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…結局、あの医師からは何も知ることはできなかった。
俺は…人ではないのか?姿かたちは似ている。違うのは…これ…?
頭には、元来普通の人間にはないであろう…二つの耳が生えている。
?)…これか?これが…違うというのか?
そっと刀を抜いた。
…そこに、刃先を当てると…わずかにだが血がぽたりと垂れる感覚。
切ってしまえば。
?)くっ…ぅ…
少し切れ込みを作った程度で、それ以上奥へ押せない。鋭い痛みと、まだ生温かい鮮血が頭を…手を伝っていく。
…切れなかったのは、ナマクラだからだ。そう言い聞かせて…傷つく勇気すらもない自分を隠そうとした。
?)…この傷も、隠さないとな
軽く布切れで止血して、病棟から外に出た。
…身分証とか、あったら名前だけは知れたのにな。今更だが…俺は荷物の類を見つける事ができていない。自分のものとはっきりわかるのは、このナマクラだけだった。
?)俺は…何処へ行こう?
病棟から出て、山を下るように歩くうちに空には星が浮かぶほど暗くなっていた。
謎の男)…今1人か?
?)…何か用か?
謎の男)寒そうだから泊まっていくか?と聞こうと思ったんだが…
確かに、上着すら着ないでいた。それも裸足のまま。…朝から血が滲んでいるのも、そのせいだろう。
?)…世話に、なってもいいか?
男の名前はソ連、年齢は28と言っていた。『306号室』という名の部屋に案内され、俺は今晩そこで寝ることになった。
ソ連)ま、ゆっくりしてけよ。
?)……感謝する。
…おかしいな、こんな見窄らしい格好で…醜い上に危険と言われている俺を、泊める?
和室に通されたが、その光景は悍ましいもので…自分の顔写真や裸の写真、そして卑猥なものまで…様々なものが壁に貼られ、床に散乱していた。
?)ソ連、だったか…?これは…
ソ連)ん?ああ…これか?
ソ連)本当に覚えてないんだ?『ーーー』
…一瞬…その時は俺の名前を呼んでいたのだろう。耳鳴りがして…聞こえなかった。
ソ連)何惚けた顔してるんだ?まさか逃げた事も忘れてたか?
逃げた?俺が…?
ソ連)その顔だよ…思い出したか?まあ…本来お前に名前なんて必要ないんだが。
ソ連)な、『日帝』…♡
ソ連は…俺の首に手を当てて、愛おしげにその名前を呼んでいた…。
俺の名前は…『日帝』なのか…?
ソ連)いなくなった時は…どうしようかと思ったんだ。
日帝)…ん…ぐぁ…ッ…
ソ連)ああ…苦しいよな。俺も…同じだったんだ…愛してるなら、苦しいのも耐えないとな…?♡
ソ連は俺の首根本を…体重をかけるようにして圧迫してくる…。
視界の端が…黒く染まっていく。
日帝)はぁッ、はぁ…?…ッ…。俺の名前は…日帝…なのか…?
首を少し緩められ、酸欠の頭で思いつく疑問を投げかける。…この男は、どこまで知っているのか。
ソ連)…半分、正解。…でもお前には名前なんて…要らないからなぁ…♡
ソ連)…死なねぇように、頑張れよ…♡
再び…首を強く圧迫され……だんだん意識が…遠のいていく…
日帝)……ぐ…ぅ……♡
…少しだけ
気持ちいい……?♡
ソ連)……♡
…?耳元で…何か言ってる?
そんな微細な感覚の後、俺の意識はブラックアウトした。