その日少女は思い出した
今までやった悪行の数々を…
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私の名前はサシャ・ブラウス。
調査兵団に所属している新兵だ。
早速だが私は、今上官の食糧庫に来ている。
ここは特に警備が甘く、よくここから肉を盗んで…
いや、拝借していた。
だが、毎回同じ所から盗んだのが災いしたらしい。
「さて、今日の警備は何人ですかn」
「って!?グンタさんとニファさん!?」
流石にこの減りは異常だと感じた上官達が
リヴァイ班とハンジ班に警備を任せたらしい。
流石の私でもこれは…
いや、やるしか無いのだ。
勝った先には肉がある!!肉のためなら心臓も捧げられる!!
「うおおおおおおおおお!!!!」
「え!?なっ、何!?」
「うおっ!?」
今だ!!今なら顔は見られていない…!!
2人の頭を掴み…!!
「どりゃあああああああああっ!!!!」
お互いの顔に叩きつける!!!
「「ぎゃあああああああああ!!!」」
奇襲とはいえ、この2人に勝てたのは奇跡だ。
これでもう上官達も諦めるだろう…
よくよく考えると、どうして諦めると思ったのだろう。
本当の地獄はここからだった…
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「ふんふふーn…ってなんじゃありゃぁ!?」
どうやら上官殿は肉を諦めきれなかったらしい。
今日の警備は…エルドさんとモブリットさんだ。
明らかに階級が上がっていっている。
このまま行ったらリヴァイ兵長まで行くんじゃ…とも思ったが
そこで肉を諦める私ではない。
とりあえず昨日と同じ戦法で…
「!?」
ガタッ
しまった!なんでこんな所にタライが!?
「…そこに誰かいるのか?」
「モブリットさん、噂の盗っ人では…」
「「「あっ」」」
目がばっちり合ってしまったあああああ!!!!
これはまずい非常にまずい!!
顔を見られてしまった!!
とりあえず頭を殴打すれば!
「あっあの…トイレはどこですかね…」
「なんだ…驚かせるな、トイレはちょうど反対側だ」
「ありがとうございます!」
ここで油断させておいて…!!
「油断大敵じゃあああああああ!!!!」
「うっ!?」
肩を思い切り掴んでフルパワーでひざ蹴り!!
その後に頭を全力で叩きつける!!!
「うおりゃあああああああああ!!!!」
「モブリットさん!?」
まずは1人!!
次はエルドさんか…
こっちも手強い事に変わり無いが…!!
「破ァ!!!!!!!!」
「がはっ!?」
アニの格闘術、私だってただ見ていたわけではない!!
投げて…その後さっきのタライで頭を全力で叩く!!!!
「うおおおおおおおおお!!!!」
…2人とも動かない…勝った…
この食糧庫は私が入った時点で私のもの、警備を置くなんて
そんな野暮な事したバチが当たったんだろう。
とりあえず、今日は肉と芋を盗って…
いや、借りていこう。
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「いやぁ、まさかねぇ…ニファもグンタもモブリットもエルドも負けるとは…」
「ああ、想定外だな。ただの盗っ人じゃあ無さそうだ。」
そこには調査兵団の分隊長と兵士長が頭を抱えて座っていた。
そして噂の盗っ人に完全敗北した、4人の警備兵達も…
「面目ないです、分隊長…犯人の顔は見たはずなのですが
どうにも思い出せなくて…」
「兵長、俺は犯人の顔すら見れずに…」
ネガティブなムードに包まれる会議室を
リヴァイ兵長がなんとかフォローしようと口を開いた。
「まあ…いいじゃねぇか。相手が悪かっただけだ。
おいクソメガネ、次はお前とミケが行ってこい。」
「えぇ?私?仕方ないなぁ…けど、結局リヴァイに任せる事になりそうだ。」
「負ける前から不吉な事を言うんじゃねぇ」
オレは忙しいんだ、と付け足してから
人類最強の兵士は会議室を去った。
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次の日、調査兵団は朝から慌しかった。
「オイオイオイ…これは一体どういうことだ…」
「どういうことだって…私にも分からない…昨日の食事に下剤でも入っていたみたいで
忙しくて夕食を食べれなかった者以外、みんな腹を下しているんだ。」
「なんだ…本当にクソが長引いたってわけか…」
「そういう事だ、おっと私はもう一回トイレに行ってくる!!」
チッ、と軽い舌打ちをしてから兵士長は食糧庫に向かった。
向かったはいいが、肉は既に奪われた後だった。
人類最強の兵士でも、既にとんずらした盗っ人を
捕まえることは出来なかった。
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「サシャ、いくらなんでもやり過ぎじゃないかな…」
「何言ってるんですかアルミン!!育ち盛り食べ盛りの私達のところにまで
肉が回って来ない…そんな現状を許せるっていうんですか!?」
「でも…」
アルミンはぬるい。
そうだ。こうでもしないとガリガリに痩せて巨人に食われる前に
階段からでも転げ落ちて死んでしまう。
これは私達の命…心臓のためでもある。
心臓はひとつだから、大事にしていかないといけないのだ。
「確かに肉は食べたいよ…だけど、サシャは自分の行動を
正当化しているようにしか見えない。」
「はっ!?」
「もっと言うなら、サシャは胃袋の奴隷だ。
原動力がいつも食べ物っていうか…いや、良いことだと思うよ…」
確かに、私はいつからこんなに肉に執着するようになったのだろうか…
「そうだ…貧血も…最近やる気が出ないのも…力が出ないのも…
全部肉…タンパク質が足りてないせいです… 」
「タンパク質か…確かに、最近みんな元気がない気がするな…
僕もよくお風呂で倒れるようになっちゃったし…」
そうだ…私は肉じゃなくてタンパク質を求めていたんだ…
けど私はタンパク質が含まれる食べ物を肉しか覚えていない。
他にタンパク質が含まれる食べ物といえば…
「あっ!!乳製品!!」
「そうか!それがあったね!!そういえば、最近乳製品があまり出ていないような…」
「誰かの陰謀に違いありません!!私達をタンパク質不足で殺そうと…!」
「それはピンポイントすぎるんじゃないかな?」
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「ということで、最近乳製品…特にチーズが出ていない事に関してなのですが」
「ああ、それは恐らく…最近噂の盗っ人の仕業だろう」
「団長はそう思うのですか?…何か嫌な予感がします…
最近あの食糧庫にいた人物を、全てここに呼んでいただけますか?」
エルヴィン団長は二つ返事で了承し、最近警備にあたった4人と
食料を取りに来ていたハンジ分隊長
それに加え、趣味で食糧庫の掃除もしているリヴァイ兵士長を呼んだ。
「これで全てですか?」
「ああ、全部だ。」
「じゃあ…入ってきていいよ」
はい、と不安そうな顔で1人の少女が入ってきた。
サシャ・ブラウスだ。
そこにいる者は全員悟った。
ああ、こいつが盗っ人だったのだろう…と。
「この度はお騒がせしてしまい、大変申し訳ございません…
ですが、私は肉と芋しか取っていません。チーズなんて見てすらいないんです!」
「それは本当か?サシャ・ブラウス」
「はい!!いい頃合いに蒸した芋に誓って!!」
誓った物が良かったのか、そこにいる者はもう
誰もサシャを疑っていないようだ。
そこで出てくる問題が1つ。
誰がチーズを奪ったのかという話だ。
そこで団長は、急遽取り調べを行った。
「俺とニファは食糧庫に入っていません。
お互いずっと一緒に扉の前に立っていました。」
「私とエルドも食糧庫には入っていません。
途中、私が離席しましたがそれも短時間です。あの短時間で
チーズを盗って隠すのは不可能かと。」
「私は確かに食糧庫に入ったけど、すぐ君に呼ばれたんじゃないか。
私が通った道に物を隠せる場所は無いし、あの時私はジャケットも着てなかった。
服の中に隠すのも無理だよ。」
次々と無関係なのが証明される中、最後の1人…
「オイオイ…なんでオレを見やがる。」
「リヴァイ、もう君しかいない。洗いざらい話してもらおう。」
「エルヴィンまでオレを疑っているのか…?チッ、あの日か。
あの日ならただ掃除をしていただけだ。
カビが生えてた食料をいくつか捨てさせてもらったがな。」
その発言にアルミンが手を挙げた。
「あの…そのカビが生えてた食料というのは…」
「ああ、丸かったな。」
「兵長!!それチーズですよ!!!」
その時誰もが思った。この人はなんて人騒がせなのだろう、と。
かなり前にも一度、アルミンのパンツを雑巾と勘違いし
食堂中を拭きまわり
その後ゴミ箱に捨てたことがあったのだ。
「一応聞いておきますが…チーズに生えてるカビは何色でしたか?」
「緑だったな…あまりに汚かったから、捨てちまったぞ。」
「兵長…それ食べても問題ないカビです…」
「じゃあなんですか…私は兵長のせいで犯罪に片足突っ込んじゃったってわけですか…」
サシャが顔に手を当てながらそう話した。
「サシャ・ブラウス…片足どころか両足は突っ込んでいるぞ。
まあ今回は謹慎処分で済ませてあげよう。
リヴァイ、お前は後で私のところに来るように。」
「チッ、地下街ではチーズなんて食えなかったからな。
食べても問題ないカビの存在なんて知るものか…
だが、すまなかったなサシャ。」
「いいえ!別に気にしていません!!それでは私はこれで…」
そそくさと会議室を後にしようとするサシャを
4人の兵士が呼び止めた。
「な、なんでしょうかエルドさん…」
「ああ…少し訓練に付き合ってくれるか?
大丈夫だ、すぐ終わる…」
「この度はタライで頭を殴ったり頭を殴打したり
顔と顔をごっつんこしてしまい…!
大変申し訳ございませんでしたあああああああ!!!!」
食糧庫の盗っ人事件
終わり
コメント
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解釈不一致とかあると思いますが許してください… 自分がキャラ崩壊を良しとするタイプの人間なので…すいません… けどリヴァイ兵長は食べれるカビなんて存在、知ってても捨ててそう。