テラーノベル
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自分の気持ちに整理がつかないまま約束の週末を迎えた和葉は朝から洗濯や掃除、出かける支度に追われて慌ただしく部屋の中を行き来していた。
「詩音、早くご飯食べちゃって。準備しないと出掛けられないよ」
「うーん……」
今日の行き先は詩音の希望で子ども向けの遊園地に決まり、詩音は決まった日から今日を心待ちにしていた。
その結果昨夜は興奮してなかなか寝付け無かったにも関わらず、今朝はいつもよりずっと早く目を覚ましてしまった反動で今頃眠気に襲われて機嫌が悪く、和葉はすっかり振り回されていた。
「ほら詩音、今寝たら出掛けられないよ? ご飯食べたくないならお着替えしちゃって?」
「うーん……」
出掛ける前に家事を終わらせたいものの時刻はすでに午前八時を過ぎていて、待ち合わせまで一時間を切っていることに和葉は一人焦っていた。
そんな和葉とは対照的にマイペースなままゴロゴロ寝転がっていた詩音はようやく身体を起こすと朝食を食べ始めた……かと思いきや、「パンやだ。ごはんがいい」と言い出したり、「ジュースのみたい」などと要求を出されるたびに和葉は手を止められ、自分の準備はまったく進まなかった。
それでもようやく詩音の身支度だけは終えて自分も急いで着替えようとした、その時だった。
「あ! おにーちゃんのくるまだ!」
詩音の弾んだ声に窓の外を見ると、アパート裏手の駐車場には見覚えのある車が停まっている。
約束まではまだ三十分ほどあるのだけど、どうやら湊は少し早く到着したらしい。
「ママ! おにーちゃんいるよ!」
詩音は嬉しそうに飛び跳ねる。
「しおん、もういきたい!」
「まだ駄目よ。ママ、まだ準備終わってないもの」
「じゃあ、しおんだけいく!」
「あっ、こら! 詩音、待ちなさい!」
和葉の言葉を聞かず詩音は踏み台を手に持ちながら玄関へ向かって行くと、その上に乗って一生懸命鍵を開けようとし始めたので、和葉は慌てて駆け寄りその小さな体を抱き寄せる。
「勝手にお外へ出たら駄目って、いつも言ってるでしょう? もう少しだけ待ちなさい」
「やだ! おにーちゃんのところいく!」
今にも泣き出しそうな勢いで訴える詩音に和葉は困ったように小さく息を吐いた。
このままでは自分の支度どころではないことを考えた末、和葉はスマートフォンを取り出した。
「分かった。それじゃあお兄ちゃんにお家に上がって待っててもらおう、ね? ママが今から電話して来てもらうから」
「うん!」
和葉の提案にたちまち笑顔を取り戻した詩音を見て苦笑しながら湊へ電話を掛ける。
そして、事情を説明して部屋で待っていてもらえないかと頼むと湊は快く了承してくれた。
宇津Q
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鷹槻れん

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#ヤクザ
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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コメント
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ああ、このエピソードすごく好きです。詩音ちゃんの「パンやだ」「ジュースのみたい」攻撃、そして踏み台で鍵を開けようとする勢い——子どもの「待てない感」がめちゃくちゃリアルで、思わず笑顔になりました。和葉さんが慌てつつも湊さんに電話する判断、あの苦肉の策がまた母親らしくてじんわりしました。朝のバタバタ感が鮮やかに伝わってきて、ほっこり温かい気持ちになりました。ありがとうございます!