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「ねー!転校生だって!イケメンだって!」友達
の真部夏菜子がわたしの元へやってきて言った。
夏菜子は入学して初めてできた友達。身長は165センチくらいで、細身。
切れ長の一重で、ほっぺたにはそばかすが何個もあり、少しだけ染めた茶髪を高い位置でポニーテールにしている。
運動神経抜群の元気ハツラツ女子で、野球部のマネージャーをしている。
夏菜子とは性格が真逆だったのだが、それにも関わらずあっという間に仲良くなった。それはきっと、お互いにないものを持っていた
からだと思う。夏菜子は明るく元気でわたしの事を照らしてくれる。わたしはわたしで夏菜子にない落ち着いた部分がある。
だからこそ、一緒にいて楽しいし、居心地がいいと思っているのかもしれない。
「みんな、おはよう!!」
担任がいつも通り、威勢の良い声とともに、教室に入って来た。
よく見ると、確かに転校生らしき男子がついてきている。髪の毛は茶髪で伸び放題な感じ。前髪が長すぎて、表情は少ししか見えない。
制服はあまりサイズが合ってないように見えるし、上履きも綺麗すぎてなんだか違和感がある。身長は180センチくらいで、シュッとした体型をしている。
部活のせいなのか分からないが、半袖のシャツから出ている細い腕が、うっすら日焼けをしている。一体何部だったんだろう?という疑問が自然と湧いてくる。外の部活だとすると、野球部か、サッカー部か。その辺のはずだ。
その時、わたしはあまり関心がないふりをした。気づかれないように、チラッとだけ彼を覗き見る。 なんだか、緊張してしまい、一種のスリルのような物を味わってしまう。
なぜだか知らないが、呼吸ができないほどにドキドキするし、身体にはやけどしそうなほどの熱気が、どこからともなく吸い寄せられてくる。
「おーい!ホームルーム始めるぞー席に着けー」担任が大きく息を吸ったあとに、はりさけんばかりの声で吠えた。どうしてそんなに、大きな声が出せるのか、わたしは謎で仕方なった。
生徒たちがガヤガヤと騒ぎながら席につく。みんな彼への好奇心で一杯で、ドキドキワクワクがまとわりつき、目を輝かせている。
「転校生を紹介します。笹田蓮君です。自己紹介して」
ん?
笹田??
「初めまして、笹田蓮です。北海道から来ました。よろしくお願いします」
え、笹田蓮?って、
中学の時、引っ越してったアイツじゃん。
ザリガニの……。
「じゃー、笹田はあそこの席な」
笹田の席はわたしの前の前の席に決定した。
そう、
ザリガニを入れられた時と同じ。
「なー!北海道から、来たの?」
「まぁー。引っ越しただけだけど」
「すげーなー!北海道ってどんなとこ?おいしいもん、たくさんあるんだろ?」
笹田はビックリするほどあっという間に人気者になった。
そうだ、あのころ……。
ザリガニを入れられたころも、笹田の周りにはたくさんの友達がいて、いつも楽しそうにはしゃぎまわっていた。
人懐こくて、みんなを楽しませられる、いうならば、太陽のような男。
わたしにはないものを持っている男子。
苦手なはずなのに、輝かしく見えて仕方のなかった相手。
どうしてあの時、わたしのことだけ、
嫌いだったんだろう?成績が良かったってだけなのに。
わたしは、隅々まで考えてみたが、
どうしても、答えが見つからなかった。