テラーノベル
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秋が、嫌いだった。
理由なんて、なかった。
ただ、木々の葉が黄色や赤に変わって散っていくのを見ていると、胸の奥が妙にざわついた。
何かが終わってしまうような
ぷつりと途切れてしまうような
そんな気がしたから。
ya)no彡まだここにいたの?
放課後の屋上。
振り返ると、屋上の入り口からya裙がこちらを見ていた。
no)…ya裙こそ。どうしたんですか?
ya)俺?no彡を探してた。
no)僕をですか?
ya)うん
そういってya裙は笑った。
その笑顔が夕日に映えていつもより眩しく、美しく見えた。
ya)あ、そうだ…はい、これ
差し出されたのは缶コーヒーだった。
ya)寒いかな〜と思って
no)ありがとうございます
両手でその缶を包む。
じんわりとしたコーヒーの温かさが冷えた指先に伝わってきた。
どうしても、飲むのがもったいなく思えて、
蓋は開けなかった。
ya)…no彡ってさ、
no)?はい
ya)秋、好き?
no)……好きですよ
ya)そっか
ya裙は空を見上げた。
ya)じゃあ俺も、秋、好きになろうかな
その時の僕は、その言葉の意味に気づけなかった。
それから、僕たちは一緒にいることが増えた。
放課後の教室
帰り道の公園
コンビニで買ったお菓子を分け合ったり、
くだらないことで笑ったり。
そんな何気ない時間が、僕は好きだった。
ただ一つ、
違和感があった。
no)ya裙
ya)ん?
no)最近、学校休むこと多くないですか?
ya)そうかな?
no)そうですよ…大丈夫ですか?
ya)…大丈夫だよ
そういっていつものように笑った。
だけど
その笑顔は、少しづつ消えていった。
怖かった。
太陽を失ってしまう気がしたから。
ある日の帰り道。
ya裙が突然足を止めた。
ya)no彡
no)はい?
ya)もしさ、
途端、風が吹いた
赤く染まった紅葉の葉が僕たちの間をひらりと通り過ぎた。
ya)…俺がいなくなったら、どうする?
no)………何を言ってるんですか
ya)いや、なんとなく聞いてみただけ
no)そんなこと、言わないでくださいよ
僕がそういうとya裙は少しだけ切なく寂しそうに笑った
ya)…ごめん(笑
その時はもうそれ以上は聞かなかった。
数日後
ya裙は学校に来なくなった。
一日
二日
一週間
先生から聞いたのは、病気で入院したということだけだった。
僕は何度も何度もメッセージを送った。
『大丈夫ですか?』
『早く元気になってくださいね』
『ya裙がいないと学校、つまらないです』
_既読は、つかなかった。
それでも僕は、毎日のようにメッセージを送った。
そして十一月の終わり。
僕はya裙が入院している病院に訪れた。
ya)no彡…
ベッドの上のya裙が弱々しく笑った。
ya)来て…くれたんだ
no)ッ当たり前じゃないですか
笑って見せようとした。
でも、うまく笑えなかった。
窓の外を見る
木にはもうほとんど葉が残っていなかった。
no)紅葉、もう終わっちゃいますね
ya)そうだね…
no)僕、秋が好きなんですよ。
ya)知ってる(笑
no)ya裙が好きだって言ってくれたからもっと好きになりました
ya裙が目を丸くする。
僕は少しだけうつむいた。
no)ずっと…言いたかったことがあります
ya)何?
no)僕、ya裙のことが好きです
静かな病室。
時計の針が刻む音だけが響いていた。
no)大好きです
ya裙はしばらく黙り込んでふっと笑った。
ya)……遅いよ
no)え?
ya)俺も、ずっと好きだった
胸の奥が締め付けられる。
嬉しいはずなのに、
どうして、こんなに苦しいんだろう。
雪が降った日。
雪が降るのを眺めて、ゆっくりとya裙は目を閉じた。
そして、機械音が響いた。
僕は冷たく動かなくなった手を握ったまま
何度もその名前を呼んだ。
でも、返事が返ってくることはなかった。
僕は泣いた、
泣き疲れて寝てしまうまで。
次の日
空は高く澄んで、いやというほどきれいだった。
僕は一人で、屋上にいた。
君を失って、君の笑顔が何度も見たいと、心から願った。
フェンスに寄りかかって、
手にはあの日と同じ缶コーヒーを握って。
さっき買ったばかりなのにもう、すっかり冷たくなっている。
no)…ya裙
返事はない
そんなのとっくにわかっている。
それでも、呼びたかった。
no)僕、実は昔、秋が嫌いだったんですよ。
冷たい風が頬をかすめる。
no)でも、今は好きです
空を見上げる。
だんだんとオレンジ色に色づいていく。
no)だって、ya裙に出会えた季節だから。
あの日の笑顔を思い出す。
『じゃあ俺も、秋好きになろうかな』
今なら、その言葉の意味が分かる気がする。
僕と過ごした秋を忘れないでほしいということかもしれない。
いや、きっとそうだ
翌年の秋
僕はまた屋上にいた。
隣にはあの日と同じ缶コーヒーを買って置いた。
木々が赤と黄色に染まり、冷たい風が頬を撫でる。
no)今年も…綺麗ですね
隣には誰もいない。
ただ、缶コーヒーがあるだけ。
それでも、僕は笑った。
_あの日よりもずっと上手に。
no)ya裙
返事の代わりか風が吹いた。
あの日と同じ優しく肌を撫でて包み込んでくれるような。
一枚の紅葉が缶コーヒーの上に落ちた。
僕はそれを拾い上げてそっと握った。
no)もちろん…忘れませんよ
空を見上げる。
no)だって僕は…
あの秋の日、
君に恋をした。
会えなくなっても、
声を聴けなくなっても、
僕の中では、あの日の君がずっと笑っている。
秋が終わっても、
冬が来ても、
春になっても、
絶対に僕は君を忘れない。
そして今年も、
僕は君が好きだった秋を、好きでいようと思う。
世界で一番好きで、世界で一番大切な存在だったから。
秋が終わる前に、君に恋をした。 完―
👓️鏡月🌙
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コメント
1件
読了したよ…ああ、もう冒頭から心臓掴まれた。秋が嫌いだった主人公が、ya裙と出会ってから好きになる過程が、読み返すと全部伏線になってて泣ける。缶コーヒー温めてくれるとか優しさの暴力すぎる。最後の紅葉が缶コーヒーの上に落ちるシーン、映像的に美しすぎて何度も見返したくなる。ナトさんの季節の描き方、情緒が繊細で素敵。完璧だった。