テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
始業式前日。
始業式くらい来てください、なんて各担任から電話をもらった。
俺はどうせ行く気もなかった。
「…あにき、先生から電話貰ったでしょ? 学校、行く…?」
ほとけが少しだけ不安そうに顔を曇らす。
「…ほとけの好きにしてええよ」
ふんわりと笑い返す。
俺は2人に学校にいけと強制できる立場じゃない。
「…行ったほうがいいよね。 いむ」
2人で顔を見合わせる。
「、うん。 りうちゃんと、一緒なら…僕、がんばる。」
「うん。 一緒にがんばろーね
あにき、りうら達頑張るよ」
「うん。 頑張り」
・・・
始業式当日
今日はいつもより一時間早く目覚ましをセットして、3人とも起きた。
学校に着くと、『あのこ誰?』という言葉や、『来たんだ』なんて言葉が耳に入ってきて、来たことを後悔する。
「…あにき。」
ぎゅっと、俺の服の裾を掴んで目を泳がせる。
「大丈夫やで。 いつでも俺んとこ来てええし、つらなったら保健室行きや。りうらもな」
大丈夫。 と声を掛けて二人の頭を撫でるが、半分は俺の気持ちを紛らわせるように自分に言い聞かせているようなもんだ。
「じゃあね…! 行ってくる!」
りうらとほとけが、不安そうに2年のフロアへ向かう階段を上っていく。
「…ッふぅっ…、大丈夫、大丈夫。」
自分に言い聞かせるように何回も呟いて、重い足を動かして階段を上る。
できるだけ息を殺して、影を薄くして、目立たないように。
ドアを引く。
あと、少しで遅刻のチャイムが鳴る寸前だから、ドアを引く音にみんな反応して、一斉に俺の方を向いた。
息が止まる。
『あんな人、クラスにいたっけ…?』
『誰?』
『え、あいつ来たん?』
「ッ、ぁッ…。」
ドン。と肩を叩かれるような感覚がして、意識が戻る。
「あにき! おはよ!」
にぱっと、かわいくて、人懐っこい笑顔を浮かべて話しかけてくる。
「ッ、あぁ、まろ。 おはよう」
笑顔を無理やり作る。
「席替えしたからな、アニキの席、あの、一番うしろの窓側やよ!」
一つの席を指す。
「、ありがと。」
できるだけ人がいない通路を通ってまろが指した席に座る。
席に座った瞬間にチャイムが鳴り、『ホームルーム始めるぞー』と、気怠げな教師の声が響き渡った。
・・・
全校で体育館に集まる時。
俺は身長を測ってないから、一番うしろに座らされた。
体育館の照明で頭が光っている校長が5分くらい長々と喋る。
所々誰かの寝息が聞こえてきたり。
2年のクラスの方には、りうらとほとけが後ろの方に座らされていた。
りうらは、よそ見をしていて、ほとけはうとうとと寝そうになっていた。
「あにき、校長の話長すぎね?」
まろが、話しかけてくる。
身長が高いから、丁度俺の前にまろがいる。
「んはは。 せやな」
しばらくまろと雑談していると、校長の話は終わっていた。
『続いて、生徒会長からのお話です。』
そう、司会が言うと、まろがスッと立ち上がり、壇上に上がっていった。
身長も高く、顔がいいので男女関係なくモテる。
まろは、簡潔に話を終わらせた。 すばらしい。
「んでさ、このあと掃除と、次の委員会の説明とかあるけど」
まろが、休み時間に気にかけにきてくれた。
「んー。俺は大丈夫なんやけど、弟がどーだか。」
「あー、そっかー、一緒に見に行く?」
『おーい!いふー!! ちょっと手伝えー!』
廊下の方から聞こえる声。
「ごめんねあにき〜! ちょっと待っててや!すぐ終わらしてくる!」
「ゆっくりでええよ いってらっしゃい」
ひらひらと手を振り返す。
まろが教室からいなくなると、急に教室のざわめきが気になり始めた。
「…。」
やっぱ帰ろっかなー。 なんて呑気に考える。
そうすると、急に机がバン、と勢いよく叩かれた。
突然のことに方が跳ねる。
恐る恐る上を向くと多分同学年の複数の男子生徒がニヤニヤと俺を見下ろしていた。
あぁ。こんなとこ、やっぱ来なきゃよかった。
「なー。 生徒会長のお友だちさん?w」
机を叩いたであろう男子生徒が、嘲笑混じりに俺を睨みつける。
「お前、なんで学校きたの?w」
「やばwそれきくん?wwww」
「直球過ぎてカワイソウだろww」
「学校まともにこれてないんだから、もうちょっと優しく言ってやれよwwww」
目頭がツーンと熱くなり始める。
あ。やばいかも。
本当に、始業式でも何も変わらないんだから。
来なきゃよかった。来るとしても、保健室で過ごしてればよかった。
蛇に睨まれた蛙のように動けないでいると、急に甲高いチャイムの音が響き渡った。
「チッ、タイミング悪ぃなー。」
男子生徒はゾロゾロと廊下に出ていった。
「ッ、ッはぁッ…。」
しばらく息をしていなかったからか、息が上がる。
深呼吸をして、落ち着かせる。
(大丈夫。 半日だけ、大丈夫。)
だけど、視界が歪むのを抑えきれなくなってきて、目に涙が溜まるのが分かる。
(、保健室。)
俺は重くなった腰をあげて早足で保健室に向かった。
「あれ、悠佑くん。 しっかりできてたのに。 どーしたの?」
保健室の先生が優しく出迎えてくれる。
「うん、辛くなっちゃった? 帰る?」
俺は首を横に振る。
「りぅらと、ほとけ…待つ。」
「そっか、じゃあ先生二人の様子見てくるね! そこのカーテン締めてベッド使っていいからね」
カーテンを締めて、誰もいないはずなのに人の目を避けるようにベッドに潜った。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
1,332
46