教授の無理難題の研究の末、手に実験器具を持つと震える域に達してしまった。
仏頂面の教授も流石に助手の仕事に支障を来してしまうと実験から私を外した。
何もかもが手に付かないままゆらゆらと力の入らない体を歩かせ、やっとの思いで着いた先は公園だった。
自身の精神状態が限界に達していることなど重々承知の上だったが、まさか公園で一生を終えることになるとは、着いたときの僕は思いもしていなかった。
「青い髪の毛に青い瞳。…綺麗ですね」
ベンチに体を預けたまま見た先に立つ「青年」。
見た所中学生か高校生だろうと直感で推測することが出来た。
けれど生憎と、人を外見で判断する思想は持ち合わせていなかった。
冗談。ほんの少しの冗談で、僕は目の前の彼を傷つけてしまったのかもしれない。
「死神かい?」
僕の問いに、精一杯の愛想笑いを浮かべる彼。
「そうかもしれませんね」
目の前の青年は青年でありながら、私よりもこの腐ったゴミのような社会を知り尽くしているようだった。
「…ごめんね、おじさんのジョークは聞き流してくれよ」
彼の引き攣った笑みに罪悪感を感じ、謝る。
僕が謝ることを想定していなかったのだろう彼は、「ジョーク…」と驚いた様子で固まってしまった。
一体今、彼の思想の中で僕はどのような解釈で解かれているのだろうか。考えただけでも面白い。
「そういえば君、まだ未成年だよね?こんなとこ居て大丈夫なの?」
無知な警察が何も知らないまま補導する様子を真似てみると、彼はゆっくりと綺麗な瞳を瞼で隠した。
「大丈夫です。どうせ俺を見る警察はいないでしょうから」
愛想笑い。そんな安いものでは無かった。
彼の苦々しい笑いから読み取れるものは、先程感じた違和感の正体を物語ってくれた。
やっとの思いで掴めた正体を逃がすような馬鹿な真似はしない。
「ねぇ君」
苦しく笑っていた口角が突如降ろされる。
「何?」
先程とは全く違う、敵意剥き出しの綺麗な瞳。
残念。敵と思われているらしい。
「良ければ名前を教えてくれない?」
無難な対応と、それに対しさっぱりした対応を組み合わせてみる。
敵意剥き出しのような人間は、腐り切った社会、世の中にノミの数ほど存在している。
無理難題を押し付けてくる教授は、彼はまだ優しいんだよ。
「名前?」
商談はお互い、真っ先に手の内を見せないようコミュニケーションを取るため、まずは名刺交換から。
お互いの名前を知ってから執り行われる商談から見いだせる結果は幾度と同じものはない。
けれどそれらはどれも甘く、甘美なもので埋め尽くされていた。
樹液のように、相手の情報を抜き取ってからこちらの手の内を示せるから。
「青井らだ男」
これが偽善者のテクニックとも呼んで良いだろう。
こんな青年相手に本気になる私は、きっと、どうにかしてしまったのかもしれない。
「僕は今民、コンちゃんって呼んでね」
コメント
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相手であるこんちゃんの視点も書いてくれるのりしおさんマジパネェッス…😭
今民おぢさん..........