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メルタ

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メルタ

1 - メルタ

♥

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2025年04月01日

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【キャプション】



○stxxxのnmmn作品です。

桃赤にょたゆりです苦手地雷等自衛お願いします

○以下が大丈夫な方のみ↓↓



























「今日、いっしょに帰ろ」


強い風が吹いて、彼女の髪が煽られる。

胸元まで伸ばされた髪はブリーチを繰り返しているそうだが、触れるたびに滑らかな絹みたいで、とてもそうとは思えない。



「いいよ、カラオケも寄ろっか」


「うぅん、さとちゃんちがいい」


思わずえ?と聞き返しそうになった。

照れ屋な彼女がこんなに直球な事を言うなんて。


いつもは頬にキスしただけで飛び上がるのに。



「…りいぬ、今日私の家お母さんいるよ?」


「…さとちゃんのえっち。そんなんじゃないもん」


あれ、違ったみたい。

今日自慢した新作のゲームしたかったのかな。


すこし自意識過剰すぎたと思ったら途端に恥ずかしくなって、頬から耳が熱くなる。

プンプンと音を立てるように怒る彼女の目線に耐えられなくて、思わずくるりと彼女へ背を向けた。


「なに想像してたの?」


揶揄うような笑みを浮かべた彼女はズケズケと私の目の前にやってくる。

まるで私がいかがわしい想像をしたと思い込んでる(当たってるけど)彼女のおでこにデコピンをお見舞いしてやれば痛いと声を漏らしてやり返してくる。


ほんと、高校生にもなって子供みたい。

そういうところが可愛いんだけど。



「ほら、りいぬウチ来るなら早く行こ。時間なくなっちゃう」


「あ〜、待ってよさとちゃん逃げるなんて卑怯だ」








久しぶりのさとちゃんのお部屋は相変わらず女の子らしくない。

ゲームと漫画が沢山あって、まぁ私もよく借りるんだけど。

そんな部屋にぽつんとある勉強机の上に広げられたメイク道具だけは女子力たっぷりであまりにこの部屋とはミスマッチすぎる。


そんな事を考えながら床に座っていると、こっち座りなよと大きなクッションを指差したさとちゃんはもうゲームの用意ばっちりでやる気満々だ。


「りいぬこれ下手なやつだっけ」


「ちょっと、私だってゲーム上手いんだから」


「そうかな〜私に勝ったことないくせに」



「なっ、今日勝つから!」


咄嗟に言った勝利宣言が、後にこてんこてんにされるのをこの時の私はまだ知らない。

昔からやってたゲームだったから、なんだかんだ勝てると思ったけどやっぱり私は彼女には敵わないらしい。









もう目が疲れた、と彼女がベッドに倒れ込んだ。

そう言われれば私も目が痛くなってきて、彼女の隣に体を沈める。

ぎゅっと目を閉じているのになんだか瞼の裏が眩しくて、流石にやり過ぎたなとさっきやったゲーム達を思い返す。



「もうこんな時間だ…」


莉犬が自身のスマホを開いて呟いた。

閉め忘れたカーテンの隙間から見える空は随分暗くなっていて、なんだか雨が降りそうなどんよりした天気だった。


「……さとちゃん」



まだ帰りたくない、と続けて聞こえたように思えた。

じっとこちらを見つめる瞳からはまさにそんな気持ちが伺える。


そういえば、昨日お母さんがたこ焼き粉買ってたなぁ。



「…泊まる?」


叱られた犬のようににしょんぼりしてた彼女に問いかけると、とたんにご褒美を貰ったみたいに目が輝き出す。


「ほんと!?」


「ほんとほんと、私お母さんに聞いてくるからりいぬも連絡しな?」



「やった〜!」



さとちゃん大好き、と首に手を回される。全く子守気分だなと思うけど、それでもこんな笑顔を向けられたらなんだってしてあげたくなってしまう。しょうがないよね。


早速両親に連絡を始めた莉犬を横目に私は階段を降りた。







パチパチと空腹を煽る音がする。


あの後、あっさりと両方の親に承諾された私達はタコパを楽しんでいた。


段々と焼けてきたたこ焼きを莉犬が竹串でくるっとひっくり返すと、いい焼き色になった少し不格好なたこ焼きが出来上がっていた。

「やっぱまんまるは難しいね」


「上手くできると思ったんだけど……」


「まぁ美味しければいっか!」と竹串を置いた莉犬がストンと椅子へ座り直して、楕円形のたこ焼きを自分のお皿へと盛ったのに私も続く。


ソースにマヨネーズ、鰹節と青さを振ったらもう形なんて気にならない。

思い切って一口で食べると、まだ冷めきってない中身が皮からあふれ出てきて危うく火傷しそうだった。


目の前の莉犬も、全く同じ反応をしていたのが面白くって、二人で笑い合う。





「次焼いちゃうね」


また莉犬が熱い鉄板に生地を流し込んだのを見て、すかさずタコを均等に分けていく。

私はちっとも上手く焼くことができないから、焼き担当は莉犬で。これからもうちでたこ焼きをする時は莉犬にいてほしいと思った。


「あ!さとちゃん、ちょっとまって」


「なに?」


急に呼び止められ、タコを入れる手を止めるといたずらっぽく笑った莉犬に嫌な予感がしたから、思わず「なに…?」ともう一度聞き返してしまった。


ジャーン、と効果音でもつきそうな勢いで莉犬が見せてきたのは、チョコレートだった。


「ちょっと冒険してみようと思って!さとちゃんも食べる?」


私が驚いていると、莉犬は得意げに笑った。







またたこ焼きが焼けてきたころ、つまみ食いしたチョコレートを手に持ちながら莉犬が「これチョコだと思う?」と一つのたこ焼きを指差す。



「んー…タコっぽいけど…」



恐る恐る口に入れてみると、はじめに感じた甘さと、あとからほんのりしたたこ焼きの風味が混じって思わず変な顔をしてしまった。


そんな私を見て莉犬はアハハと満足そうに笑っていた。


「さとちゃんハズレだね」


まるでロシアンルーレットをやっている気分だったけど、そんな状況すらも楽しそうにする莉犬を見て、私は胸がきゅっと痛くなっていた。


タコパだけじゃなくて、もっと莉犬と色んなことがしたい。

それは、恋人らしい事も。


私だってこのたこ焼きみたいに、ずっと中身を隠してきた。

伝えたらこの関係すらなくなるんじゃないかってずっと誤魔化してきた。


そうして飲み込んだチョコレートは、少しだけ苦かった。






お風呂は流石に莉犬とは入らなかったけど、私の服を貸してあげた。

彼シャツ……彼女シャツ?


私は莉犬にとって彼氏なのか彼女なのかよく分かんないけど、背丈が違いすぎるせいで少しぶかぶかな服を着た莉犬は余計犬らしさが増した気がした。



「ねーぇ、さとちゃん聞いてる?」


「…うん、…なに?」



「聞いてなかったでしょ絶対」



もう、と腹を立ててしまった莉犬は私に背を向けた。

そっちから来てくれるまで何もしないと言わんばかりに黙り込んでただ私が謝るのを待っている。


莉犬に見惚れてたから話聞けてなかったんだよ、なんて気持ちの悪い事を言ったら彼女の機嫌は治るかな。



「ごめんね?考え事してたの。怒んないで莉犬」


「……何考えてたの?おしえて」



背中からお腹に手を回して抱き締めると、満更でもなさそうに背を丸めて私の腕の中に更に潜り込んでくる。


彼女の問いには中々言葉を返すことができなかった。

考え事なんてウソ。ずっと莉犬の事をめちゃくちゃにしたいって思ってただけだもん。


そうするとするりと私の腕の中から抜け出した莉犬が私と向かい合わせになって、なんとも言えない表情をする。


あぁ、まるで、欲しい玩具がある子供みたいな。



「……やっぱ、エッチなこと考えてたんだ?」


「…ふふ、そうかもね」



私と同じ香りがする髪がさらりと肩から滑り落ちて、莉犬の顔を隠した。

長い髪と莉犬のこちらを見つめる瞳が同じようにゆらゆら揺れて、期待したような眼差しが私を見つめた。

遠慮がちな莉犬が欲望を瞳に写している気がした。


きゅっと薄い唇を噛んだぎこちない表情が見える。


だけど、私はそんな顔をされても戸惑うばかりだった。だって、莉犬が私にそんな事を思うなんて信じられないからだ。


でも、じゃあなんで莉犬はそんな顔をするの。


こんなにふしだらな感情を、莉犬も期待してるっていうの?

この感情を私は墓まで持っていく気だったのに。


莉犬のその期待したような顔を見たら、私の中の何かがぐらりと揺れる気がした。

無意識に伸ばしそうになった手を必死に握り締めて、ダメだと自制する。

だって、こんなに綺麗で可愛いんだから。さっき二人で食べたたこ焼きみたいに、私が触れられるのは外の皮だけで、中のタコに触れて莉犬を壊してしまうのが怖い。



だからお願い、そんな顔しないで。





「誤魔化さないで」


莉犬はそっと自身のおでこに指を添わせて、私のドレッサーから勝手に使っている前髪クリップを取った。

自由になった前髪たちが莉犬の顔にカーテンをかけるみたいに流れる。まるで、何かを隠したいようだった。


莉犬も、そうなのかな?



「……」



莉犬はきっと心の中で覚悟を決めてくれているのに、そんな姿を見ても私はまだこの気持ちを口にする勇気が出せずになんと返したらいいのか分からなくて、言葉を詰まらせながら笑うことしか出来なかった。


恥ずかしそうにしている莉犬を見て、きっと私にどう思われているのか不安に思う気持ちが伝わってきて胸が痛む。




それでも、また先に口を開いたのは莉犬だった。



「わたし、そういうこと期待してるよ」


その言葉に、私は一瞬息も忘れた。

嫌にはっきりと耳に届いたその言葉が何度も何度も頭の中で繰り返されるから、次第に私の幻聴なんじゃないかと勘違いし始めた。



「…期待してるって、どういう意味?」


ハッキリとそう言われると理解が追いつかなくて、私はほとんど頭も回ってない状態で口を開いてあちこちを行き来する莉犬の瞳を真っ直ぐ見つめた。心の中では溢れそうな感情を必死に抑えながら、なんとか冷静さを保とうとしてるつもりだ。



「…どうだろうね。さとちゃんだって隠し事ばっかだから、わたしもナイショにしようと思ってたけど、我慢できなくなっちゃったから言うね。」


莉犬はそっと私の耳元に口を近づけた。

その動きに合わせて、さらりと揺れた莉犬の髪がショーパンから覗いた太ももに触れてくすぐったい。


くすぐったさに見をよじりそうになった時、莉犬の小さな声が耳元でささやく。


「わたしも、さとちゃんとあれこれしたいって思ってるってこと」



ほとんど無意識に莉犬の方へ顔を向けると、妖艶に微笑んだ彼女の顔が、スッピンのくせに目を奪われるど綺麗だった。


今まで感じたことのない感情で胸がいっぱいになって、自分の中で暴れだしそうになった。


あぁ、この子も同じ気持ちなんだ。



必死に取り繕ってきた気持ちが制御できなくて、割られたたこ焼きみたいに溢れだして止まらない。



「私も…莉犬と、」


「…うぅん、私、ずっとそう思ってた」



どうしたらいいのか、ずっと考えてたんだよ。


さっきまで躊躇ってたくせに、莉犬の細い手首を掴んで、そっとベッドに押し付ける。

チキっと莉犬のネイル同士がぶつかり合う音が、静かな部屋に響く。

バイト先でのルールでネイルが禁止されている短い私の爪とは、まるで正反対だった。


突然の事に驚いたようで、莉犬は少し焦ったような顔をしているのに対して、私はもう焦がれて仕方なかった。

私を見上げる体制になった莉犬は、そっと小さい手をこちらへ伸ばしてて、そっと莉犬の顔の横まで垂れた髪を優しく掬って私の耳にかける。

今度は莉犬のネイルと私のピアスが触れ合って、またカチャリと硬い音がした。



「…さとちゃん、勉強もできないし、ほんとーのおバカなんだね」


「…なにそれ、りいぬだって、赤点ギリギリのくせに」



何も言えなかったから、つい莉犬のことを言ってみた。

だけど、本当はそういう話をしているわけじゃないって分かっている。



「気付いてたんだ?」


「うん、気付いてたっていうか、同じこと思ってただけだよ」



「…そっか、じゃあ、私は正真正銘のバカだったって事ね」


「あ、ちょっと、それ気にしてるの?もう…」



柔らかく押し付けていた莉犬の手首を開放すると、すくりと起き上がった莉犬がごめんね、と小さく謝ってくる。


先程までの大人な雰囲気はどこに行ってしまったのか、いつもの子犬みたいな莉犬が帰ってきた。



頭を撫でれば喜ぶし、話を聞かなかったら怒る。

そうやって素直な莉犬だからこそ、壊したくなかったけど、結局全部空回り。むしろ、素直だと言われるべきは私の方かもしれない。


もしかして莉犬って、スゴイやり手なんじゃ…。



「さとちゃん、電気、消そ?」



天井をチラリと見た莉犬。


その視線がどこか莉犬らしくなかった。


いつものぱっちりとした大きな瞳が、切れ長な流し目になっているのにイヤにドキドキしてしまった。



私はその視線に誘われるように、莉犬を見つめ返す。




カチリと電気のスイッチの音が、暫く耳に残って離れなかった。


 



End




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