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「坂下さん、今日からバディを組んでもらうから。」
私は飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。
昔配属していた交番は、巡査部長と私だけで町の平和維持を任されていた。2人とはいっても、巡査部長はかなりしっかりした人で仕事もやりやすかったからか、負担はそれほど大きくなかった。
「え、バディ?ここの交番はもう2人で十分ですよ」
巡査部長は私の目を見るなり優しい笑顔で
「そうはいっても、どちらかが倒れたらどうしようもないでしょ?君は優秀だけど、実際人手はもっと欲しいところだよ」
と突っ込んだ。
そんな会話をしているうちに、奥の方から速々とした足音が近づいてくる
肩につかないほどのショートボブ、一切シワのないカッターシャツ、ほのかに香るムスクのような甘い匂い。
それに加えて美人、いわゆる高嶺の花だ。
__「今日からこの交番に異動となりました。佐藤佳織です」
キリッとした目つきには一見クールさを覚えたが、身長は150センチにも満たない程小さく可愛らしさも感じた。
巡査は手のひらを私に向け
「今日から佐藤さんのバディになる坂下玲子さんだよ。」
と短い紹介をした。
私たち2人は顔を見合わせ小さく会釈を交わした。
__仕事仲間から恋人に発展したのは、私たちがバディを組んでから2ヶ月後のことである
当時、特殊詐欺事件を解決する為その容疑者である男を休みなく追っていた。
男は女遊びが激しい奴で、いつも行き先は不倫相手の自宅かホテルである。
そんな任務が一向に進まない状況に私たち2人は飽き飽きしていた。
「今日はホテルみたいですね」
大きなあくびをしながら佳織は車の椅子の背もたれを倒し始めた。
しかし、突然目を開いては寝入ってしまいそうな私の肩を強く叩いた。
「入り口で待ってても仕方ないので、どうせなら男の泊まってる部屋の隣まで行きませんか?」
私は佳織の興味本位の馬鹿げた提案に反対しようとしたが、
「こんなに捜査が手詰まりなのも、もしかしたら警察の張り込みを見据えて詐欺絡みの話を知られないように中で行ってるからかもしれません」
と言う佳織の意見が腑に落ち、ホテルの中へと入ることにした。
部屋に着くなり早々、真ん中に置かれた大きなシングルベッドや、様々な色に切り替わるライト、何やら変哲な玩具がたくさん入った小さめの箱など、見慣れないものだらけで頭がクラクラとした。
「坂下先輩、何か聞こえますよ!」
佳織はベッドに乗り、男の部屋の方角の壁に耳を当てている。
数秒すると、佳織は壁から耳を外し、ベッドに座り込んだまま俯いた。
「どうしたの?」
「…詐欺絡みの話ではなかったみたいです」
私も佳織と同じように、耳と右頬を壁に押し付けた。
私の顔がどんどんと火照り、赤くなるのが自分でも感じた。聞こえてくるのは女の悲鳴と容疑者の声。高まってゆく2人の喘ぎ声を聞いてられず、私は手で顔を覆いベッドに横になった。
「もう今日は捜査止めようか」
「いや、まだ可能性はあります」
何も得られなかったにも関わらず、粘る佳織に少し呆れたが、2時間コースで高い金を払ってここまで来た為、私たちは酒を飲んで時間を潰すことにした。
__「いいんですか?まだ捜査中ですけど」
缶ビール一本を飲み干した佳織は私に聞いた。今更止めたってもう遅いのに。
佳織は酒に弱いのか、かなり酔っ払っていた。そんな佳織を心配しつつ見つめていると、佳織は私に視線を送り返した。
目をうつらうつらさせながら、唇と私の瞳を交互に見つめてくる。
__「先輩って案外可愛いんですね」
「え?ちょ、なに言って…」
言葉を言い放つ前に佳織は私をベッドに押し倒した。
「今だけ、警察官だってこと忘れませんか?」
口からのお酒とムスクの混じった匂いが私の鼻に直に香った。
「や…ンっ…//」
佳織は私の制服に付いた警察バッジを外し、カッターシャツのボタンを上から外していく。
指先は私の胸元をさすり、舌は私の首と耳を愛撫した。
「こんなのンッ…//許されると…思ッてるの…?」
佳織は私の目を見つめたあと、ニヤリと笑みを浮かべ、さらに激しく動かした。
佳織の顔がスルスルと私の局部へと移動し、触れそうで触れない唇と生温かい鼻息に興奮を覚えた。
「ぁあンッ…。そこダメッ…///」
私は目を閉じたままベッドにしがみついた。
痙攣はすぐに治らず、息を切らした私はしばらく何も考えることができなかった。
佳織は私の体全体を優しく包み込み、大好きの一言を呟いた後口付けをした。
__あの時の小さな体から感じる体温のぬくもりを、私は一度も忘れていない。