fwak 闇深い 2人とも高校生
テスト期間なのになにやってんだ私
ご本人様関係なし
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ふわっち、このままどっか行っちゃおーよ
そう言った君の顔は今にも泣き出しそうだった
そして
暑い暑い夏の日、明那と俺はこの世界から逃げ出した。
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「 あきなぁー、俺たちどこ行くん? 」
「んー?どうしようね」
ガタンゴトンと電車に揺られ、変わらない田んぼの景色が流れていく。
俺たち以外いない車両の中は、心地よかった。
「とりま海行っちゃう?」
「ぁー、ええねそれエモいわ」
俺の提案に明るい声が返ってきた。
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車窓から海が見えたところで、電車を降りる。
「ぁ”っぢい!!」
降りた瞬間、ムワッとする暑い空気と共に、太陽の強い光が降り注いだ。
暑い暑いと騒ぐ明那
海を目指して俺たちは歩いた
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電車を降りたところから、少し歩くとすぐに海は見つかった。
ここにも人は俺たちだけだった
「ふわっち!海だよ海!!」
サンダルを乱雑に脱いで、ほっぽって、
明那は砂浜を駆け出す。
「あきなぁ!?ちょ、待って俺も行く!」
明那が走り出したのを見て慌てて俺もサンダルを脱いで明那を追いかけた。
「ぅわっ!きもちぃ〜っ!!」
膝くらいまで水に浸かって、パシャパシャと水を蹴る明那。
「ほら!ふわっちも!」水をばしゃりと顔面にかけられ、びっくりするがすぐにかけ返す。
「やったなあきなぁ!」
「ちょ、ふわっち本気出すなってw!」
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どのくらい時間が経ったのだろうか
水でべしゃべしゃになった俺たちは服を乾かすため、日差しが照りつける太陽の下、砂浜を歩いた。
「ぁー、楽しかった!」
そう言ったあきなの顔は満足気だった。
だから、聞いたんだ。
「…明那、今幸せ?」
「うん、幸せ」
すぐに返ってきた返事に俺は頬を緩ませた。
「 俺さ、ふわっちといればなんだって出来るような気がするんだ 」
「…なんだって?」
「うん、なんだって」
声は明るい。けど多分、明那は今悲しい顔をしてるんだろうなってそう感じた。
「ふわっちはさ、俺がしたいこと分かるよね」
分かる、分かるよ明那
けどそれをしたら、してしまったら俺は
「明那、ダメだよ」
俺は明那の手首を掴んだ
だってこうしないとどっかにいきそうな気がして
「…じゃあさ、ふわっちも一緒にやってくれる?」
あぁその目はずるいよ明那
そんな今にも泣きそうな眼は
俺だってお前がいないと、この世界に生きてる意味なんて無いんだよ
「いーよ、明那」
そう言うと、明那は驚いたように目を見開いて、涙をこぼした。
大丈夫、大丈夫だよ明那
お前の傍には絶対俺がいるから
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日が暮れて、太陽が落ちて、月がのぼった
周りは街灯もなく真っ暗で、海の音だけがはっきり聞こえる。
静かだ
明那は真っ黒な海をただぼーっと見つめている
その目は何を映してるの
なにを思ってるの
俺は聞かなかった 別に聞く必要も無いと思った
明那の苦しみは俺には分かってあげられない
背負ってもあげられないから
でもさ、俺明那が笑顔でいれたら良いんだ
明那を幸せにする事が、たとえどんなに残酷で辛くて重いことだとしても
「ふわっち」
明那は海を見つめていた瞳を俺の方に向け、名前を呼んだ
明那の目は闇の中でもきらきらと輝いていて、その美しさに思わず息を飲んだ
「足、かして」
明那は俺の足を触ったかと思うと、自分の足と俺の足を束にするようにしてロープをくくり始めた
そして、くくり終わったあとに持ってきたおもしとなる大きな石をくくりつける。
「ふわっち怖い?」
「んーや、怖くない」
これは本心だった。なにも思わなかった。
ここから逃げ出したいだとか、怖いとか、そんなの少しも考えなかった。
「よし、できた」
しゃがんでいた明那は立ち上がった
俺も続けて立ち上がり、明那の横に立つ
俺たちの目の前には大きな真っ黒な海が、さざ波をたててそこにいた。
ずっと見ていると吸い込まれそうだった
「 あきなぁ、…いこか 」
「うん」
砂浜をゆっくりと歩き出した
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ざぶざぶと耳元で波の音が聞こえる。
冷たいな 石の重りと、水の中で歩きにくい
いつの間にか海水は腰まで浸かっていた
もう元には戻れない
「 あきな 」
手を繋いだ先には
寒そうにしている明那
明那の方が背が低いから、腰の少し上くらいまで浸かってる
「 大丈夫、ふわっち進もう 」
寒さに体を震わせながらふにゃりと笑う明那
可愛いなぁ、なんて
そんなことを思いながら
俺と明那は闇の中、水の中の砂を蹴って進んだ
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「 あ、待ってふわっち 」
進んで結構経った頃、呼び止められた
明那沈みそう 苦しそうにしているのが分かる
もう首元らへんまで水がきていた
「大丈夫?」
「 …ぃや、これ以上進めないかも 」
「 そっか、…じゃあここにしよか 」
俺ももうちょっと限界ではあった
歩くの疲れたし、むちゃくちゃ寒い
体の感覚ほぼ無い感じする
「これいっせーのーでで水潜ればええの?」
「 そうしよ 」
明那はもうすでに呼吸が浅い
目がうつろで、瞬きも全然してない
そんな明那の手をぎゅうっと握りしめた
「 じゃあ、いくよ 」
「 うん 」
「 せーの!」
「 愛してるよふわっち 」
ぇ?
あきな、そう名前を呼ぶのはもう
もう遅かった
目を閉じてふわふわと水に身を任せている明那をただぼーっと見つめた
あー、水の中って思ってた何倍も綺麗だな
キラキラしてて、濁ったものがひとつも無くて
明那の目みたいに美しくて
なぁ明那大丈夫だよ、手、離さないから
お前が掴んだ手は俺も離さないからさ
水の中で手が繋がれているのを確認するように優しく握った。
少しずつ意識が無くなりつつある
これだけ言わせて
明那、俺もさ愛してる
君がいればなんだって、できる…から…やばい
意識、が……
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俺たちは同じクラスだった。少し話してからどんどん仲良くなって1番の友達と言えるようにまでなった。
しかし、時々明那の顔が暗いのが気になっていた
どうしたのか聞いてもなんも無いと言ってはぐらかされた。
あぁ、虐待か
そう気付いたのは明那の家に行った時の事
いつも家に遊びに行くのを断られていたけれど、その日は大丈夫だとおっけーされ家に上がった。
多分、あの時はもう手遅れだったんだと思う。
だって気付いてたんだ。
明那の脚や、手に打撲痕があること。
それを必死に隠そうとしてた事も。
家はそれはもう散々だった。
家に上がると、母親らしき人がいた。
しかし俺たちが家に入ったのを見た瞬間、奇声を上げてものを投げつけてきた。
明那は、
「 今日家いないって言ってたのに… 」と
顔面蒼白させて、母親を見つめていた。
ごめん、本当にごめん、明那は謝りながら俺を家から出した。
俺は思ったんだ。明那をあそこにいさせてはいけない。どこか、遠い場所に行かないと。
そう思ってた矢先、明那から言われたんだ。
どっか行っちゃおーよって
たとえ、どこに行くとしても
俺は明那について行くよ
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【 水死体⠀】
2人の青年が水の中で死んでいるのを、ボートに乗っていた人が見つけ引き上げた。
2人の足には重りがくくり付けられていて、2人は何故か手を繋いでいた。
しかもとても幸せそうな顔で
_ 俺はただ誰かに愛されたくて、誰かに必要としてもらいたかっただけで
不破湊だけが俺の希望だったんだ
俺の、唯一の光
ありがとうふわっち
俺を愛してくれて
俺の手を握ってくれて
君がいれば、もうなにもいらないから
君が隣にいるなら、もうなにも望まないから
コメント
3件
天才ですかね好きです愛してます
見てるこっちまで苦しくななりましたぁ、 好ぎぃ
涙が溢れて止まらなくなりました。切なすぎる……。