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夏が近づいてきた少し暑い夜。
ポケットから取り出した鍵をさして玄関にはいると見覚えのある革靴が一足。なんとなく察しつつも正直認めたくない事実に眉をひそめる。でもこんなところでいつまでも立ち往生しているわけにはいかない。
『…ふぅ、』
気の乗らない気持ちとは裏腹に俺の足はすいすいと洗面所に進んでいった。
電気はつけずにひんやりした水で手を洗う。水は俺の熱気に当てられた手から熱を奪っていき、気持ちいい。排水溝へと流れる赤に目を向ける。赤いそれはなんだかワインと重なって、いっそう眉間がぴくついた気がした。誤魔化すように顔を洗うと一気に眠気が去っていく。
繁華街もにぎわってきて、酒の進む季節になったんだと道行く会社員たちをみてそう思った。
それは勿論会社員だけじゃない。
「雲雀、」
どろっと溶けきった声のくせに俺を逃がさない圧は出しやがって。
逆らう筈もなく振り返って名前を呼んだ彼をまっすぐ見つめると、彼はまた満足そうにどろっと溶けていく。
(これのなにがそこまで楽しいのやら、)
いつもの黒いスーツを脱いで、シャツとズボンだけというボスにしては気の抜けすぎているこの格好を部下たちに見せれるはずもなく、酒の入ったボスのご機嫌とりはいつもより手を焼く。
ボスはそっと手で来い、と示してきた。むっとした顔で素直にいうことを聞くと、座れと自分の腿を叩いた。
『俺頑張って仕事終わらせてきたあとなんだけど、』
「そんなの当たり前だろ、お前は僕の駒なんだから」
そうだ。ボスからすれば俺はただの1駒、刃向かうなんて無謀でしかない。
でもその言い方が今の俺にはとても不愉快だった。
従順な犬の振りしていつまでの寝首をかけるチャンスをねらっている訳ではないけど、いつか本気で俺を愛させるつもりだった。俺がいないと貴方は生きていけないように、ちょっとずつ、お前を俺のものにしてやる。
命令だからって軽々しく俺が野郎に股開くと思うなよ。
そういう意志を持ってボスを睨むとボスは生意気なやつだと鼻で笑った。
「お前は本当に馬鹿だな」
そういって俺の上着に手をかけるボスをわざと煽るように足を腰に絡めて、ゆるゆるのネクタイに指をかけてぐっと俺の方に引っ張る。流石にこれごときじゃ倒れやしないけど、効果は十分だ。
『馬鹿に腰振って気持ちよくなってんのはどこの阿呆だよ、』
こんなんですぐに燃え盛っちゃうんだから。
本当に阿呆だよお前。
「…んんっ、……ぁあ、」
枕を抱きかかえて俺に揺すぶられ続けることをお前はどう思っているんだろう。
今までは基本後ろからで前からする事がなかった。でもいつぞやの日に前から抱いたとき、お前は酷く締まりがよかった。俺の顔が好みだからなのか、いつもつかんでる枕がなかったせいなのか、感じることが多かったらしいが。
(あの時以降やっていないな…)
緩くなってきた打ちつけに不満を覚えたのか、雲雀は振り返ってもどかしそうな顔をしながら自ら腰を押し付けて動き続けていた。
ほんとによくできた駒だ。
お前を拾って初めて躾をしたのは十六のとき、お前はそこらへんのやつよりよっぽど良くできていた。俺より生まれが早かったのに、体つきは幼くかつ大人っぽい。触れるだけで快感を拾ったことが何よりお前がよく仕込まれている証拠だった。それに抱いた俺の感情は憤怒だった。
俺のものなのに、俺以外の奴らからの愛撫によがっていたのか?どこまでほかの奴らにお前の体を触れさせた。どれだけの目にお前の体が焼き付かれた。酷く抱かれたか?抑えつけられたか?酷くよがったか?
まくしたててしまってはきりがなかった。
「そっ、や、だあ…」
『…喋っていいと許可した覚えはないぞ』
快感を逃がすようにシーツを強く掴み逃げる腰に添えていた手に力を込めて奥に届くように激しく打ちつける。
雲雀はう゛うと呻きをあげて涙を流した。気持ち良くてたまらない癖に媚びてこないお前のそういうところが気に入らない。あんあんと派手に喘いで俺を求め狂って、どろどろなお前の瞳に僕だけを写せばいい。ほかの奴らそうなるのに、お前はどうして俺の思い通りにならない。
コイツに興味をもってしまった自覚はあれど、決して俺好みというわけではない。
薄い体に生意気な態度。刃向かってくる上に身長も俺より上だ。俺の思い通りにならないお前が酷く気に入らない。
「ああっ……ッッ」
背中をぴったりとくっつけて奥に挿し込み、雲雀の口に指を突っ込む。
喉を大切にしているお前の喉が枯れてしまったとき、酷く絶望した顔をするその瞬間が堪らない。
『噛んだらイかせないからな』
「…ああっ♡♡」
耳のいいお前は自分の喘ぎと卑猥な音に堪えれずにずぶずぶと快楽の波に溺れていくだろう。高く喘ぐことに羞恥心を覚えてイきやすくなるのも知ってる。
ぽろぽろとこぼれ続ける涙をそっと拭って、酷く激しく。
『お前の声が出なくなるまで抱いてやる』
お前は僕のものだ。
『ああ゛あ゛♡♡やら゛っ、つ゛よっ♡♡♡っっ~~~~♡♡♡』
自分の声だと信じたくないくらいに高く激しく喘ぐ声に、腰がびくびくと跳ねて快感を拾って、暴力的なほどに強い波に気持ちいいが止まらない。抑えつけられて腰を打ち付けられて奥にぶつかる音が脳に響く。
「雲雀、っ」
締め付けが強いからか、ボスももうそろそろキツいのだろう。
終わりに近づくにつれて早く強くなる打ちつけにただ喘ぐだけ。強い波に堪えきれずに歯を噛みしめようとするとボスの手がある。
でも、無理
『っっ♡♡♡♡』
「っ、馬鹿っ」
血の味のする口内を舐めまわして、ぼたぼたと垂れていく唾液に神経を張り巡らせる。
どこもかしこもボスによって愛されているこの体を愛おしむように。
俺は今という甘美な快楽に身を耽って。
『ああっ、』
あなたが本当に愛してくれるまで