止まることなくつらつらと文字が書かれていくホワイトボード。
メリット
Ⅰ.不老になって滅多なことがなきゃ死なない。
Ⅱ.妖に対抗できる。
Ⅲ.特殊な能力を得る。
Ⅳ.疲れなくなる。
デメリット
Ⅰ.頭痛、眩暈、吐き気に襲われる。
Ⅱ.ときどき人間に戻る。
Ⅲ.よく喰われそうになる。
Ⅳ.人と会話が出来なくなる。
「ソレカラ、妖ニツイテ」
スルスルと簡単な図を描くどりみ。
三角の中に横線を二本引いて、一番下を指し示す。
「ザコ。知能モ能力モナイ」
ザコと書き込んで、次に真ん中の段を指し示す。
「フツウ。知能ハ スコシ低イ」
フツウと書き込んで、最後に一番上の段を指し示す。
「特殊ナ妖。肉体ガアルシ、知能モ タカイ。 」
一番上には何も書き込む事なく、視線だけを寄越してシツモンハ?と聞いてくるどりみ。
あー、肉体が無いから物理が効かないのか。
Ⅰ.頭痛、眩暈、吐き気に襲われる。
Ⅱ.ときどき人間に戻る。
Ⅲ.よく喰われそうになる。
この辺がちょっと物騒やな。
なんや“よく喰われそうになる”って…。
今でもよく殺されそうなんやけど?
“ときどき人間に戻る”とか…妖になった意味無いやんけ!!
「こう見るとデメリットよ。メリットの方が大きく見えるで?」
「ちゃんと考えたほうがいいよ〜」
「コンちゃんの言う通りだぞー!」
「んー。別に間違えても悲しむ人おらへんし、もしこれで仮に死んだとしても俺は困らんからなんでもええんやけどなあ…」
そう呟くと、どりみに全力で睨まれた。
「大事ニシテクレル人ガイルノニ…自分カラ命ヲ無駄ニシテドウスルノ?」
大事にしてくれる人…?そんなの知らない。
「…例えば?」
「キョーサンノ父親」
………は?
そう言われた瞬間に頭にきた。よりによって何故アイツなんや??馬鹿にしているのか?
あのクソ親父が?俺を大事にしてくれてる?
「…ふざけるなよ。あんなヤツが俺を大事にしてくれてるやって!?馬鹿も休み休み言えや!!ああっ!?舐めてんのか!!」
何も返さずじっと見つめ返してくるだけのどりみに苛立ちしか感じなかった。
「なんか言えや!!」
「アノ人ハ良イ人ダ!!」
どりみに何がわかる?あんな…酒に溺れて、怒鳴ってばかりのクソ親父の事なんて…!!
「会ったこともないクセに、勝手なことばっか言うなや!!何がわかる!?どうせ愛されて幸せに生きてきたんやろ!?!?」
「きょ、きょーさんっ!」
「それはアウト…!」
「ストップ、ストップ…!」
らっだぁ達の制止を止めて俺をキッと睨みつけてきたどりみの顔は、いつものような無表情ではなく、明確な怒りに満ちていた。
「きょーさんは自分がこの世で一番可哀想だとでも言いたいの!?知ろうともしてないクセに勝手に決めつけるなッ!!」
カタコトが外れて、感情を剥き出しにして叫ぶどりみ。
“知ろうともしてないクセに”
だって…それで本当に嫌われていたら……。そしたら俺はどうすればいいんや?
無理だ。そんなことできひん。怖い。
心の奥の弱音は言葉にならずに宙にぶら下がって揺れている。
「〜ッ…ゴ、ゴメンナサイ」
俺の表情にハッとして謝ってくるが、正直言って頭に入ってこない。
さっきまでの熱はあっという間に冷めきっていて、今はただ寒い。
「…さんっ、きょーさんっ…」
「ぁ、らっだぁ…」
らっだぁにぎゅーっと両手を握られて、暖かさに我に帰る。
部屋にどりみの姿は見えなかった。
「大丈夫?多分みどりくんにとっては他人事じゃ無かったから。もっと真剣に考えて欲しかったんだよ…」
「他人事じゃない…?」
レウの言葉をオウム返しすると、コンちゃんが寂しそうな顔をした。
「みっどぉはね、人間から妖になったんだ」
どうも、チェシャで御座います。
次回はみどりくんの過去ということで。
いやぁ、最初の勢いはどこへやら。
ケンカしましたね〜
また次回。
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