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コンビニから匠の家に帰るときに鹿島が見つけた公園に
バイクや車が入らないようにか、鉄柵がある入り口から公園内に入る。
「あぁこの公園」
「うん。めっちゃたまに来てたよな」
「めっちゃたまにね」
「あ、なに?2人の思い出の公園なの?」
「思い出の公園なんてもんじゃないよ。ただたまに来てたよねってくらい」
「オレらだけじゃないよな?猫井戸高のやつらだったら、たまにここ来てんじゃない?」
「あぁ、ここ割と近いからか」
「そうそう。でも猫井戸高の近くにも、もう1つ公園あるから
そっちのほうが生徒はよく行ってたかも」
「そういえばうちもあったわ。近ーくってほどじゃないけど
コーミヤ(黄葉ノ宮高校の略称)の生徒がよく行く公園」
そう言いながらブランコに腰かけ、ブランコの鎖をキイギイ言わす。
「なに?よく溜まり場になってたとか?」
「あぁ〜、オレらは会ったことないけど、結構上の先輩が学校サボって
よくその公園いたから警察も補導?注意?のためにその公園も巡回してたよ」
「怖すぎ」
「まぁオレが1年のときの3年生は全然怖くなかったけど、ヤンキーの世代もあったらしい」
「はえ〜」
匠もブランコに乗り、漕ぎ始める。僕はブランコを囲む鉄柵に腰かける。
「そう、それこそ黒ノ木学園知ってる?」
「うん。知っとる」
匠のブランコの振りが強くなる。鹿島は少し漕いでその勢いをキープしていた。
「黒ノ木もヤンキー多かったらしい」
「まぁ男子校だからな」
「男子校はヤンキーって偏見やん」
「でもヤンキーマンガとかって男子校のイメージない?」
「たしかに」
「まぁでも偏見ちゃ偏見だな。ごめん!男子校!」
夜空に向かって男子校に謝った。
「まぁ、んで黒ノ木もヤンキー多かったんだけど、今は落ち着いてるって話よ」
「昔はヤンキー多いイメージだわ」
「猫井戸高はなかったん?そーゆー噂」
「あぁ〜なんかオレらが1年ときの3年生ではないけど
その3年生が1年のときの3年生のときかな?学校にパトカー来たって話は聞いた」
「は?怖っ」
「いやなんでかは知らんよ?」
「でもパトカーでしょ?パトカーはねぇ?」
「まぁオレも怖っって思ったけどね」
ブランコから降り、3人で滑り台に近づく。銀色の滑る部分を触る。冷んやりと硬い感触。
腕が上がっていく。匠がカンカンカンと階段を上る。
平均的な成人男性には狭く、匠が階段を上り切り
踊り場のようなところで狭そうに肩を萎める。
滑る部分を触っていた手を滑る部分から外し、なんとなしに掌の匂いを嗅ぐ。
鉄の匂いがする。眉間に皺が寄る。匠が踊り場の黄色いアーチをくぐり、いざ滑る。
全然滑らないんじゃないかと思ったがスーッっとあっという間に下まで滑り下りた。
「おぉ。意外とスーッって行ったわ」
「オレもやろー」
鹿島が階段を上る。なんとなく僕も滑りたくなって鹿島の後ろに続く。
「おいー!上ってくんなよー」
パッっと滑る部分を見ると匠が滑る部分を逆走し、上ってきていた。
いたいた。そう思いながら僕は僕で
「おい鹿島ー早く滑れよー」
と鹿島の背中を押す。
「おい〜匠ちゃん上ってくんなよぉ〜」
二十歳を越えた大学生3人が子どもの頃に戻ったように滑り台で遊んだ。
「いたいた。上ってくるやつ」
公園内の街灯のように煌々と光る自動販売機に夏の虫のように3人で寄っていく。
「どこにでもいるんかな?逆走するやつ」
「いるんじゃない?これ究極のあるあるじゃない?」
「お、缶のソラオーラある」
「あ、ほへとすのみかんあるじゃん。なっつ」
「なっつって。コンビニにも売っとるわ」
「マジか!全然目に入ってなかった。買おー」
匠が缶のソラオーラを、鹿島がほへとすのみかん味を買い
缶が落ちるガガタンッという音とペットボトルが落ちるドゥドンという音がする。
150円を入れて僕も自動販売機のラインナップを見る。
「なにこれ。ショートケーキ茶?」
「なにそれ」
匠と鹿島も近寄ってきて見る。
「たまにあるよね。よくわからんやつ」
「えい」
鹿島がショートケーキ茶の下の光るボタンを押した。
ピッ。ガガタンッ。お釣りが落ちてくる。カチャンガチャンガチャン。
「おい」
「いや飲みたいんかなって」
「なんだこれって言ってたろ」
まったく、やれやれ的な感じで飲み物を取り出し口から取り出すが
ほんの少し気にはなっていた。カペリパキ。プルタブを開ける。
まずは匂いを嗅ぐ。イチゴの香りが強い。一口飲んでみる。
ミルク入りのストロベリーティーのような、ショートケーキというより
イチゴの味がマイルドになったストロベリーティーのようなものだった。
そして紅茶と違うのは甘さがあまりなく、日本茶特有の渋さ、苦さがあった。
「どんな感じ?」
鹿島がほへとすを飲んだ後に聞いてくる。
「んん〜。んん〜って感じ」
「なにそれ」
笑う鹿島にショートケーキ茶の缶を渡す。
鹿島は受け取り逆に僕にほへとすのみかん味のペットボトルを渡してくる。
僕はほへとすを一口飲む。
薄いオレンジジュースとはまた違い、味付き水にしてはみかんの味が濃い。
また懐かしい感覚も覚えた。鹿島もショートケーキ茶を1口口に入れる。
眉間に皺を寄せながら缶の横の成分表を見ている。
「なにこれ」
「だろ?そうなるだろ?」
「んん〜。ん?」
鹿島がもう1口いく。匠が無言で鹿島から缶を取り
匠もショートケーキ茶を1口飲んで鹿島に返す。
「なにこれ」
「ショートケーキ感はぁ〜…」
「ないっちゃないけど、滑らかさ?がぽいっちゃぽい?」
「トータルで「なにこれ」でよろし?」
「それだわ」
「結局そこに行き着くな」
謎の飲み物で盛り上がり、公園を一回りし、飲み物を飲み終えるまで遊んだりして
空になったペットボトルや缶を自動販売機横のゴミ箱に入れてから公園を後にした。
「たっだいまぁ〜!」
鹿島が元気良く匠邸に入る。
「ただいまぁ〜」
「たでぇーまー」
また各々で洗面台で手洗いうがいを済ませる。
お風呂場の洗面所で手洗いうがいを済ませた鹿島がお風呂場に入り、ボタンを押す。
「追いだきを開始します」
AIのような女性のお風呂場で反響する声が聞こえる。
お風呂が出来上がるまで普段着のまま、ソファーでテレビを見たり話したりして寛ぐ。
「お風呂が沸きました」
というAIのような女性の響く声が聞こえる。
「行くぞぉ〜」
鹿島が手首を回しながら気合いを入れる。
「なに?」
「一番風呂じゃんけん」
「あぁ〜…」
「じゃあ行くぞ?」
正直一番風呂じゃなくていいのだが空気を壊さないため、乗ることにした。
「さーいしょーはーグー!じゃーんけーんー…」
「ポンッ!」
鹿島はグー、匠もグー。僕が出したのはパーだった。
「マジかぁ~…。一発。ん!怜ちゃんいってらっさい!」
「いてらー」
「あ、はい。じゃあいただきます」
僕はソファーの背もたれにかけていた部屋着とリュックに入れていた下着のパンツを持って
お風呂場へ向かう。着替えをまとめている最中
「じゃ、二番目の勝負だね」
「受けて立つ」
と次に入る順番決めのじゃんけんがはじまっていた。お風呂場の扉を閉める。
Tシャツを脱いだとき思ったことがあったので上裸の状態でお風呂場の扉を開き、廊下に出て
「匠ー。昨日のタオル使ったほうがいいー?」
と匠に聞く。ソファーの背もたれにもたれかかり
項垂れる鹿島とピースマークを掲げる匠の姿があった。
匠はピースマークを掲げたままこちらを向き
「あぁ〜別にいいよ。タオル置きから新しいの使って」
と言われて
「あーい」
と言い、お風呂場に戻ろうとして足を止める。
「ちょ、匠来てー?」
そう匠を呼ぶと匠は
「なにー?」
と言いながらソファーの背もたれを跨いでこちらに歩いてくる。
「あのさ、体洗うタオルとシャンプーリンスはどれ使えばい?」
と聞く。
「ボディータオルはこのバスタオルの横のやつ」
と匠が1枚取り渡してくれた。そして匠はお風呂場に入り、丁寧に
「これとこれがオレの使ってるやつだから」
とシャンプーとコンディショナーを説明してくれた。
「あんがとー」
「あーい」
そう言って匠はお風呂場から出ていき、扉を閉めた。
僕は服をすべて脱ぎ、ボディータオルを手にお風呂に入る。
シャワーを頭から浴びる。まずは体を洗う。
透明なボトルに入ったボディーソープを濡らしたボディータオルに1プッシュ出し
くしゃくしゃして泡立てる。なんとなく嗅ぎ覚えのある香りのボディーソープだったが
それよりもボディータオルの柔らかさに驚いた。体が泡に包まれ、今度は髪を洗う。
匠が使っているシャンプーを1プッシュ手に出す。両手を合わせて、手全体に伸ばす。
濡れた髪につける。指の腹を使い頭皮から洗っていく。
すぐに泡立ち、あっという間に髪が泡に包まれる。良い香りがする。
偏見になるが、女性が使っていそうな、そして高級そうな
少しドキドキするような優しい香りだった。
泡を洗い流す。洗い流すときにも良い香りがする。匠に
「リンスはこっちね。まぁ怜夢ならどっち使っても支障ないだろうけど」
と注意されたコンディショナーの入った透明な横並びの2本のボトルを見る。
なぜか理由を聞くのを忘れたので頭の上に「?」を浮かべながら
「こっちね」と言われたほうのコンディショナーを1プッシュ出し、髪全体につける。
つけ置きするためコンディショナーを髪に塗ったまま1段上がり浴槽に入る。
自分が入ることで自分の体重分水面が上がる。
いつもの自分の家の浴槽なら水面の高さがグッっと上がるのだが
匠の家の浴槽はどデカいため水面はほんの少ししか上がらなかった。
「ふぅ〜」
お風呂を操作するパネルを見ると38℃。
熱くもなく温くもない。ナイスジャッジ鹿島。心の中で鹿島に賞賛を贈る。
スマホスタンドに置いてあるテレビのリモコンを右手の振って水分を なるべく飛ばし
手に取る。テレビをつける。
百舌鳥さんと博多のベテラン芸人さんのバラエティ番組がやっていた。
コマーシャルまで湯に浸かり、コマーシャルになったら
浴槽から出てコンディショナーを流す。コマーシャルが終わり、続きが始まる。
僕は膝から下をお湯に浸け、浴槽の縁に座りながらテレビを見る。
浴槽は1段上がったところに埋め込まれているため、背中からビターンと落ちる心配はない。
またコマーシャルまで見て、テレビを消し、バスタオルで体を拭き、部屋着に着替え
下着のパンツと普段着持って、バスタオルを肩からかけ、お風呂場を出る。
リビングでも同じチャンネルにしていた。
「いっただきました〜」
「おぉ。長いわ」
「いやテレビ見てたらつい」
「あるある。オレもほぼ毎日30分以上は入ってる」
「マジか!…ってまぁテレビ見られりゃそうなるか」
「女子とかって結構長いよね」
「あぁ!そうそう。オレの妹とか母親とか結構長い」
「妹ちゃん長そうだね」
「休日とかたまに1時間以上入ってんじゃない?」
「ガチ!?」
「なんかスマホ持ち込んでMyPipeとか見てるらしい」
「あぁ〜ね」
「次は匠だろ?」
「うん。次コマーシャル入ってから行くわぁ〜」
「オレいつになるん?」
匠は次のコマーシャルでお風呂へ行き、僕と同じく30分ほどで出てきた。
鹿島はその後にお風呂に入り、鹿島は恐らくお風呂のテレビで
次のコマーシャルまで!と言うほど見たいテレビは無かったらしく15分ほどで出てきた。
「匠ちゃん髪洗わんかったの?」
鹿島が自分の髪の毛先をバスタオルで挟んでパンパンしながら聞く。
「あぁ」
匠がお団子ヘアーを解き、サラサラァ〜っと綺麗な少し青みがかった白い髪が流れる。
「なんで?」
「めんどくせぇし、あと髪色落ちる」
「そういえば素晴らしの湯でも言ってたね。そんなすぐ落ちんの?」
「なんかね、オレが行ってる美容院の美容師さんに聞いたんだけど
髪の色素って暖色系が強いらしいんだ?
で、赤とかオレンジとか茶色とかは比較的綺麗に入りやすいし
割と長持ちするらしいんだけど
寒色系は元々の髪の色素に入ってる割合が少ないから定着しづらいらしい。
だから寒色系はすぐ落ちるんだって。
あとオレは髪白にするために極限まで脱色してて
毛髪自体が傷みまくってるから、なおさら落ちやすいらしい」
「ほへぇ〜大変ねぇ〜」
「拘りあるのってカッコいいけど、その分苦労なさってるのねぇ〜」
「そうなんですのぉ〜ほほほ」
みんな何故か貴婦人のような話し方になる。
「んじゃ、金鉄の続きやりまっか!」
「んなー」
「へーい」
匠がテレビのリモコンで入手切り替えをする。
つけっぱなしにしていた画面は匠のターンで止まっていた。
僕はスマホを取り出し、ホームボタンを押す。妃馬さんからのLIMEの通知。
「今日、4人で素晴らしの湯行ってきましたー」
その通知の上に猫がお風呂に入って、タオルを頭の上に置いているスタンプが送られていた。
「マジか」
つい言葉が漏れた。
「なに?」
「どった?」
当たり前だが2人に疑問視される。
「あぁ、いや、妃馬さんたち今日素晴らしの湯行ったらしい」
「マジか!?」
「へぇ〜」
鹿島もスマホをいじる。テレビでは今まさに3つのサイコロが振れれる瞬間だった。
3、4、4。合計11。
「んん〜ビミョ〜」
鹿島が一瞬スマホから視線をテレビに移す。
「あぁ〜まぁ良いほうでしょ」
鹿島がスマホをタプタプする。僕も妃馬さんの通知をタップし
妃馬さんとのトーク画面に飛び、返信を打ち込む。
「マジっすか!?うわぁ〜今日は匠んちのお風呂で済ましちゃいました…」
その後になぜかフクロウがガッカリと肩を落としているスタンプを送った。
匠のターンが終わり、僕にコントローラーが回ってきて
僕もサイコロを振り、電車を進ませ、鹿島にコントローラーを回す。
鹿島のターンも終わり、また匠にコントローラーが回る。
「あ、マジだわ」
「なにが」
「いや、4人素晴らしの湯行ったって」
「オレ言ったやん」
「いや、まぁ、ね?でも森もっさんに聞いたら森もっさんもそう言ってた」
「だから言ったろ」
そう言いながらスマホのホームボタンを押す。妃馬さんからの通知。
「あら。それは残念」
そのメッセージの後に猫が「あーあ」と言っているスタンプが送られていた。
口元がニヤけそうになる。必死に堪え、通知をタップし、トーク画面に飛び、返信を打ち込む。
「会えたかもですもんね。何時頃行ったんですか?」
その後フクロウが「?」を浮かべているスタンプを送った。
匠のターンが終わり、僕のターンを終え、鹿島にコントローラーを渡す。
スマホのホームボタンを押す。妃馬さんからの通知。
「8時過ぎですかね?」
そのメッセージの後に猫が「?」を浮かべているスタンプが送られていた。
8時過ぎ…。と思い出す。
「あぁ〜その時間、ショートケーキ茶飲んでましたね」
その後にフクロウが優雅に指を立てて、ティーカップを持っているスタンプを送った。
その後も金太郎電鉄をしながら、妃馬さんから通知が来ていれば、その度返信していた。
「ショートケーキ茶!?wなんですかそれw」
「いや、公園で遊んだ後に公園の自販機で見つけたんですw」
「公園で遊んでたんですかw無邪気w」
「ブランコしたり、滑り台滑ったりw」
「可愛いw」
「成人男性3人がやってたら可愛くはないw」
「そうですかねぇ〜?あ、ショートケーキ茶の味はどうでした?」
「あぁ〜んん〜。って味でした」
「どんな味w」
「ミルク入りのストロベリーティーのミルク抜きって感じですかね?」
「それただのストロベリーティーじゃないですかw」
「あ、いや。まぁそうなりますけど違うんですよw難しいなぁ〜」
妃馬さんとメッセージを繰り返しているといつの間にか、結果発表になっていた。
「あ、終わり?」
「だよ?」
「あ、オレも気づかんかった」
「鹿島が気づかないって明日雨か?」
コンピューターいわゆるCPUも入った4台の電車が走る。CPUが最初に脱落し
次は僕が脱落。鹿島と匠の一騎打ち。匠の電車が脱落し、鹿島の電車がホームに入った。
「うっしゃー!勝ったぜえぇぇ〜」
「おめでとう」
「おめっとー」
匠と僕で鹿島に拍手を送る。
「いやぁ〜ありがと、ありがとお」
大統領のように左右を交互に向きながら言う鹿島。
「あっこから負けると思わんかった」
「まぁカードの力だなこれは」
「カード強すぎんよマジ」
「今シリーズはトレーディングカードゲームって言われてっから」
「そうなん?」
「ゲーム好きの中ではね?初見は全然そーゆーの抜きで楽しめるだろうけど」
「ガチでやるってなったときか」
「そうそう。まぁフェアにみんなガチだったら、それはそれで面白いんだけどね」
「京弥今回はガチムーブではなかったんだ?」
「ガチムーブしたら面白くないじゃん」
「そんななん?」
どんな手法かは聞かなかったが
鹿島のゲーム知識とゲーム愛、ゲームに特化された知性に改めて驚かされた。