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「ねぇ、凛ってレズなの?」いつもの放課後、いつもの屋上でフェンスに寄りかかってる葵といつものように他愛のない会話を楽しんでいた時のことだった。
「……え?」
「だから、レズなの? それともバイ?」
「え、いや、その……」
私はレズだ。だがそんな事がバレたら、葵に嫌われてしまうかもしれない。嫌われたくない。
「な、なんで急にそんな質問?」
チラッと横にいる葵を見ると普段は両耳につけているピアスを左耳にだけつけていた。そう言えばレズは左耳にピアスをつける噂がある。葵がこのことを知ってたらもしかして私へのアピール?考えすぎかな。なんて考えていると質問の答えが返ってきた。
「別に? ただ気になったから聞いてみただけ…」
何か意味を含んでそうな言い方をした後、少しだけ沈黙があった。その間葵は微笑みながら左耳のピアスに手を触れ、私の目を一瞬見てから街の風景を眺めた。
「言いづらいなら別に大丈夫だよ」
そう言う葵のピアスに夕日がフェンスの隙間から漏れて反射している。その光が葵を遠く感じさせた。
「わかんない、かないい人がいたら女の子でも別にいいかも…?」
そう濁し、私は葵から目線を逸らした。
「そっか、わかった。じゃあさ、」
葵がそう言うとフェンスから離れると一歩近づいて私の手を取る。そして一言言った。
「私と付き合って」
葵が口を開く前に風がフェンスを揺らして葵の声が少し途切れた。途切れている中でも付き合ってと言う言葉ははっきり聞こえた。
「へ…?」
思わず葵の方を向くと、そこにはいつもより少し潤んだ瞳で私の事を見つめている葵がいた
「あ、葵……?」
「……なに?」
いや、なに?じゃなくて。
「えと……その……付き合うって……」
「そのままの意味で受け取っていいよ」
そう言う彼女の表情は切なく見えた。夕日の光もあいまって消えてしまいそうな雰囲気を感じた。
「葵は、私でいいの……?」
「うん。凛がいいから」
「……そっか」
しばらくの沈黙が気まずい。何か言おうと思考を巡らせるも頭が真っ白で何も思い浮かばなかった。
「それで、返事は?」
葵の事は好き。だけど、それは友達としての好きなのか分からなかった。こんな気持ち初めてでどうしたらいいのか困惑した。
「あ、えと……」
「うん」
「明日まで待って欲しい」
そう言うと葵は目を伏せて力を入れているのか少し震えている手を押さえてこういった。
「もちろん。いつでもいいよ」
その言葉に、屋上の風が少し冷たく感じた。