テラーノベル
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捕まっちゃった!
ロスサントス。天気、晴れのち曇り。
まだ大型犯罪の波も激化しておらず、ここ最近にしては比較的平和。
数人の市民が会話を散らす広場にて、青鬼はバイクを停めた。
「デヤンス~ホットドッグ売って~。」
「お!大将!おはようでやんす!10、10でいいっすか?」
「あ~じゃあ20、20で!コーラね。」
「あいよォ!ちょっと待ってくれでやんす~。」
「いいでやんすよ~。」
まったりした空気が流れ、さほど暑くもない風が青井の肌を撫でていく。
ソーセージの焼ける匂い、油の跳ねる音。
腹を空かせた青井にとっては最高の調べ。
ふと、視線を感じて振り向いてみれば、見知った赤い服とバイクが、青井のバイクに横付けしている。
「青井くんじゃないの。おはよう。」
「ハンク~、おはよ。今日は犯罪しないの?」
「ん~みんなまだ起きてないんだよね。して欲しいの?」
「いやあ?あー今日は犯罪なくて平和だなぁっ、全然暇とかではないけど、平和だなぁっ!」
「ふふ、して欲しいんじゃん。じゃあ人質にとっちゃおっかな?」
笑い顔の仮面を押さえて青井に近づくハンク。
「うわぁ!待って待って、先にホットドッグ!」
「はい!出来たでやんす!お気をつけて!」
「あ~も~!!」
デヤンスの手から紙袋を受け取った瞬間、青井の手は後ろ手に拘束された。
そのまま護送され、ハンクはバイクに跨る。
「もー…こーなったよ…。」
「暇なら俺とデートしようね。どこの銀行襲う?」
「犯罪すんなぁ!!」
けらけらと笑うハンクに噛み付く青井。
それを不安そうに、でもまあいつも通りか、とデヤンスは見送った。
「青井くん今日もホットドッグなの?」
「んー、ホットドッグお腹膨れるし、安いしすぐ食べれる。最強。」
「栄養偏ってそう。前より痩せたでしょキミ。」
「ぐうの音も出ん。」
「ハンクは餡の中で偉いの?」
「それは教えられないなぁ。」
「教えてよ~俺とハンクの仲でしょ?」
「………………………内緒。」
「今ちょっと揺らいだ?w」
「もう~ズルいよ青井くん…w」
ガチャガチャと金庫を弄りながら談笑に花を咲かせる。
どうやら同時多発的に強盗が起こっているようで、既に青井のシグナルのあるこの銀行へは警察が来なかった。
「来なかったねえ、警察。青井くん見捨てられてる?」
「ちがーう今忙しくなってたの!」
「なるほどね。それじゃここで解散かな…送ってく?」
「うんお願い…っ!?」
パシュン、と聞き慣れたサイレンサーの音。
「ぐっ…」と呻き、青井は倒れ込む。
薄れゆく意識の中、青井は自身に駆け寄るハンクと、その後ろで鈍器を振り上げる巨漢を見た。
ーーーーー
「ぅ……っ?」
どのくらい経ったのか。先に目を覚ましたのは青井の方だった。
視線だけで見回しても、知らない天井、知らない壁。
右手で被弾箇所を探ろうとしたが、何かに阻まれる。
「…は?あー…マジか。」
右手が拘束されている。怪我を庇いながら体を起こせば、繋がれた鎖の先は、隣にうつ伏せになっている人物の左足に集束している。
青井の右手と、ハンクの左足が、繋がれている。
「ハンク…ハンク、起きろ。おーい。」
「ぅ゙う…ん…?青井くん…?」
「大丈夫?痛い?」
軽く揺さぶってハンクを起こす。
ハンクは頭が痛むのか、少し顔を顰めた。…そこで青井は気づく。
2人とも顔を覆っていた仮面とヘルメットが無い。奪われたのだろうか。
ハンクは体を起こそうとして、左足を体に引き寄せた。と、鎖の鳴る音で大半を理解する。
「…これ、マズイね。」
「ほんとに。これじゃ歩けないよな。」
「青井くん、怪我は?」
「急所は外れてる。雑だけど手当もされてる。多分向こうはまだ、俺たちを殺すつもりは無い。」
「OK。とりあえず周りを調べたいけど…。」
方や警察官、方やギャングの構成員。
テキパキと状況をまとめ、自分達の置かれている現状を理解していく。互いに持ち物は殆ど奪われていて、武器になりそうなものは無い。ハンクの怪我はたんこぶで済んでいて、青井も雑ではあるが治療が施され、出血は止まっている。ぐるりと見回しても耳を澄ませても人の気配は感じなかった。
そして面倒なことにこの繋ぎ方、まともに歩けない。
ハンクが立ち、歩けてもそれを追従するように青井は這いつくばらないといけない。
ましてや青井が立って歩くにはハンクは逆立ちでもしなければいけないだろう。
それなら前者の方がまだ何とかなるだろうか。
「…青井くん。」
「…しょうがないよ。」
ハンクは自身の足元で四つん這いになる青井を見下ろした。
(ふむ、この画角はなんとも…)
ほんの少し不服そうに、でも諦めたようにハンクの足を追う青井。
警官に有るまじき惨めな姿に、ハンクの支配欲が満たされていく。
動きづらいながらも、狭い部屋を軽く探索していく。
長い間放置されているのだろう、汚れた書き物机が壁際に。コンクリート打ちっぱなしの壁と天井は、小さな声もよく拾って反響させる。扉は1箇所、重たそうだ。
四つん這いは腰に来る。狭い部屋でもぐるりと1周を終える頃には青井はヘトヘトだった。
「…はぁ、ハンク、ちょっと休憩させて…。」
「あ、ごめんね。座ろうか。」
向かい合わせになってあぐらをかく。
ズボンを捲ると案の定赤くなっており、ジンジンと痛む。手のひらだって痛い。
ふーふー息を手に吹きかける青井を見て、罪悪感が湧くハンク。
ふいに、「あ、」とわざとらしく顔を上げた青井。
「俺がハンクをキャリーすれば動けるかも。」
「え?うわっ!!」
「よっこいしょ、ほら。」
おもむろに立ち上がりハンクを俵担ぎする。
休憩がてらどのキャリーの体勢ならば通用するか考えていたのだ。お姫様抱っこは無理、おんぶも抱っこも無理。鎖が足りない。
「ハンクこれでいい?」
「うん…男としての何かが削がれた気分。」
「ええ?wまあ…我慢して。」
両手で顔を覆うハンク。新人の頃から可愛がっていた(年上ではある)警官に、こうも簡単に抱き上げられてしまってはなけなしのプライドが傷つく。
まあこの体勢なら青井と同時に後方確認も出来るか、と早々に諦めた。
「ねえこの扉開くと思う?」
「いや…多分鍵かかってるんじゃないかな…。」
そうじゃなくても重そうだ。下手に開けようとして外に気づかれる可能性もある。
青井は扉に耳を当てる。自慢の聴力が拾ったのは、2人分の足音と話し声だった。
「2人いる。多分男…かな。」
「…耳が良いね。どうする?」
窓の無い部屋。救援を待つか、正面突破か。
青井は扉から離れ、ハンクを降ろして座る。
「そのうち交渉役とか来るんじゃないかな。ハンクも拐われてる時点でギャングに喧嘩売ったも同然でしょ?すぐ助けてくれると思うよ。」
「随分買ってくれるなぁ。まあでも、そうだね。」
本音を言えば青井の方が血眼になって探されているのでは…というのは飲み込んで、ハンクは1つ訊ねる。
「でも、交渉役?もしかして、俺らの場所ってもう見つかってるの?」
「うん。だって、」
青井は左手で、天井を指さす。
「ヘリの音してるもん。」
カッ!と辺りが閃光に包まれ、ドカンと扉が破られる。青井にとってはお馴染みの、ロケットランチャーの爆発だった。
「アオセーーンッ!!生きてますかァ!!」
「つぼーらー、ここー。」
「あぁ?ハンクじゃねえか。何でいんだよ賊の共犯か?」
「違う違う違う、一緒に拐われたんだよ。被害者ね。」
炎を突っ切って飛び込んできたつぼ浦の姿にホッと胸を撫で下ろす。ハンクはというと、突然のことに頭が追いついていない。なんなら頭痛がぶり返してきた。へなへな後ろに倒れ込み、安堵して息を吐く。
「つぼ浦、他の人は?」
「ああ、今来ると思うぜ。」
「ハンク!!」「らだお!!」
ドタドタと音を立て入ってきたのはウェスカーと成瀬。成瀬は土埃を浴びボロボロで、ウェスカーに至っては元々赤い服が返り血でさらに赤く染まっている。
「安心しろ。奴さんはぜーんぶおネンネだ。ウチのに手を出したんだ。タダでは済まさん。」
「うはー、すげえ死体の山。」
「まずは病院だな。」「はあい。」
「ハンクはちょっと、警察に構いすぎだ。」「ぼしゅ…泣」
こうして、アーモンド・サラザール、青井らだお誘拐事件は保護者のお迎え()によって幕を閉じた。
ちなみに動機はというと、
「ギャングが警察と仲良くしやがって!ロスサントスのヤツらは腑抜けてんなァ!!」
だそうだ。もちろんこの後ウェスカーにより脳天をぶち抜かれお陀仏となった。
「ハンクお疲れーまたなー。」
「ああ、またねらだおきゅん。」
「うわ!その呼び方久々に聞いたわ!」
こんな感じ
これが書きたいがためにこの話が生まれたまである
コメント
3件
好きッッッッ... 以前から他の作品も見させていただいているのですが語彙力がすげぇ... あの抱き方(?)おもろいな...
やっぱこの2人最後、尊すぎるッ〜…!! 誰も2人のお面無くなってるの反応しないのか…