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短編

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5

神様

♥

39

2023年08月28日

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神社の前に背格好から見るに18と思う少女がいた

「お参りですか?」

優しい声が境内に響く

その時気づいた、

少女は、片腕がなかった

腕の方にばかり目をやっていたのだろうか

「この腕ですか?」

と聞かれてしまった

「この腕、生まれつきなんです、だから気にしないでください 」

少女は今にも壊れそうな脆い笑顔を浮かべ、また掃除に取り掛かった

この神社は色々な噂があり、

その中の一つに

『神社の巫女をしている者の片腕は生まれつきではなく悪霊のもの』

というものがあった、

正直初めはなんとも思わなかった、

でもこの少女を実際に見て思った

「この子、よく見ると腕のことをよく気にしてる」

生まれつきだとして、18まで生きていれば慣れるか義手をつける…と思う

だがその割には片腕がないことに慣れていなさそうで、よく箒を落としている

あまりにもジロジロ見すぎただろうか、

「…あの、私の顔に何かついてます?」

疑いのような、不信感のような、そんな目でこちらを見ている

少女に何があったのか、より一層気になった時だった

無言でそのままお参りをしに行く、

が、流石に無言を貫きすぎたせいか少女がこちらを警戒している

財布を出した瞬間、その少女の目は元の優しさと悲しさに満ち溢れた目に戻った

お参りを済ませ、少女に尋ねた

「この神社って、どんな神様を祀ってるんですか?」

「…この神社の神様は、願いを叶えてくれるとか、そういうのじゃないんです」

予想外の返答だった、

もっとなにか、凄いものだと勘違いしていた

少女が続ける

「でもその代わり、神様はみんなの悩みや不安を聞いてくださるんです」

聞くだけ?

そんなの、人間にもできるじゃないか

「…人間にもできるだろって思いますよね」

この少女は心が読めるのか?

「でも、神様だからって、なんでも叶えれる訳じゃないんです」

少女の顔はその時急に曇った

「…私も、そう思ってました、なんでも出来るって…勝手に」

少女は今にも泣き出しそうな声で言った

「でも…神様が見てくれるって…凄いことなんだって…」

少女は泣きながら続けた

「もし…神様がなんでも出来るなら…そうだったなら…」

少女に対して、何も言えなかった

「…この、腕だって…」

年相応に泣く彼女は、苦しそうだった

少女が続けた

「…この腕、私が住んでた村で…掟で…神様に若く鮮度のいい腕を捧げることで…村の安全を願ってて…それでなくなったんです…」

驚きすぎて言葉が出なかった

若い腕?なぜ若い腕が村の安全に?

疑問だらけだった

「…すみません、急にこんなこと話して」

巫女服の袖で顔を隠しながら少女が言う

少女に対して、なんの言葉もかけてあげれなかった

村の掟に、間違ってると意見を出せなかった

そんな自分が堪らなく憎たらしかった

「神様は…願いを叶えてなんてくれないんです」

その時ハッとした、

自分達は神様に縋りすぎていたんだと

神様の普通は願いを叶えてくれること

でも普通なんかない、少女は片腕と引き換えにそれを知った

それがわかった時、額から汗が出てきた

この少女が、どこまで知っているのか

神様の何たるかを理解しているのか

それがとてつもなく気になった

そんな心を見透かした目で少女は言う

「神様なんて、いないよ」

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