テラーノベル
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ご機嫌で帰宅した僕を目を丸くして見るお母さん。
今日は階段を登る足が心做しか軽い気がした。
単純だなと思いつつ、自分の部屋を開けると、いつもと同じ光景。
描き途中のキャンバスと、地面に落ちた筆とパレット。
そして夕日に照らされる、ホコリが被ったギター。
また現実へ戻された気がして、軽く目を閉じる。
「そうだよなぁ…」
何に対しての言葉かも分からないまま口にした言葉がひとり寂しく部屋へ溶け込んでいく。
舞い上がった分、孤独に襲われる夜が来るのがまたひとつ恐怖のレベルをあげた気がした。
夜が来て欲しくなくて。
眠って次、目覚められなかったらなんて、これ以上に怖いことなんてない。
朝目覚められる事がどれだけ、幸せなことかってそれまでは考えてこなかった。
ただ、何も知らずにのうのうと生きてきたと思うと過去の自分が惨めに思えてくる。
「またやな事考えちゃってさぁぁ…wはぁ… 」
そうしているうちに下からお母さんの声がした。
ご飯だと言っているようだ。
下へ行き、食卓に座る。
そしたらいつものように、「元貴の大好物。どう?」と尋ねられるので、いつものように「ありがとう嬉しいよ」とお決まりの言葉で返す。
僕の余命が発覚した当時から、毎日毎日、言葉、態度、ご飯。
全部ガラッと僕へ合わせるような態度に変化した。
それがまたまた窮屈で、苦しかった。
ありがたいけれど、嬉しいけれど、僕には余命があるから満足させてあげよう、って、思考が丸見えで、
いつもいつも心がズタズタになる気持ちを紛らわせて見て見ぬふりをした。
そしてぎこちない笑顔を作って見せた。
「いただきます。」
今日はどうだった?と言われて、今日も昨日と同じだよ、と答えるつもりだったけど、今日は久しぶりに少しだけHappyな気持ちになれたから、僕が忘れても誰かの心へ記憶されるように、今日あったことを話した。
「友達…若井って友達ができた。」
母と父が顔を向き合わせて、驚いた表情をした後すぐ僕の方へ向き直り僕に話を続けるよう要求される。
「僕をずっと見てくる子だったんだ。」
と言うと、母も父も、というか母が1番頭の上にハテナを浮かばせていた。
クスッと僕は笑って、次々と今日の楽しかった事を話す度に、両親が嬉しそうに僕の話を聞いてくれた。
それが少しいや、だいぶ嬉しくて、調子に乗って身振り手振り大きくしてみたりして。
久しぶりに家族皆で笑い会えた気がしてちょっぴり若井に感謝した。
ちょうど食べ終わったと同時に話も一段落着いたので、部屋に戻ろうと階段を登っていた。
階段を上る度、孤独へ1歩1歩登るようなこの感覚を誰か盗んでくんないかな〜、wなんて非現実的な事を頭の中で呟きながら部屋へ戻る。
そんな馬鹿げたことに考えながら、部屋に戻って、窓側の壁に接したベッドに座って、空を見上げてみることにした。
今日保健室の先生が、「今日は満月だねぇ」と僕に話してくれた事を思い出したから。
人生であと月を見れるのは何回なんだろう、 と無駄に思考を働かせていた。
思いを馳せる毎日と同時に、今や未来を突きつけられる毎日が僕の心を知らぬ間に蝕んでいった。
何もすることのない、この時間がまた僕を孤独の底に引きずり込むとわかっていても、僕にはどうすることも出来ないのだ。
wki視点
方向が同じなら一緒に帰ろうと思って、元貴の家の方向を尋ねると、内緒だといい笑顔をばら撒きながら走って帰ってしまった。
まぁ今日友達になったばかりだし仕方ないと思い、俺も家へ帰る方向へ足を進めた。
家に帰ってもやることがないのはいつもと同じこと。
ただ今日は昨日までとは違って、暇ではなかった。
友達になった元貴と明日はどうしようかと、考えているとあっという間に寝る時間になっていたので、暇を持て余すどころか時間が足りないとまで思った。
俺も俺自信を引いてしまうほど。
友達が初めてできたことくらいでこんなにもはしゃげる俺を一周まわって感心してしてしまいそうだ。
その日は、頭の中が騒がしい中落ち着かせるのに必死で眠れなかった。
そんな中、ふと月明かりが部屋に差し込んでいるのに気づいて、反射的に月に目をやった。
いつもの月だと言うのに、何故か今日は一段と輝いて見えたのは気のせいだということにしておこう。
毎日呑気に生きている事を認めたくないからね。
そうやって現実逃避をしていても元貴は俺の頭から離れてくれない。
元貴も見てるのかなぁ、と俺はクスッと笑ってしまう俺を心底嫌いになりそうになった。
「あ”ぁぁ、もう、」
俺は力強く目を瞑った。
想いを馳せる俺の脳に語りかけるように、「眠ろう、眠ろう」と呪文のように脳内で唱えた。
コメント
5件
今一気見したけど めちゃくちゃ最高だった!言葉選びとか表現の仕方とかが上手すぎるのよ
いや〜、第3話、めっちゃ刺さった…! 余命宣告された後の家族とのぎこちなさとか、孤独感の描写がリアルすぎて胸が締め付けられたよ。特に「階段を上る度、孤独へ1歩1歩登る」って表現がすごく印象的で、元貴の心情がズシッときた。 でも!若井ができたことで久しぶりに家族で笑い合えたシーンは本当にグッときたね…(涙) そして若井視点で元貴のこと考えて眠れなくなってるの、めっちゃかわいいじゃん!「元貴も見てるのかなぁ」って思うとこ、キュンとしたわ。 2人の距離がこれからどう縮まっていくのか、めちゃくちゃ気になる!続き楽しみにしてる🔥
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