ビルの谷間に沈む夕陽が、灰色の街を赤く染めていく。アキラは教室の窓からその光景をぼんやりと眺めていた。生きることに意味を見出せない日々に、彼の心は次第に空っぽになっていた。
そんなある日、彼は不思議な少女、ユウに出会った。彼女は図書館の隅で楽しげに本を読んでいた。アキラが何気なく声をかけると、彼女は大きな笑顔で答えた。
「生きるって素晴らしいよね」
彼女の言葉に、アキラは驚いた。この街にそんな風に思う人がいるとは想像もしていなかったからだ。
「僕は、もう生きることに疲れてるよ」
アキラの言葉にユウはしばらく考え込むように沈黙した後、優しく微笑んだ。
「それなら、私がアキラに生きる理由を見つける旅に連れて行ってあげる」
そうして始まった二人の旅は、都会の中に隠された小さな美しさを見つけるものだった。ユウはアキラに、街の裏道に咲く一輪の花や、夕陽に染まるビルの影、通り過ぎる人々の温かい笑顔を見せてくれた。
ユウと過ごすうちに、アキラは次第に変わっていった。生きることが少しずつ楽しいと思えるようになり、彼の目には世界が色を取り戻していくのが見えた。
そんな中で、彼の親友であるハルキもアキラに歩み寄ってきた。ハルキはアキラが変わっていくのを感じ取り、彼に寄り添おうとした。アキラはハルキに対する自分の気持ちに気づき始めていたが、それを伝える勇気がなかった。
ある日、ユウがアキラに言った。
「アキラが誰かを好きになることも、生きる理由になるよ」
彼女の言葉は、アキラの心に響いた。しかし、アキラがユウとの旅を楽しむ一方で、彼女の体調は再び悪化していった。
ユウは病院に戻らなければならなくなり、アキラに最後の願いを告げた。
「アキラが見つけた新しい色を大切にして、ハルキと一緒に生きてほしい」
その言葉を胸に、アキラは決意した。自分が生きたいと思うこと、そしてハルキを大切に思うことを否定しないと。
ユウが入院してから、アキラはハルキに自分の想いを伝えた。ハルキは驚きながらも、アキラの気持ちを受け入れてくれた。
ユウが教えてくれた「生きることの素晴らしさ」を胸に、アキラとハルキは共に新しい未来に向かって歩み出すのだった。ビルの谷間に差し込む光が、彼らの行く先を照らしていた。
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