💡が任務中市民を守り殉職してしまう話。
⚠死ネタあり。嫌な人は回れ右。ご本人様とは関係ありません。
🐙🌟視点
今日はやけに運が良かった。ちょっとずつの話だけれど。例えば車で通った信号が全部青だっただとかフルーツを食べた時他より新鮮な物を食べられた、だとか。そんな些細なことが幾つもあった。
でも本当はそんな運要らなかった。
もし、信号が全部青で、美味しくないフルーツを食べていたら。もしかしたら彼は今もいつもと変わらない可愛らしい笑顔で笑ってくれていたのかもしれない。
西の拠点には今現在俺とライの2人だ。他2人は任務中。そしてたった今Dyticaに緊急要請が入った。俺とライは2人より先に準備してそこへ向かう。
「逃げ遅れた人が多いみたい」
「じゃあライは避難誘導お願いします、俺は交戦しとくんで」
「OK、じゃあ終わったらそっち行くね」
「はーい」
そう言って俺たちは二手に別れる。俺は敵のいる方面、ライは市民がいる方へ。敵は強い奴がいた訳ではなく苦戦することはなかったが、数が多く少し厳しい状況だった。ライの方はというと、もう避難誘導は終わりそうであった。
少しだけ、少しよそ見しただけ。ライの方に敵が向かってしまった。ライのことを信用していないなんてことは無いがどこか心配で堪らなかった。
「ライ!敵そっち行った!!」
「ッ!!」
敵はライの方に向かっていたのを方向を変え、避難中の市民の方へ向かっていく。まずい。そう思ったのも遅かった。俺がカゲツやマナのような速い脚を持っていれば間に合ったのかもしれないが。
でもライは違った。彼は生粋のヒーロー。体が勝手に動いた、とでも言うのだろう。俺が瞬く間にライからは大量の血が吹き出していた。もちろん、かばわれた市民は無傷。それはライにとって本望なのだろう。でも俺は市民なんかより、今まで仲良く大切にしてきた仲間の方がよっぽど無傷でいてほしくて。
俺はショックを受けてしまって動けなかった。が、
「星導ぇ!」
「抜刀」
「小柳、くん」
「おい、伊波、なんで…動いてくれへん、?」
「ごめんなさい、俺…が、」
「星導、伊波運べ」
「は、い」
「カゲツは俺と敵やるぞ」
「あ、う…ん」
ライを丁寧に持ち上げ運ぶ。焦りが止まらない。血が出すぎている、出血多量。意識もない。
俺は分かってしまった、これは間に合わない。
少なからず仲間の死をこれまで見てきたのだ。分かってしまうことだってある。
それでも俺はライを抱えて移動する。
やっと着いた時にはもう息は微か。医師からは緊急手術が必要、と。俺は長い間座ったり立ったり歩いたりして無事に終わるのを待っていた。
「星導、伊波は」
「今手術中です」
「あ、」
手術室のドアが開く。医師は手術には成功したと言ったが、これからは植物状態になるだろうとも言った。
眠るライを見つめ、消えないように願った。
それから病院にはほぼ毎日通った。あるヒーローは泣きじゃくり、あるヒーローはただ見つめ、あるヒーローは頭を撫でて。
そろそろ、いつもみたいに笑ってくれませんか?
そう言ったって起きてはくれなかった。
そして、ある日突然だった。ライが息を引き取った、と。
あなたの葬式は、酷く寂しかったよ。どんなことにもあなたやあなたと過ごした時の思い出が溢れて。
俺はただ1人俯いている。