今日が 決戦 の日
「ん、、ぅ」
カーテンから漏れる光に私は絶望した。
朝が来た。
なんであんなことしちゃったんだろうって、後悔しかしていない。
自分のばかばかばか。
いじめられる日々より今日の方がよっぽど怖いわ。
でも、行くしかない。
よし、行こう。
私がやったなんてだれもわからない。
自分を納得させ、思い腰を浮かし制服に着替えた。適当に朝ごはんを済ませ、歯を磨いてから玄関の扉を開けた。
「ギィ、、、」
と、若干立て付けの悪いドアの音がさらに不安を煽る。
あぁ今日もいい天気。
そう思い、気を紛らわせた。
校門に着くと、何やら下駄箱付近が大騒ぎになっているようだった。私たちの学年の下駄箱を囲み、野次馬達がひそひそとなにやらつぶやいている。押し潰されそうになりながらもなんとか前に進み、目の前の頭の中からひょっこりと顔を出した。
いた。
あいつらだ。
長いロングの髪を揺らしながら、何か騒ぎ立てている。
足を、、、、おさえてる、、?
揃いも揃って同じ行動。
まさか、、
「はーい!静かにしてください!みんな直ちに教室に行きなさい!散らばって!」
今年から入り始めた佐野先生。若くて可愛らしくてみんなから愛されるキャラのポジションだ。羨ましいなぁ。
「ぅわぁっ」
佐野先生が大声で叫ぶと生徒達はぶつくさ文句を言いながらもそれぞれの学年の下駄箱へと向かった。その波に流されるようにして、いつのまにか私も2年の下駄箱についていた。どうやら彼女らは保健室に連行されたようだ。
一眼目の前に彼女らは帰ってきた。不満そうな顔で辺りを睨みつけながら自分の席に着く。
つこうとした。
「いっ」
下ろしたはずの腰をすぐにまた浮かせる。私は彼女らのことを直視できなかった。目が合えば全てを悟られそうで怖かった。
その後も彼女らの地獄は続いた。
机の中に手を伸ばせば
「いって、!」
イスから少し動けば
「ったぁ、、?」
イラついて机の下を思いっきり蹴れば
「っ、、!なんか刺さった」
帰りの時に下駄箱に手を入れれば
「あたっ、、!」
、、、、。
全部、私がやった。
その日は「痛い」という悲鳴と彼女達の怒号がそこらじゅうで響き渡った。
帰り。うまくいったなぁ、と思いながら階段を降りると、向かい側の保健室で口喧嘩のような声がした。幸い少し扉の隙間があったのでそこを覗くと、中には鬼の形相をした彼女らが先生達と口論になっていた。聞き耳を立てる。
「だから、!なんで今日に限ってこんな痛い間に合わなきゃ行けないのよって言ってるの!そもそも画鋲がそこらじゅうにあるのがおかしいのよ!画鋲を扱うなんて先生達しかやらないはずよ!」
「どうしてくれるの!?」
「私の身体中今日1日で絆創膏だらけになっちゃったじゃない!!」
「しかも彩絵だけじゃない!私たちにまで被害が出てるの!どうしかしなさいよ!」
聞くに堪えない。なんてったって全部私が仕組んだことだから、、。でも、全部貴方達が私にやったことよ。
ふと、話すのすらめんどくさくなって、足を組み視線を先生からずらした香苗が私の方を向いた。
バチっ
まるでこの効果音が聞こえるかのようだった。
「あっ、!」
香苗が私を指差し立ち上がる。
「ぅ、、うそ。」
私は恐怖から動けなくなっていた。気づけば目の前に香苗がいたんだ。
「あんたッ、、、!全部あんたがやったんでしょ!?何から何まで!今までの仕返しのつもりで!汚いわよあんた!正直に言えッ!!絶対許さないんだから!」
何も反論できないでただ視線を動かしていると、奥に座っていた佐野先生と目があった。佐野先生は目を見開き、とても驚いている様子だった。ぱくぱくと言葉を紡げないでいると、それに気づいた佐野先生が香苗に近寄り肩を抑えた。
「こらっ!離れなさい。菊池さん!困っているでしょう!?」
しばらく三人の引っ張り合いが続き、私の心臓が死にそうなくらい音を上げ始めたころ、香苗がついに力尽きた。強い目で私を睨んだ後、大人しくベッド近くの椅子に戻っていった。それを確認した佐野先生は私に柔らかい笑みを浮かべた。
「ごめんね。気にしないでね、彼女達は私たちがなんとかするから。ほら、気をつけて帰ってね。」
優しくドアが閉められた。
へなへなと私は廊下に崩れ落ちる。
バクバクバクバクと心臓の音が鳴り止まない。深呼吸をしてみてもダメだった。
いきなり詰め寄られた驚きではなく、明日からの恐怖によるものなのかもしれない。
コメント
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作品の作り方がお上手… フォロー失礼します🙇♀️🙏