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「……あら、シモフツくんじゃないですか。こんな時間に来るなんて、そんなに私に会いたかったんですか?」
真帆はにやりと笑んで、けれどどこか嬉しそうな声音でそう口にした。
僕は真帆のいつもと変わらないその佇まいに、ここ最近感じている何とも言えない不安? それとも恐れ? 戸惑い? とにかく、そんな感情から一時的とはいえ解放された気分になった。
僕ははぁっと溜息を吐いてから、
「そう、一刻も早く真帆に会いたくて、仕事が終わってからダッシュしてきたんだよ」
「そうですか、そうですか。相変わらずシモフツくんは私のことが大好きなんですね!」
「そうだよ、大好きだよ。わかってるだろ?」
「どうでしょう? 私はまだまだ愛が足りませんけど。その程度じゃ、私がシモフツくんからのプロポーズを受け入れるなんてこと、まだまだ先になりそうですね~」
残念です、とあからさまに僕をからかう真帆だったけれど、そんなのはいつものことだし、今日のところはスルーしておく。
「……実は、今日はちょっとお願いがあってきたんだ」
すると真帆は小首を傾げてから、
「シモフツくんが、私にですか? 珍しいですね。いつもあんまり私を頼ってくれないのに」
それはまぁ、真帆を頼ると高校の頃を思い出して、ハチャメチャなことをしでかしそうなイメージがいまだにあるからなんだけど……と、そんなことは置いといて、
「いや、まぁ、そうなんだけど。今回はどうにもならなくて、困ってるんだ」
「……何かあったんですか?」
「何かあったっていうか、実はずっと続いていたっていうか……」
ふむふむ、と真帆は顎に手をあて、
「まぁ、とりあえず話を聞かせて頂けますか?」
そんな真帆に、僕はひとつ頷いてから、
「実は、大学の頃から付き合いの続いてる、後輩の話なんだけど――」