第二話 影の掟
カイルの肩をかすめた刃は、わずかに彼のトレンチコートを裂いただけだった。だが、その一瞬の油断が命取りになることを彼は知っていた。
「誰だ!」カイルは声を潜め、暗闇の中で相手の気配を探した。
影がすっと動き、黒ずくめの人物が姿を現す。目元を隠したマスクの向こうで、冷たい視線がカイルを捉えた。
「カイル・ハリス。さすがだな、ここまで来るとは」
敵はゆっくりと歩み寄りながら言った。
「何の目的だ?命令を聞いているのは俺だけだ」
カイルは拳を固め、背中の無線機に手を伸ばす。
「残念だが、その命令はもう古い。これからは俺たちが新たな秩序を作る」
相手は手にした小型デバイスを操作した瞬間、周囲の街灯が一斉に消えた。完全な闇が二人を包み込む。
「これが、新しい影の掟か…」カイルは低く呟き、手探りでポケットから小型の閃光弾を取り出した。
闇夜に一筋の光が走り、静寂を破った。