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オレの名前は蘇枋隼飛というらしい。
どうしてこんな歯切れの悪い自己紹介になってしまったのかと言うと
オレがいわゆる成り代わり転生をしているからだった。
マガジンポケットにて連載されている著者にいさとる『WIND BREAKER』
___の、主要キャラの1人である蘇枋隼飛は
掴みどころがなく人の気を引く非常に魅力的なキャラクターだ。
人気投票も堂々の1位である。
そんな子の体に産まれて早16年、
_____オレは現在絶賛イヤイヤ期である。
コンコン
「隼飛?いい加減学校へ行った方がいいんじゃないかな」
「…………んー……」
毛布に包まって数時間が経つ。
時刻は既に午後12時半。
とっくに始業を終え皆お昼ご飯を食べているであろう時間だ。
今朝から1時間置き___恐らく授業の合間___に連絡が来ている。
通知センターで確認したところ内容は全てオレの体調を懸念する心配の連絡ばかりだ。
それもそう、オレは今世の全てを”蘇枋隼飛”を演じ切ることに注力していた。
優美冷徹
軽妙洒脱
韜光養晦
そんな四字熟語の似合うミステリアスで隙のない男、蘇枋隼飛。
そんな男が突然学校に来ません、連絡も着きませんとなったら
何かあったのかと心配するのが定石だろう。
「高校に上がってからまた無理してるんでしょ」
「……………してないよ…」
「嘘が下手だね」
扉の向こう、廊下から師匠がくすくすと笑う声が聞こえる。
声を聞くために扉を少し開けることはあっても、
全開にしないのは一人が好きで閉じ篭ってばかりのオレを按じてのことだった。
“蘇枋隼飛”を演じ切る
自分を殺して常に他人を演じ続けるというのは想像以上に過酷なものだった。
安心できるのは自室のみ。
それ以外の場所では常に発言から髪の靡き方まで気を貼り続けていた。
そんなことを毎日毎日続けていると、ガタがくるというのは簡単な話だ。
中学の時、遂にオレは不登校になった。
情報収集の上手いにれ君がオレのことをあまり知らないのはそのせいだ。
ちなみにこの眼帯、___この眼帯の奥には古傷がある。
その不登校だった頃、オレは本当に暗黒期で、自傷が癖になっていた。
鬱と薬で頭が回らず、自分の目を抉った。
その痛みすらも上手く認識できないほど疲弊していたのを今でも覚えている。
実際の蘇枋隼飛は一体どう言った理由で眼帯をつけているのかは知らないが、
図らずも表面上は原作通りに行った出来事の1つだった。
その頃にはもう既に師匠とは出会っており、体術もある程度極めていた。
日に日に窶れおかしくなっていくオレを師匠は心配して、少しだけ過保護になった。
「隼飛」
「…やだ」
「…………」
………学校に、行きたくない…
一度鬱になると、完治はしない。
一度できた傷は、深く深くそこにこびり付いて剥がれないのだ。
桜君と一緒にいるのは楽しい。
にれ君も、皆、大切で大好きだ。
でもいつも心の底から手放しで笑えない。
オレは今ちゃんと蘇枋隼飛で居られているのだろうか___
その1点が気になって気になって、仕方ない。
その一方で今楽しいのも、怖いのも、悔しいのも、嬉しいのも、
自分の感情が全部偽物に見えて、
オレは蘇枋隼飛にはなれないと言う不安と自他の境界線が解けて感覚を失うのが怖くて
ただあの場でオレ1人が、いつも、いつも外側にいる。
さみしい
なんて言えない。
蘇枋隼飛はそんなこと言わないから。
でも言わないと、そうしなければオレは
「…ぅ、ああああ、ぁぁああぁ…………」
発狂。
無茶苦茶な感情を声に出すと落ち着く、普段抑制してる分余計に。
心がキツいとオレは声がデカくなるし主語もデカくなるし全体的に発言が投げやりになる。
蘇枋隼飛がしなそうなことをしている瞬間が、1番心が楽だ。
蘇枋隼飛はこんな弱音吐かない。
我儘も言わない。
“イヤ”___なんて以ての外である。
「がっこういきたくないいいい〜〜〜…!!」
そう、だからイヤイヤ期なのである。
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※続くのかどうかは3/4の本誌次第
みんながんばろう
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