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仁人side
目が覚めると、いつもの光景のはずなのに何が違和感があった。ここは俺ん家。いつもと同じ。なのに、何か違和感がある。
一旦起き上がるか、そう思い体を起こすとその違和感の正体が判明することとなる。
「………はぁ!?」
立ち上がった俺の目線はいつもの倍以上低く、腕も短ければ手も小さかった。
俺は急いで洗面台に向かうと、信じられない光景を目にする。鏡に映る俺はなんと、小さくなっていた。
たぶん小学生低学年くらいだとは思う。
夢だと思った。こんなことは有り得ない。
「いっ……た」
頬をつねれば痛くて、これが現実で起きていることなんだと思い知らされる。一体、どうなっているというのだ。
パニックになっていると、ベッドの方から振動音が聞こえる。見ると、そこには太智という文字が表示されていた。
今日は太智が家に来る予定である。とりあえずスマホを持ち、太智からの電話に出た。
『もしもし吉田さーん?』
「太智……」
『あれ?なんかいつもより声幼くない?』
電話越しの太智は俺の声に疑問を持っているようだった。確かに、今の俺は幼くなっているため、声変わりをしていなかった時の声に戻っている。
「あのさ、太智」
『ん?』
「俺、朝起きたら体小さくなってて……」
『……はぁ?仁人頭おかしくなったんとちゃうんか』
太智から返ってきたのはなんとも辛辣な言葉。まあ、確かに急にこんなこと言ってきたらそう思うのは無理ない。俺が逆の立場だったらそう思う。
「ガチなんだって!!早く俺ん家来て、確認してよ」
『わ、わかった。準備出来次第むかうわ』
太智は俺の必死な声でガチだと悟ったのか、戸惑いながらも急いで俺の家に向かってくれるようだ。
ピンポーン
インターホンが鳴り、太智を家へ迎え入れる。
「じ、じんと……!?ほんまにちっちゃくなったんか!?」
家に入るなり太智は小さくなった俺を見て、信じられないと言った顔をしながら叫んでいた。
「うるさい……唾飛ぶ」
「なんで小さくなったん!?なんか変なものでも食べたんか」
「知らん!俺が知りたいわ!!」
昨日は別に変なものを食べたわけでもないし、普通に仕事していつも通りの飯を食べて、いつも通り寝た。原因がわからない。
「俺、ずっと小さいままだったらどうしよう」
「それは困るなぁ」
2人で解決策を考えてみたが、何も浮かばない。
「まぁ、考えてもしゃーない!出かけようぜ仁人!」
太智は考えるのが億劫になったのか、突然提案してきた。
「いや、出かけてる場合か!!無理だわ!」
「でも考えたって無駄やん。俺頭使うの苦手やねん」
「まぁ、そうだけど……」
確かにいくら考えても解決策は出てこないし、考えるだけ無駄かもとは自分でも思っていたけれど。けど、なにか考えていないと落ち着かない。
「せっかくやし小さい仁人と思い出作りたいわ」
太智はそう言って、ほな行くで、と言いながら俺の腕を掴んで外に出ようとした。
「ま、まって!!俺服が無いの!!!」
小さくなったことを気にしすぎて忘れていたが、今の俺は小さくなる前に着ていたパジャマをダボダボになりながら来ている状態だった。
「さすがにその格好じゃ出られへんか」
「太智、服買ってこいよ」
「小せえくせに生意気な口調だな」
とりあえず、太智に服を買いに行かせてそれを家で待っている状態になった。
この状態になった俺はとりあえずどうやって元に戻るかだけ考えていたが、太智はこの姿になった俺と思い出を作ろうとしていて、自分にはない発想をしてくる。それは、俺にとって有難いし、救われている。
太智が服を買ってきて、それを着させてもらう。
「うん!イイじゃん」
「なんかパパになった気分やわ」
「俺太智の子供かよ……」
とりあえず、買ってきてもらった服を着て、靴を履き、家を出る。まさか小さくなった体で外に出るとは。
外の世界は目線が違うだけで、いつもと違う場所のようだった。
***
俺たちは、小さくなった体でも普通に満喫していた。ショッピングモールに行き買い物をしたり、美味しいご飯屋さんに行ったりして楽しむ。
子供服屋に行くと太智が「これ吉田さんに似合うんじゃない?」ってニヤニヤしながらからかってきたのはウザかったけど。
「なんか混んでんなぁ。ここらへん」
「なんかイベントやってるみたい」
どうやら、アーティストのイベントをやっているみたいで付近はファンでいっぱいになっていた。
「もうちょい空いてるとこ行くかぁ」
その場を離れようとした時、大勢の人に押され太智から離れてしまった。やば、早く太智と元へ行かなくては。
そう思っていると、急に誰かに腕を引っ張られた。
「え、え……?」
太智!と叫んでみるが大勢の人と声にかき消され、俺は知らない人に連れていかれ、力で抵抗できる訳もなく、どんどん離れていく太智をただ見ていることしかできなかった。
人気のない場所へ連れていかれ、男はそこで止まった。
「だ、誰!?」
男の顔を見るけれど、知らない顔だ。
「今日、初めて君のこと見たんだけど、ビビッときちゃってさ。本当に君かわいいね」
男はそう言いながら俺の頬に触る。それがとてつもなく気持ち悪くて背筋が凍る。
「やめろ!」
「口が悪いなぁ、まあそこもかわいいか」
太智はどこにいるだろう。連れてこられた場所は全くと言っていいほど人がいない。俺のこと、見つけられないかも。
「一緒におうち帰ろっか」
男は俺の腕を掴んで歩き出そうとする。
「離して!!!嫌!!!!」
そう言って抵抗するが、俺の小さくなった体でこの男の力に勝てるわけがない。このまま連れていかれてしまうのか。
太智。
たすけて、太智。
「何してんねん!!!!!!!」
瞬間、男の体が倒れ、俺の目の前には息を切らした太智がいた。
「仁人!!!大丈夫か!?」
「だ、太智……」
「何やねんこの男!!仁人知り合いか!?」
「知らない人…急に連れてこられて」
太智は男を拘束しながら俺に話しかける。
「俺のこと、よく見つけたね」
「ほんま必死に探したわ。よかったあ見つかって」
「……こわ、かった」
少し震えた声でそう言うと太智は俺の頭を撫でながら抱きしめてくれた。
落ち着く。さっきは怖くて震えていたけれど今は太智の温もりと鼓動を感じて安心できる。
「コイツ、警察に突き出してくる」
「う、うん……」
「ちょ、やめろ、!!」
男は太智に抵抗して、連れていかれまいとする。
「うるさいなぁ………」
「………っひ!?」
太智は男になにか耳元で囁いた。その瞬間顔を真っ青にして抵抗しなくなった。
一体何を言ったのだろう。
無事、男を警察に突き出し、俺たちはやっと家に帰ってきた。
「太智なんで俺の事見つけられたの?」
「んー、何でやろ。なんか仁人はそこにいるって思ったんだよなぁ」
「そっか。助けてくれてありがとね」
「助けるのなんて当たり前やろ」
それから、一緒に夜ご飯を作って食べて、映画見て、お風呂入って。のんびり過ごした。
小さくなった俺はいろいろ不便なことがあるため、その度太智が助けて世話をしてくれる。
なんか、太智がお兄ちゃんになったみたいで、新鮮で少し面白かった。
「ほな、寝るか」
「……ぅん」
ベッドに二人で入る。いつもは狭いけれど、今は俺の体が小さい分余裕がある。
この体はいつ戻るだろうか。ずっとこのままなのだろうか。
色々考えていたが、猛烈な睡魔に襲われ、俺は夢の中へ吸い込まれて言った。
***
「もどったーー!!!!」
朝起きると、俺の体はすっかり元に戻っていた。昨日の出来事が一体なんだったのかは疑問だけれどとりあえず戻れたから良かった。
「なんや、戻ったんか。ちっこい仁人かわいかったけどなぁ」
「………仁人は小さい俺の方が良いの?」
「そりゃ、小さい仁人も好きだけど。今の元に戻った仁人も大好きやで」
「………そりゃ、どうも」
「あ、仁人照れた!!」
「うるさーい!」
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