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鈴の音が聞こえた
うちは森や山に囲まれた小さな町だ。
私は幼馴染とよく森に遊びに出掛けて、虫を捕まえて帰りよく母に怒られていた。
ある日私達は、近所のおばあちゃんに貰った駄菓子を頬張りながら歩いていると、大人達が真面目な顔で話しているのが見えてこっそり聞いていた。
森から奇妙な音が聞こえるらしい
昨日××さんの娘さんがいなくなったようだ
その子も言っていたらしい
と意味不明な言葉を話していたらしい
駆け落ちとかじゃないの?
もしもこれが初めてならそう言えたさ
ともかく明日は皆で協力して探そう
だけどこんな広い森どうやって…
あの場所に向かったんだろう
そう知っているかのように村長が話をした
私達は好奇心を止められず、隣でソワソワとしている幼馴染と冒険の準備をした。
バッグにお菓子を詰め水筒を入れた。
幼馴染の水筒を私が預かり、代わりにお菓子を預けた。
私達は朝日が昇り眩しさを誤魔化すように目を擦り、2人で山の中へと進んだ。
大人達の噂を調査する為に、勇気を振り絞り不気味な森に入った。
どんどん進んでいくにつれ、森が暗くなり、風が木々を揺らし、恐怖心が生まれ始めた。
隣にいる幼馴染と手を繋ぎ、歩みを進める。
その時、緊迫感が私達を包み込んだ。
そこは、少し開けた場所に大きな木がそびえ立つとても不思議な場所だった。
私達は自身の頭の中に響く奇妙な音に気付き足を止めた。
とても綺麗な場所だが、木々は異様に腐敗しており、枝は伸び放題伸びていて、木には邪悪な顔のような模様があり、中心にそびえ立っている、立派な大木からは黒い液体が漏れ出ていた。
奇妙な気配が漂い全身が凍りついた。
木の影から得体の知れない存在が現れたのだ
その存在はこちらを見ると、次第に姿が変化し始めた。
どんどん歪な恐ろしい形となり、こちらにゆっくりと近付いてくる。
そして話しかけてきたのだ。
だけどなんと言っているのか聞き取れない
声は聞こえるが聞き取れないのだ
恐怖のあまり動けない私達に、その得体の知れない何かは冷たい声で呟いた。
「聞こえたな」
私達は理解が出来ず、冷や汗をかいた、恐怖に取り憑かれ、逃げ出すことすら忘れ、ただ立ち尽くしていた。
微かに聞こえていた奇妙な音は、どんどんと大きくなり、私達の耳を貫くように響き渡っていた
その得体の知れない何かは手に持っていた鈴を揺らすと、木々がざわめき、奥にある大木が黒い液体をドクドクと流し始めた。
幼馴染がお菓子を投げ、そこに注意が逸れた瞬間、私の手を取り走り始めた。
木々の枝は私達を邪魔するように伸び、得体の知れない何かは怒り狂い私達を追いかける。
ある程度走り疲れ始めた頃、幼馴染が突然私を突き飛ばした。
私は崖を転がり落ちてそこで意識を失った。
後日聞いた話では私は1週間ほど行方不明になり、警察や町の人達で探し回っても足跡すら見つからなかったそうだ。
私はもう1人いなかったかと聞くと、私だけだと伝えられた。
私は親や周りの人に聞いて回るが、誰も存在を知らなかった。
どういうことだろう、確かに2人で行ったはずなんだ。
彼の親に聞けば答えが出るはず。
そう思い家に行くと、そこは小さな寂れた祠がぽつんと存在する空き地だった。
私は家に遊びに行き、お菓子も食べた。
彼は一体何処にいるんだ。
私は一生懸命探したが見つからなかった。
あれから私は大人になり町を出て仕事をしていた
昔起きたことなど忘れていた。
里帰りした際、親から聞かされ記憶にないと笑っていた。
そして懐かしい思いを噛み締め子供の頃の荷物を物色していると、ある見覚えのあるバッグを見つけた。
そのバッグを手に取り私は全てを思い出した
そうだ、私には幼馴染がいたんだ。
写真を漁ってもどこにもあの子がいない。
だけど存在しているはずなんだ。
だってここに「ユウキ」と書かれた水筒がある
これは私の幼馴染の名前だ、間違いない。
親に聞いても、知らないと言われた。
この町の都市伝説、立ち入り禁止の森、耳に残る不愉快な音、なぜ忘れていたんだろう。
私はあの日のことを母に話すと、母は深刻な顔で私に聞いてきた。
「貴方が聞いたその奇妙な音はなんなの?」
「一体なにが聞こえていたの?」
私は少し間を置き俯いて
その質問に答えた
私には