小ネタ パチンカスと高校生
③…nsty(榊さんと剣持さんです)
※カプ要素薄め。えっちないです、珍しく
初めの印象は大先輩。次の印象は可愛らしい方。良くも悪くも自分とは関わらなさそうなタイプの人間だと思っていた。そう、思っていた。
榊は困惑していた。何故、関わる事がないと思っていた先輩が二人掛けのソファで自分の隣で寝ているのか。緊張と困惑から榊は指一本動かせない程固まってしまった。ちらりと、隣で眠る高校生を見ると 柔らかな寝息を立てて穏やかな雰囲気で深い眠りに落ちている。そんな剣持を見ていると此方まで和みそうになる。しかしいつまでも見惚れている訳にもいかないので、この状況に至るまでに何があったかを一つ一つ思い出して行く事にした。
今日は事務所内で行う大型企画の収録だった。収録は出演者の多くが大型企画に慣れているベテランの先輩方であったため円滑に進み、予定時間より大幅に巻いて終わった。そこからはそれぞれで複数人で集まり遊びに行く者、終了と同時に帰宅する者、スタッフや同期と喋っている者等、千差万別。自分がしたい様にすると言う緩い感じになっていた。榊は朝早くからの収録と言う事もあり控室のソファでうつらうつらしていたら、知らぬ間に眠ってしまっていたのだろう。現に眠る前までは居た数人のライバーももう既に帰ってしまっていた。
はて、と榊はここまで思い出して首を傾げる。
自分の記憶が正しければ剣持は収録が終わった後速攻で帰宅したはずだが、と思い返す。何か忘れ物でもしたのだろうか。なら何故自分の隣で眠ってしまっているのだろう。尽きる事の無い疑問が浮かんでは消えていく。
「ん”ん…」
隣から掠れた声が聞こえた。思わずバッ、と音がする程早く隣を見れば閉じられていた筈の目がゆるりと開けられており、まだ起きたてでぽやぽやしている翡翠が見えた。
暫く瞳がゆらやらと揺れ、何かを探していた様だった剣持とばちり、と目があった。吸い込まれそうな程美しい翡翠に思わず生唾を飲み込んでしまった。きらきらと光る自分よりも濃い色の緑に見惚れて失礼だと思いながらも見入ってしまう。
「…ぁ、すみません。肩お借りしてましたね」
寝起き特有のまだはっきりとしない滑舌で謝罪をされた。そんな恐れ多いと咄嗟に否定する。
「いやいやいや、気になさらないで下さい。寧ろ起こしてしまい申し訳ありません、剣持様」
「…」
剣持は目を丸くして榊を見つめる。まずい、何かやらかしたかと目が泳ぎそうになるのを何とか抑える。相手の次の動きを待っていると、
「んふ、んふふ」
口元を手で押さえ肩を震わせ花が咲く様な笑い声が返された。ぽかん、としたまま固まっていると何が面白かったのか更に大きな笑い声をあげられてしまった。どうしたものか、と少し戸惑っていた榊に剣持はごめんね、と謝りながら話しかける。
「あの…失礼でなければ、何故あんなに笑っていらしたのですか?」
「いや、初配信見てて今日はそっちのモードなんだなぁって思ったら笑っちゃった」
初配信見られてたのか、とこれはこれで違う衝撃が榊を襲った。事務所の大先輩にあの初配信を…、榊は首まで真っ赤にして蹲ってしまう。その様子に微笑みを浮かべながら剣持は話を続ける。
「僕あの配信好きですよ?なんて言うか、にじさんじらしい人間がまた増えたなぁって思いました」
「剣持様、それ褒めてらっしゃいます?」
「もちろん」
にこにこと上機嫌に話されると少し照れくさくなる。気まずそうに視線を斜め左に落とす。その様子に初々しいなぁ、と剣持は密かに癒されていた。何せ剣持の周りには生意気な後輩や一癖も二癖もある奴らしかいない物で少々気疲れしてしまうのだ。
「というか、その剣持様ってのやめてくれません?別に好きに呼んでくれて大丈夫だよ。何なら呼び捨てでも良いし」
「ぇえ?」
急に振られた話題に瞠目する。
「剣持様って呼ばれる程僕大した人間じゃ無いですし、それに様付けって距離感じるじゃないですか。僕、榊くんともっと仲良くなりたいですし」
もっと仲良くなりたい、何の嘘偽りの無い真っ直ぐな好意と高校生らしいいじらしさに思わず目の前の可愛らしい先輩を撫で回したくなってしまった。他のライバーの先輩方がこぞって剣持を可愛がる理由が分かった。構いたくなってしまうのだ、どうしても。この数分でこれだけ庇護欲を掻き立てられてしまった榊は柄にもなくそんな事を思った。
「…わかりました。けど、流石に先輩に呼び捨ては無理なので剣持さんで」
「んふ、わかりました。榊くん」
偉い偉い、とでも言いたい様な優しい眼差しを向けられる。此方の緊張も解されていく様に感じた。
「ところで剣持さん」
「はい?」
「収録終わった後速攻で帰宅されてませんでした?何でまた控室に?」
ふと、飛び出た疑問を投げかける。すると剣持はあぁ、と苦笑しながら頬をかいた。
「僕確かに榊くんの言う通り先に帰ったんですけど、途中で忘れ物をしちゃったので取りに戻ったんです」
成程、自分の推測は概ねあって合っていたなぁなんて思っていた所に剣持が言葉を続ける。それに榊は思わず目を見開き硬直してしまった。
「そこまでは良いんだけど、控室に戻ったら榊くんしかいなくて、寒そうだったからブランケットでも取ってこようと思ってたら急に腕を掴まれて隣に座らせられたんですよ」
それで気づいたら寝ちゃってました、とふわふわ笑う先輩に今度こそガチで申し訳なくなり冷や汗が額に背中にだらだらと流れていくのが分かった。自分が?剣持先輩を?隣に座らせた???何やってんだ俺!!?!?!と過去の自分を叱咤した。
「すぅぅぅぅ…本当に申し訳ありませんでした!!!!!!!」
居た堪れなくなり大きな声で謝罪する。
「気にしなくて良いよ、僕今日予定なかったし、ゆっくり寝られたのも久しぶりだしね」
今日何度目か分からない許しの声を頂く。くふくふと、楽しそうに笑う姿から怒ってはいなさそうだと安堵する。
「でもちゃんと榊くんもゆっくり寝るんだよ?目の下に隈うっすらだけどできてるから」
目元を優しく指の腹で撫でられる。心地の良い体温に目を細めれば無意識にその手に擦り寄ってしまう。最近は特に執事の仕事が忙しく、体調も崩しがちだったし、そのせいで碌な睡眠も取れていなかった榊はまた眠りの世界へ誘われそうになった。が、流石に何度も眠りかけるのも良くないかと思い必死に眠気と抗っていると、その行動に気づいたのか剣持はゆるりと笑いながら目元を撫で上げ、次に頭を撫でてやった。
久しぶりに頭、撫でられたな
思わず緩む頬を押さえながらその優しさを享受する。関わる事なんてないと思ってたけど、ファーストインプレッションは死ぬほど困惑したけど、それでも今日、ちょっとは仲良くなれたのかな。気づけばまた微睡の中に意識が落ちかけていた。
薄れ行く意識の中、最後に見えた剣持の顔は今まで見た何処の誰よりも優し気な眼差しだった。
「お~いネス~、起きろぉ、帰るぞ」
「ん”…?」
再び意識が浮上した頃にはもう時計はお昼の12時に差し掛かろうとしていた。同期の北見の声で起き、周りを見渡すともう剣持の姿はなかったが、代わりにブランケットだけが掛けられていた。
「お前、収録が終わってからずっと寝てたのか?」
「…いや、一瞬起きてた」
「なに一瞬って」
追求してくる北見をのらりくらりと交わしていれば北見の隣にいて静かに見守っていた魁星が一つのメモを差し出した。
「?なにこれ」
「なんか剣持さんが榊くんに、って。ネスお前なんかしたんか?」
心当たりが多すぎる、とドキドキしながらメモを開くとその内容に目を見開き、
「敵わないなぁ…」
と一言消えいりそうな声で呟いた。
寂しかったら、周りに頼っていいんですよ。
綺麗な字と共に書かれた言葉に今度会う時はプリンを持っていこうと決意した。
お久しぶりです~、あです
次回ゔぁるつとか言ってたのにごめんなさい!どうしても榊さんと剣持さんが書きたかった!!!!
口調云々は一旦置いといて下さい。一つも似てないとか自分でも思ってますよそりゃ、これから!これからですから!!!
あとほんと、求むんだけど誰かlrty書いてくれ…
コメント
1件
新人さんとknmcの絡みを見てみたかったので、嬉しいです🫶🏻🌀