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明日は屹度、晴れるから

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明日は屹度、晴れるから

30 - The Present Day 現在 鹿島 美緒 1話

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2024年11月04日

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◆◇◆◇◆◇◆◇




『終わったね』


――――五月蠅い


『怒っているの? それとも、悲しんでいるの?』


――――五月蠅いってば!


『怒っているのね? でも、私に怒っても仕方がないわよ?』


――――消えてよ!


――――話しかけてこないで!


――――何で私に付きまとうのよ!


『何でだと思う? ねえ? どうしてだと思う?』


雨脚は更に強まる。


時折吹き付ける強風が、水たまりを波立たせ、飛沫を美緒の顔に飛ばす。


雨音に掻き消され、喧騒などは聞こえない。だが、『少女』の声だけは、雨音を透過して耳に響く。


「分かってるわよ、私が悪いの! だから何よ! 私に、どうしろって言うのよ!」


全てが終わった。


慧との関係が、ずっと続くと思っていた。


何も言わず、ボロが出なければ、ずっとずっと、慧と良好な関係が保てると思っていた。だが、それは幻想だった。元々、タイムリミットがある関係だった。それを知っていながら、美緒は慧に深入りしすぎた。


「私はどうだって良いの! 私はどうなっても良いのよ!」


慧が心配だった。彼の心を深く傷つけてしまった。あの、純真無垢な美しい心を、穢してしまった。


心配する権利がないのは知っている、だが、慧の心が心配だった。


三ヶ月近く、美緒は慧を騙し続けていた。


最初は、美緒も慧を騙すことに積極的だった。


しかし、すぐに美緒は慧に惹かれた。


常に真っ直ぐで、人を疑うことを知らない瞳。優しく、美緒を包み込んでくれた心。


美緒の周りにはいなかった人柄に、すぐに美緒の心は虜になった。


慧を傷つけず、分かれる方法はいくらでもあった。彼の事を思うなら、もっと早くに全てを打ち明けるべきだった。いや、真実を語らず、別れるべきだった。


仲間達には、適当な事を言っておけば良かった。


『甘えすぎよ』


『貴方は、甘えすぎ。舐めているのよ、人生を。全てを』


「黙って!」


叫んだ美緒は、足下にある水たまりの水を『少女』に掛けた。水は『少女』の服を濡らすことなく、体をすり抜けていく。


「私に、どうしろって言うの……。もう、慧君に嫌われた……」


『罪を償う時が来たのよ』


『少女』はおかしそうに笑う。甲高い声で、気が触れてしまったかのように、『少女』は笑った。


「私は、私は……どうする事もできなかったよの!」


慧を取ることも、友達を取ることも選べなかった。


「本当にそうか?」


突然、美緒に降りかかっていた雨が止んだ。


目の前に、靴があった。


「慧君?」


顔を上げたその先には、那由多が傘を持って立っていた。


「那由多……!」


美緒の全てを知っている、数少ない人間。


「お前も、難儀な奴だな」


つと、彼は横に視線を向ける。その先には、誰にも見えないあの『少女』が立っていた。


『貴方、私が見えるの?』


驚いたように僅かに目を見開き、『少女』は小首を傾げた


「…………」


那由多は溜息をつき、首を横に振る。


「いや、何も見えないし、聞こえないよ」


彼は素っ気なく答えると、こちらを見下ろした。


『見えてるじゃない』


少女の声に、那由多は唇の端を僅かに上げた。


「立てよ」


那由多は手を差し伸べてくる。


「…………」


美緒は差し出された手を見つめる。


「こうなること、分かってた?」


子細を説明する必要はないだろう。不思議と、彼は全てを理解している気がした。


「分かっていたよ。慧にも同じ事を言われた」


「慧君に会ったの?」


「ゲロゲロ吐いてた。余程ショックだったんだろうな。ま、それもそうか。お遊びにしちゃ、やり過ぎたよ、お前等は」


そう言いながらも、那由多は腰を屈め、美緒の手を取って立たせてくれた。


「折角の浴衣、台無しだな」


そう言って、那由多はタオルと傘を手渡してくれた。

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