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フェリックスは一旦部屋を出た。ジョセフが不思議そうに尋ねた。

「そういえば団長の姿が見えないな。」

フェリックスは、一瞬ためらった後、静かに答えた。

「団長はもう戻らないかもしれません。」そう言うと、彼は足早に外へ出て行った。

向かったのは火事が起きた調教小屋だった。

そこにはカオリの姿があった。彼女はどこか寂しそうに小屋の前にたたずんでいた。

フェリックスがゆっくりと近づき、「ロイズはここには来ませんよ」

その言葉に反応してカオリが振り返った。フェリックスはワトリーを見て頷いた。

ワトリーがカオリに近づき、「ロイズはさっきマリーナとここを出て行ったのだ」と言った。

カオリは無言で立ち去ろうとした。その時ワトリーが「待って、エマ!」と叫んだ。

カオリの足が止まる。ジョセフは驚いた様子で、「エマ?あれはカオリだろう」と聞き返した。

ワトリーは真剣な表情で「違う、この仮面の中はエマだなのだ!

カオリの振りをしてロイズと逃げる予定だったのだ」

ジョセフは信じられないという表情で「うそだろ!」と叫んだ。

ワトリーはジョセフに言った。

「入院しているのはカオリなのだ。今ここにいる鉄の仮面を被っているのはエマなのだ!」

ジョセフは驚いた表情を浮かべ、言葉を発することができなかった。

ワトリーは向きを変え、鉄仮面の猫に向かって話し続けた。

「カオリは字が読めない。なのに僕が消火器を持ってきてと言った時、迷わず消火器を持ってきたのだ」

ワトリーは涙を拭いながら続けた。「今日、病院に行ったときに確信したのだ。僕が話しかけたら、

微かだけど、親指が動いて『大丈夫』というジェスチャーをしたのだ。あれはカオリに間違いないのだ!」

鉄仮面の猫は背中を向けたまま、ワトリーの言葉を黙って聞いていた。

ジョセフが口を開いた。「いったいどうやって?!」

フェリックスが重々しく頷いた。「おそらく、小屋の中でカオリと入れ替わり、

彼女を気絶させるか何か罠を仕掛けて、そのまま置き去りにし、そして火をつけたのでしょう。」

ジョセフはその言葉に凍りついた。「こんな残酷なことをするなんて、一体何が目的なんだ!」

ワトリーは絶望的な表情で叫んだ。「なぜこんなひどいことを!カオリは僕の友達なのだ!」

その時、鉄仮面の猫はゆっくりと背中を向けたまま仮面を外した。

振り返ると、そこにはワトリーの言う通り、エマが立っていた。

エマは冷静な目で語った。「私は本気でロイズのことを愛している。

彼にはサーカスの才能があって、彼の演技をもっとたくさんの人に見てもらいたいの。」

フェリックスは黙ってエマの言葉を聞いていたが、その眼差しには冷ややかな光が宿っていた。

エマは続けた。「団長はお金ばかり考えていて、私たちの夢を理解してくれない。

だから、私と一緒にこのサーカス団を抜け出して、新しい場所で新しい未来を築きたかったの。

そのために邪魔者を消したのよ。私たちの愛と夢のためには、どうしても犠牲が必要だったの。」

フェリックスは深く息を吸い、エマの言葉の重さを感じ取った。

「それがあなたの言う愛だと?他の命を踏みにじってまで手に入れる未来が、

ロイズのためだと本当に思っているのか?」

エマの瞳には涙が浮かんだ。「でも、ロイズの才能を埋もれさせたくなかった。

彼にはもっと輝く場所が必要だったの。」

フェリックス「ロイズのためにセリアを殺したのなら、

ロイズに罪を着せようとするのは矛盾しています。本当の目的は、

ロイズに罪を着せることで彼の人生を支配しようとしてたのではないですか

彼の自由を奪い、自分に依存させるのが狙いだったのでは?」

エマの目が大きく見開かれ、動揺を隠せない様子で一歩後ずさりした。

「そんなこと…私はただ…」

フェリックスはさらに厳しい口調で言った。

「現実を見てください。あなたが心から愛したロイズはマリーナと逃げて行きました。

あなたに残されたのは罪の重さだけだ。自分の行動の結果と真剣に向き合ってください。」

エマの顔には深い悲しみが浮かんでいた。フェリックスはその表情を見つめながら、

彼女の心の痛みを感じ取っていた。彼自身も過去に大切な猫を失った経験があり、

その痛みが理解できた。だが、それでもエマの行為を許すわけにはいかなかった。

彼は厳しい言葉を投げかけながらも、エマが少しでもその誤りに気付くことを願っていたのだ。

その時、ジョセフが二人の間に割って入った。

「フェリックス、もうこれ以上はやめてくれ。今のエマに何を言っても分かり合えないだろう。」

ジョセフはエマの肩に優しく手を置き、さらに続けた。

「エマ、あなたには罪を償う時間が必要だ。ここであなたを逮捕する。」

その光景を見ていたポテトは涙を流しながら(先輩…最高にかっこいいっす!!)と心の中で叫んでいた。

フェリックスはジョセフの言葉に少し驚きながらも、その判断が正しいことを感じ取った。

彼の目にはエマの涙が映り、自分の言葉や行動が彼女を救うことができないと感じ無力感が心に広がった。

ジョセフが手錠を取り出すのを見ながら、フェリックスは静かに後ろへ退いた。

エマはジョセフの手に導かれ、静かに立ち上がった。彼女の目は虚ろで、涙が頬を伝って落ちていく。

フェリックスはその姿を見つめながら、

「エマ…」フェリックスは小さく呟いたが、その言葉は彼女に届くことはなかった。

ジョセフが手錠をかけると、エマは一瞬だけフェリックスの方を見た。

彼女の目には深い悲しみと後悔が宿っていた。

「行こう、エマ。」ジョセフは優しく言った。

エマは頷き、静かに歩き出した。フェリックスとワトリーはその背中を見送りながら、

心の中で彼女の未来を祈った。彼女が自分の罪を償い、再び立ち上がることができるように。

ネコ探偵フェリックスとサーカス団猫殺事件の謎

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