「100円、これで好きな物買ってきな」
こんな小さな街でもお祭りくらいはある
年に一度8/8に行われる花火大会が私は大好きだった
夜は暗くて怖い
小さい頃は毎日夜が怖くて泣いていた
でもたくさんの屋台で昼のように明るくなった街はまるで私のこの恐怖心を吹き飛ばそうとしているように見えた
100円を握りしめてたくさんの屋台を巡る
その中で氷の入った盥(たらい)に入れられた飲み物を見つけた
その中に変わった形のガラス瓶を見つけた
中にはビー玉が入っていて綺麗だった
「それひとつください!! 」
らむね
小さい私の口には合わなかった
炭酸が口で暴れて痛かったのを覚えている
私はらむねの入れ物に惹かれて買ったんだ
別に美味しそうとか味のことなんてひとつも気にしていないらむねを持って歩いているとそこに両親の仕事仲間が来た
私は両親の目を盗んでらむねの中身を捨てようとした
「何してるのかな〜?」
顔を上げるとそこには中高生くらいのお兄ちゃんがいた
「これいたいの。びんだけほしいの。」
「じゃあ、俺が貰っていい?」
瓶だけ欲しかった私はお兄ちゃんにらむねを渡した
正直取られるんじゃないかと少し不安だった
お兄ちゃんはあんなにピリピリして痛いらむねを美味しそうに飲んでいた
「おいしいの?」
「君ももう少し大きくなれば分かるよ」
そう話しているうちにらむねは空になっていた
お兄ちゃんはしっかり洗って私に瓶をくれた
「ありがとう。おにいちゃん!!」
気づいたら私はお兄ちゃんに恋をしていた
容姿に恵まれなかった私は今までこんなに優しい扱いを受けたことがなかった
こんな私にも優しくしてくれるお兄ちゃんに私は初めて恋心を抱いた
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