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最近、僕は困っていることがあります。それは、さほどシュークリームを食べたいと思わなくなったこと。先生にも友達にも、上の空、と言われ、なぜか筋トレにも力が入らないのです。僕はどうしたのでしょう。
「マッシュくん?マッシュくん!」
「あば…フィンくん…?」
「もう、何ぼーっとしてるの?次の授業行かないと遅れるよ?」
「もうそんな時間…」
こんなのが毎日のように続いているのです。1週間前?いや1ヶ月前くらいから、ずっとこの調子です。
「プロテイン不足?シュークリーム不足?なんだこれ…」
そして原因を探そうとも思いつかないのです。
「最近マッシュくんよくぼーっとしてるよ?具合でも悪い?」
「別に…悪くないよ。」
だって心当たりがないのだから。身体はいたって元気だ。すると前から見慣れた顔が歩いてた。
「フィン。ちょっといいか?」
「あ、兄様!!どうしたの??」
レインくん。そういえば今日は初めて会ったような。
「ごめん、マッシュくん!先行ってて!」
「うす」
そしてもう一つ。不思議なのは、レインくんに会うと、動悸がすること。やっぱり筋トレ不足??思えば思うほど訳がわからない。
「…体が熱ってる…熱?」
これもいつものこと。レインくんに会うと、動悸がして体が熱っぽくなるのだ。でも少し時間が経てば治る…。どうしたものか。
その後の授業もなぜか身が入らず、フィンくんどころか、レモンちゃんも、ドットくんも。ランスくんまで、僕を心配した。
「マッシュ・バーンデット!何をぼーっとしているんだ!」
「あば…すみません…」
…と、挙げ句の果て先生にまで注意をくらい…。これは医務室に行った方がいいのでは…?
「フィンくん…僕医務室行ってくる…」
「え?やっぱり具合悪い?」
「具合悪いっていうか…なやみ??」
「悩みか…僕でよければいつでも聞くからね!」
こういう時こそ友達に頼るべきだろうか。ひょっとしたら、
フィンくんなら…この気持ちが何かわかるかな…?
「あの…フィンくんはさ、」
「うん?」
「何事も手につかなくてぼーっとしちゃうことある?」
こんなあたりさわりのない質問…もっと具体的に聞けないだろうか。
「うーん…そうだね…ものすごく疲れてる時とか?」
「疲れ…」
「ちょっとちがう?」
「うーん…」
疲れているつもりはない。あくまで。いつも通りなんら変わりないつもりだ。
「あと…動悸がしたり。」
「動悸…!?マッシュくんそれは病院で見てもらった方がいいよ!どんな時に動悸がするの?」
どんな時…それはもちろん…レインくんに会うとだけど…。
「レイ…ある人に会うと…??」
「あー苦手な人とか?それならわかる…会いたくない人とか、怒られないかなーとかで動悸がする時はあるよ。」
「苦手ではない…」
「そうなの?その人とはどんな関係?」
「関係…」
僕とレインくんの関係ってなんなんだろう。先輩?監督?でも決して近くはないような。そう思うと、なんだか寂しいような、気がする。
「うーんじゃあ、その人のことは好き?嫌い?」
「…わからない。嫌いなわけではないけれど…」
あれ、なんでだろう。会っていないのに、考えただけなのに、体が熱い。胸がドキドキする。
「まって…フィンくん…なんだか胸がドキドキする…」
「え!?座る!?」
「大丈夫だけど…なんか、その人のこと考えたら…なんでだろう…」
「…それは…」
頭がぐるぐるする。体がぽかぽかして、胸がドキドキする。
「マッシュくん…恋してる?」
「こ…い?」
「だって…その人のことを考えたら、胸がドキドキするんでしょ?動悸ってそういうことだよね?」
でも…恋ってことは好きな人がいるってことなのでは?別に僕は、レインくんのことが好きというわけでは、ないと思うのだけれど。
「いやいやいやいや、それはない。」
「本当に?その人のこと考えてみてよ。」
レインくんのこと…。かっこいいところ…可愛いところ…なんだろう。一緒にいると心が落ち着くような。考えれば考えるほど、頭がまとまらなくて、目が回りそうだ。
「ふふ、マッシュくん顔真っ赤だよ。」
「あばばばば…」
フィンくんは笑いながら僕を見る。その笑い方、レインくんにそっくり。
するとどこかから足音が聞こえてきた。
「失礼する。フィン度々すまないが、少しいいか?」
「兄様!今日はなんだか忙しそうだね…ちょっと待って、マッシュくんちょっと行ってくるね。」
頭が爆発しそうだ。ドキドキも加速してる。だって、レインくんが来てくれたことが嬉しいんだ。また会えた。どうしよう、顔が見られない、僕の顔は真っ赤なんでしょ?こんな顔見せられない。
「悪いな。マッシュ・バーンデットか。お前…顔が赤いぞ?熱でもあるのか…?」
「だっ大丈夫…です!!!」
「…そうか、まぁ無理はするな。」
「…うす…」
鼓動は静まることを知らないようで、一人になった部屋で一つ深呼吸をする。
「…シュークリーム…」
気を紛らせるために食べたシュークリームの味が、いつもより甘かった。