギーボルトは空中に放てば自然消滅するから良いとして、マジックミサイルは物体が残るし、何かを傷つける可能性もあるから迂闊に使用するのは……そうだ、彩花が【火魔法】でやってみてくれないか? 多分マジックミサイルよりは安全で確実な使い方ができると思う」
「あ、ここで私に話が振られるんだ。でもいいわよ。私も魔石からエネルギーを奪ってスキルを行使するってイメージと実際の使い方を区別してみたいし。魔石くずはたくさんあるはずなのよね? 」
「たくさんある。売るほどある。というか売ってもらうまでもなく、引き取ってくれるならどうぞご自由に、と言われたのでプロボックス一杯分ほど入手してきたから文字通り君らは湯水のごとく使ってくれて構わない。それで技術がより鮮明な形を成して科学力の方面から力になるのならそれもまた有りだ。朝日奈君はともかくとして、本条君と結城君がそれぞれスキルを使えるなら、自分のスキルでやってみたまえ。この際エネルギー系のスキルでなくてもいい。魔石からエネルギーが取り出せるか? という実験さえクリアできてしまえば問題なしとする。それが今日の課題、ということだな」
「じゃあ、とりあえず朝日奈の分、ということで朝日奈の魔石くずを貸してくれるか? 試しにいつものエネルギーボルトで試験運用してみることにする」
窓際へ行き、窓から手を飛び出させると、空中に向かってエネルギーボルトを発射する。エネルギーボルトはしばらく進むと空中で霧散した。
「今のが普通の一発分のエネルギーボルト。次に、魔石くずからエネルギーを取り出すイメージを魔石くずから吸い上げるイメージでもってエネルギーボルトを同じ強さで一発分撃つ」
説明通りに、魔石くずからエネルギーボルトのエネルギーを吸い上げるイメージを持ちながらエネルギーボルトを発射すると、先ほどよりも長い時間をかけて空中で出続けた後、エネルギーボルトを撃ち終わった。手元に残った魔石くずからは完全に色が抜け、ガラスのような魔石の抜け殻だけが残った。
コメント
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「おおっ、202話お疲れ様です!今回も世界観の解像度が高くてめっちゃ刺さりましたわ。魔石くずのエネルギー再利用っていうテーマ、学園ゼミの講義形式でしっかり説明してくれるからスッと入ってきた。みき太くんと朝日奈くんの会話も自然で、しかもちゃんと論理が通ってるのが良いですね。合法ロリ先生のキャラも毎回安定の面白さで好きですわ。次回も楽しみにしてます!🔥」