⚠剣盾よりチャンピオンダンデの夢小説とかです。夢主の名前固定。
設定は3話のラガソを参照。
出来れば設定を見てから読んで下さい。
⚠飽きたら切るので、すぐ場面転換します。
⚠ダンデさんの夢小説なのに何故かネズさんが多いです。
⚠夢主以外のオリジナルキャラも出てきます。そちらの設定は4話のレグトを参照。
ーーーーー
ダンデとラガソ
「だ、ダンデ…ッ!おはよう…!!」
「!やあ!ラガソ博士!おはよう!」
朝のガラルリーグ本部、エントランス。
遠目からでも分かる長身に、愛おしくて堪らない紫の長髪。ラガソが彼を見間違える訳が無い。駆け寄って声を掛けると、ダンデは太陽のような笑顔で挨拶を返してくれた。緊張で声が震え、顔が赤くなる。
「ぅぁ、ッ、あ、え、ッと…!!い、ッ、いい天気だね…!?!?」
「?雨だぜ?」
「〜〜…あ”〜…!?ち、違くて…!!!」
勢いで声を掛けてしまったものの、何を言ったらいいかわからなくて。咄嗟に出た言葉も失敗に終わる。ぐるぐると目を回し、ラガソは頭を抱えた。頭上でダンデが笑う声がして、耳まで真っ赤になってしまう。
「まあ、水タイプのポケモンでバトルするには良い天気だよな!バトルするか?」
「へ、あッ、そ、そんな…!!チャンピオンは忙しいのに…!!僕なんかに構ってる時間なんて…ッ!!もう忘れて…!!」
朝から推しに会えた事が嬉しくって、緊張しすぎて訳の分からない事を言ってしまった。明るくフォローしてくれるダンデに申し訳なくなり、ラガソは深く俯いた。
「ふふ…。俺は君とバトルがしたいけどなあ。しばらくしていないだろう?」
「う…。そ、そうだね……。ジムリーダーだった時の…。トーナメント以来…?…で、でも……」
「仕事終わりならいいかな。今夜は空いているか?」
「へ…ッ、…!?!?え、ぼ、僕!?僕に聞いてる!?」
「ははっ!他に誰が居るんだ?本当に面白いな君は」
ラガソの慌てぶりに、ダンデは楽しげな笑い声を上げる。爽やかで男らしい、大好きな笑い方だ。メッシュの横髪を握りしめ、目線を上げられないままラガソは震える声を絞り出す。
「あ”…ッ、あ、空いてます!!空けます!!何時でも!!」
「本当か!ありがとう!確か…。番号は交換してあったよな?仕事終わりに連絡するぜ!」
「ッひぇ、…!?」
ダンデは片膝を付き、ラガソの顔を覗き込んだ。目が合わない事を気にかけてくれたのだろうか。せっかくダンデが話しかけてくれているのに、自分が目を合わせる事も出来ないから。
申し訳なさと情けなさと愛おしさがぐちゃぐちゃに混ざって、頭がパンクしそうだ。
「それじゃあまた後で!」と、ダンデはラガソの頭を撫でてから踵を返す。赤いマントが翻り、ダンデの背中はすぐに遠くなっていった。
「ッ……、〜……」
ラガソは声にならない声を上げ、白衣の裾をぎゅっと握りしめる。心臓が破裂しそうだ。大きな手が触れた所が、じんじんと熱を持って熱い。
「………好きだ〜〜…」
赤い頬を両手で挟み、ラガソはその場にしゃがみ込んだ。ダンデの体温が触れた箇所から全身に回って行くような錯覚を覚えながら、深く息を吐いた。
「ラガちゃーん?なあ、これさあ。ナックル丘陵の巣穴調査の仕事。俺が行かなきゃダメ?調査隊に依頼回していい?」
「………」
「ラガソ〜〜??生きてっか??おーい??」
「………う…」
ラガソがデスクに突っ伏して丸まっていると、キバナは書類の束でぺしぺしと後頭部を叩いてきた。
ナックルジムリーダーであるキバナと、地下プラントの責任者であるラガソは仕事上でもよく絡む。ラガソのデスクには様々な書類やファイルが散乱しており、キバナはそれを適当にどかして座った。
「なんかあったのかよ。今日様子おかし…いやいつもおかしいか。ど〜せダンデ絡みだろキモオタ」
「……う、うるさいな…!仕事しないと…。僕今日定時で帰るんで…」
「へー…。めず…。予定?ダンデと?デートか?」
「ッ、デッ……!?そッ、そんなんじゃない!!そんなこと許されない!!ただ!!バトルするだけ!!」
がばりと起き上がり、ラガソは顔を真っ赤にして反論する。キバナはニヤニヤと笑い、デスクに頬杖をついた。
「あ〜?バトル?そらまたなんで」
「ダンデが誘ってくれたからだよ!!ぼ、僕なんかと…ッ、バトルがしたいって…!!」
「ふーん…。お前どーせ勝てねえじゃんあいつに。かっこいい!緊張する!無理!とか言ってヘマしまくってよ。んでボロ負け。だせ〜」
「し、かたないだろ!!!大ファンなんだもん!!!推しと相対して!!全力が出せると思うか!?!?」
興味無さげに言い放ったキバナに、ラガソは涙目になりながらデスクを叩く。 高くて情けない声なので、大声を上げてもあまり迫力が無い。
「全力出しといて負けてるお前に言われたくない…し!!べ、別にダンデに勝とうなんて思ってない!!僕はただ…ッ!!」
「ラガソ博士〜。私語ばっかしてないで仕事して下さぁい。定時で帰んだろ?さっさと終わらせろって」
「お前が話振ったんじゃん!!」
とうとう話に飽きたのか、キバナはスマホロトムを弄りながら適当にあしらってくる。ラガソは口を尖らせながらデスクに向き直り、作業を再開した。
「つーか…。ダンデも何考えてんだか。ラガソが自分の事好きなのなんか、とっくに分かってる訳だろ?それで気軽に誘えるかね普通。完全に脈ナシなんじゃね」
「ダンデは!純粋にバトルが好きだから!誘ってくれたの!…みゃ、脈なんて元々期待もしてないよ!!ダンデは推し、でッ…憧れで…ッ…僕の思いはそんな浮ついた感情じゃ…っ」
「でもダンデと付き合えるんなら付き合いてえんだろ。あわよくば、って思ってる癖によ」
顔を真っ赤にしながら睨みあげてくるラガソに、彼は意地悪く口角を上げながら笑う。普段はとにかくレスバが強いこいつが、ダンデの事となるとこうも弱くなるのだから面白い。
「ッ、…そ、そんな事っ、お、思って、な、ッ…い……!」
「どーだか。ま、ダンデはお前みてえなキモオタなんか眼中にねえけど!残念でした!仕事しろ!」
「うるさい!!分かってるよ!!」
キバナはにぱっと憎たらしい笑みで言い切り、スマホロトムに視線を戻した。自分はサボるくせに、人に仕事をしろと言うのは一体なんなのか。
ラガソはキバナの態度に苛立ちながらも、ダンデに会える嬉しさで頬が緩むのを抑えられなかった。
ーーーーーー
レグトとラガソ
「…ラガソ博士」
「あ。あー…えっと…レグトだっけ?臨時ジムトレーナーの…。お疲れ様」
昼下がりのナックルジム。
研究資料を運ぶ為、ラガソが古城内の廊下を歩いていると、後ろから低い声に名を呼ばれた。振り返れば、ジムトレーナーのレグトが頭を下げてくる。
彼はガラル調査隊の隊長を務める、ガラル有数の実力者だ。何やらキバナに気に入られているらしく、現在臨時ジムトレーナーとしてナックルスタジアムに勤めている。ラガソは、彼の事をあまり得意とはしていなかった。
理由は1つ。
「(まじで顔良すぎて怖いんだよなーー)」
すらっと高い身長に、締まりきった身体。端正な顔故に威圧感があって、凄く話しかけずらい。
「…貸してくれ。重いだろう」
「ぅ、え、あ!?大丈夫だよ!?」
「そんなに沢山持っていては落としかねない。手伝わせて欲しい」
ラガソが持っていたファイルの束をひょいっと奪い取り、レグトは歩き出した。 コツコツと規則的な革靴の音が、ガラル古城の廊下に響く。
「あ、ありがとー…助かる…。」
「構わない」
横に並ぶ様に歩幅を合わせ、ラガソは視線を泳がせた。何か話題を振らなければと、脳味噌をフル稼働させる。
「…えっと!ジムトレーナーもう慣れた?手持ちドラゴンタイプに調節するのとか、大変じゃない?」
「いえ、特には。元々ドラゴンタイプを手持ちに入れていたので…慣れたな」
「まじ?凄いなー…やっぱ才能があるんだね」
「………。才に溢れている貴方に言われてもな。俺はバトルの腕しか価値が無い。最も、貴方はバトルの才も俺より遥かにあるので憎たらしい」
「え、ええと…!れ、レグトってさあ」
レグトの返答は思いのほかネガティブで、ラガソはどう返せば良いか分からず口ごもった。 ダメだ!話題変えよう!
「はい」
「見た目の割に連れてるポケモン可愛いよな!ほら!モルペコをエースにしてるじゃん?」
「…選ぶパートナーに、俺の外見は一切関係がないと思うが」
「あ、あー…!!言葉選び間違えたな…!!なんて言うの!?その!見た目とのギャップが!可愛いなって!!」
「……はあ。そうか」
「あ、あはは…〜…!!」
逃げようかな。もう怖い。話全然弾まないし。見下ろされただけで萎縮してしまう。
「(もう少し愛想良くしてくれても良くないか!?僕一応上司なんだけどなあ!?)」
「ラガソ博士は」
「え、は!?はい!?」
「キバナと、どういった関係なんだ」
「ど、どう…!?」
突然の質問に、ラガソは思わず顔を上げた。横目で見てくるレグトの顔は、いつもと同じ無表情に見えるが、どこか不機嫌そうでもある。
「え、えー…と……。子供の頃からの腐れ縁…?知ってると思うけど、ジムチャレンジも一緒に受けて…」
「…ほう」
「な、なんでえ…?」
「特に理由は無いが。キバナが貴方の話をよくするので」
「え!?僕の話なんかしてんのあいつ!?」
「ああ。…ワイルドエリアで、キテルグマにちょっかいをかけて逃げ回っただとか。セミファイナル当日に手持ちポケモンを全て忘れてきただとか」
「うっわ〜…はずかし…!!最悪…!!」
レグトの語る自身の話に、ラガソは頭を押さえた。ジムチャレンジ中の話はよくネタにされるが、まさかレグトにまで話しているなんて。
「正直、羨ましいと思った。俺は…そういった笑い話に出来るような幼少期を過ごさなかったので」
「え、そ、そうなの?…レグトの身の上話って聞いたこと無かったかも」
レグトは、自分の事を全く語らない。幼少期の話など、彼が自ら口にした事はなかった筈だ。あまりの珍しさに、ラガソは目を丸くする。
「…すまない。忘れて頂けるか。俺の話などするつもりは…」
「いやいや!聞かせてくれよ!知りたいんだ君の事!多分キバナもそう思ってるって!」
「………嫌だ」
「そこをなんとかさあ!」
黒手袋を嵌めた手で口元を覆い、レグトはそっぽを向いた。しかしラガソは目を輝かせて、そんな彼の顔を覗き込む。常に涼しい顔のこの男が、こんな風に取り乱すのを見るのは初めての事なのだ。
「…。もう到着したのでは?資料室は此処だろう」
「え、嘘!うわ〜…着いちゃったか」
そうこうしているうちに、目的の資料室に到着してしまった。「鍵を」と促され、ポケットから渋々鍵を取り出す。
「あーあ…。せっかくレグトの話聞けると思ったのに」
「気が向けば…今度話す」
「ほんと?絶対だぞ?」
鍵を回しながら、ラガソはレグトを見上げた。動揺しているのか、彼の目は少し泳いでいる。
「…貴方はお忙しいのだから、俺の話を聞いている暇など無いだろうに」
「そんな事ないよ?コミュニケーションは大事だと思うんだー。僕」
「そうだろうか。…貴方が言うのなら、そうなのだろうな」
ドアを開き、ラガソは「どうぞ」と掌を室内へ向けた。レグトは小さく「失礼する」と口にして、中へ足を踏み入れる。
「ごめんねー…埃っぽいだろ。資料室なんて滅多に使わないから、掃除が行き届いてなくてさあ」
「構わない」
「適当にその辺置いちゃっていいよ!ありがとう運んでくれて。助かりました」
「…大した事では」
空いた棚にファイルの束を置き、レグトは踵を返した。さっさと出ていこうとするので、ラガソは慌てて引き止める。
「待った待った!お礼になんか…。えーと…」
ポケットの中を漁って、ラガソはポフレを取り出した。研究室で待つランクルスの為に買ってきた物だが、まあ良いだろう。
「あった!はいこれ!モルペコちゃんにあげてよ」
「……良いのか」
「うん!モルペコちゃんが食べれればだけど…」
「俺のモルペコはなんでも喜んで食べる。…出してもいいだろうか」
「え!勿論だよ!」
「どうも。…出て来い。モルペコ」
腰のボールホルダーから、レグトはダークボールを1つ取り外す。赤い光と共に、中からモルペコが飛び出してきた。
「モ!」
「ほら。ラガソ博士から頂いた」
「モ〜ッ!!」
レグトが片膝をついて差し出したポフレを小さな両手で受け取り、モルペコは嬉しそうに目を輝かせる。そのままかぶりつき、頬いっぱいにもぐもぐと頬張り始めた。
「んはは、可愛いな〜…。美味しい?毛並みが綺麗だね君。沢山ウォッシュして、ブラッシングして貰ってるんだ」
「モッ!モルル!」
「……。」
一目見ただけで、そこまで分かるのか。
やはりポケモン博士の観察眼は凄まじい。
レグトはモルペコを褒めるラガソを見下ろして、思わず目を細めた。
「すっごく大事にされてるでしょ。君、幸せ者だね」
「モモ!モルモ!」
あっという間に食べ終わったモルペコは、ラガソの足元にじゃれつく。まるで「撫でて」と言わんばかりの仕草に、思わず顔が綻んだ。
「たは〜…!可愛い〜…!!おいで!だっこしてあげよう!」
「モ〜♡」
「モルペコ。ラガソ博士はお忙しいのだから、我儘を言ってはいけない」
抱き上げられたモルペコは、レグトの制止もお構い無しにラガソに擦り寄る。顎の下を撫でてやると、彼女は気持ちよさそうに喉を鳴らした。
「いーのいーの!にしてもさあ、ほんと人懐っこいよな。この子。レグトが沢山愛情かけてるから、人間が大好きなんだろうね」
「…やめてくれ…俺は別に」
「んはは、照れてる?可愛いね」
「……。………」
ラガソの笑顔に、レグトは顔を背けて黙り込む。そんな主人の様子など露知らず、モルペコはラガソの腕の中でご機嫌に笑っていた。
「よーしモルペコちゃん。大好きなトレーナーの元に帰ろーな」
「モルモ♡」
「……はあ」
にへらと微笑んで、ラガソはモルペコをレグトに返す。素早く肩によじ登り、モルペコは彼の頬にすりすりと顔を寄せた。
「ありがとねレグト。ここんとこ研究詰めだったからさあ…。おかげで癒されちゃった」
「いえ。こちらこそありがとうございました。モルペコ。お礼を言え」
「モルモルモー」
レグトの肩の上で、モルペコはぺこりと頭を下げる。その小さな頭を撫でて、レグトはラガソに向き直った。
「では、俺はこれで」
「モペ!」
「うん!またね!」
相棒を肩に乗せたまま、彼はラガソに背を向けて資料室を出ていく。その背中を見送って、ラガソは書類整理に取り掛かるのだった。
ーーーーー
ネズとラガソ
「ネズの煙草ってさあ、どこに売ってるの?珍しいやつ?」
「まあ…そうですね…。スパイクタウンにしか…。吸います?美味えですよ」
ラガソ宅にて。
ベランダのガーデンチェアに腰掛け、ラガソはふとネズに問い掛けた。探してみても中々売っていないので、ふと聞きたくなったのだ。景色を眺めて煙を吐いていたネズは、ラガソに目だけ向けてそう答える。
「え〜…吸ってみようかなあ…。こだわりとかある訳?やっぱり」
「そーですね…。味とニコチンの量…。シンガーは肺活量命なのに…やめらんねえです…」
スタッズの付いた彼らしいシガレットケースと、アンティークライターを寄越してネズは言った。ラガソは目をきらきらと輝かせて、それを受け取る。
「かっけ〜よなこれ!どうやって点けんの!?」
「お前、火も点けられんと?貸してみんしゃい」
ラガソの手首を掴んで、ネズは手慣れた様子でカチリと火を灯した。煙草の先端が赤くなって、独特な煙の匂いが広がる。
「い、いくよ!?吸っちゃうからね!?」
「はよせえ」
恐る恐る煙草を咥えて、ラガソはすうっと息を吸い込んだ。そして、すぐに勢いよく咳き込んでしまう。
「ッ”!?げほッ!ごッほッ…!あ”え”ッ…!にッッッが…ッ!!」
「くく…吸い込み過ぎですよバカ」
げほげほと涙目になって咳き込むラガソの背中を、ネズはくつくつ笑いながら摩った。ラガソは涙目でネズを睨み上げる。
「クソ苦いじゃんかこれ〜〜…ッ!!よくこんなもん吸えんなお前…!!」
「慣れですよ。慣れると美味えです」
「けほッ…!こほ…!!う”ぇ〜…!まず〜…」
「お前がガキ舌なだけ。勿体無いんで寄越しんしゃい」
短い舌をべえっと出して、ラガソはネズに煙草を返した。彼は何の躊躇いもなくそれを咥え、煙を肺に巡らせる。
「ふーー…。……。……どうでした?初めての煙草の味は」
「不味すぎ!苦すぎ!最悪!!」
「そりゃ残念」
ーーーーー
ぬい服を作るラガソ
「…何しとーとね」
「ん?…ふふ…。ちょっとね〜。裁縫をしてみちゃおっかな〜って思ってさあ。超天才で器用な僕なら、これくらい余裕なんだよな〜〜」
深夜。
どこから持ってきたのか大きなミシンをリビングに出し、ラガソはご機嫌で手を動かしていた。ネズはソファに座って、そんなラガソを呆れた目で見つめる。
「お前…服も買えねえほど貧乏になったんですか…?」
「はあ!?違うわ!!」
ネズが深刻な面持ちでそう問うと、ラガソは心外だとばかりに叫んだ。よく見れば布達はどれも小さくて、人間が着られるサイズでは無さそうだ。
「今作ってるのは!ぬいぐるみの服な!やっぱダンデのぬいにさあ、お着替えさせてあげたいじゃん?」
「…。お前ほんとキモいことしますね。で、ニヤニヤしながらひとりで眺めんでしょ。ただの布と綿の塊を」
「嫌な言い方すんな!!お前のそうゆう所ほんっと嫌い!!」
胸ポケットに入れて連れ歩いているくらい、ラガソはダンデのぬいぐるみを大切にしている。23にもなって、とネズとキバナは思っているが。
「(見た目も中身もガキ)」
「色々ネットで見てさあ、ふわもこな着ぐるみっぽいぬい服が可愛いなって思って!リボンとかも付けたいし、宝石も良いな〜…!ダンデといえばアメジスト?ルビーも似合うか!?あ〜〜……迷う…!!」
「……。どーー…でもいー…」
ぺらぺら喋るラガソに、ネズは心底興味無さそうに呟いた。髪をかきあげ、気だるげにソファの背に肘を付く。ラガソには聞こえなかったのか、ネズに目もくれず作業に没頭したままだ。
「ふふ、ふふふ…。僕のダンデがもっと可愛くなっちゃうな〜…!!」
「…気色悪い…。俺腹減ったんで…なんか勝手に食いますね」
ラガソが自分の世界に入り込んでいるのをいい事に、ネズはそう呟いて立ち上がった。
自炊をしない事が丸分かりのキッチンだと言うのに、無駄に設備が整っているので勿体ない。使われるのは、キバナが気まぐれに料理をする時くらいだ。
「良いけど、僕の分も持ってきてよね」
「…は。聞こえてました?」
ーーーーーー
ラガソが髪を染めた時の話
1年前
「はーい完成でーす。雰囲気変わって素敵ですね〜」
「わ〜〜…ッ!!凄…!!」
ナックルシティのとある美容室。
ラガソは今日、人生初の染髪を行っていた。 真っ黒だったショートの髪には、鮮やかな紫が入っている。
「ご希望通り〜、ダンデさんとほぼ同じ色になったかなあと思います〜」
「嬉し〜〜…!!完璧です!!ありがとうございます!!」
「良かったあ。んじゃ、 ありがとうございましたあ。またお越しくださ〜い」
予約するのも中に入るのもビビっていたし、 担当美容師がギャルで少し怖かったが。
これは勇気を出して来て良かった。
ラガソは美容室を出て、軽い足取りで歩き出す。今日はこの後、ネズとキバナと昼食の約束があるのだ。早く見せつけてやりたい。
「(僕じゃないみたいだな〜…!!)」
紫色に染まった髪を指先で弄りながら、ラガソは意気揚々と約束の場所に向かった。今回はキバナが行きたいと言い出して選んだ店で、個室の予約もしてあるらしい。
グループチャットに『今から行く』とメッセージを送ると、キバナから『俺らもう着いてる』と返信が来る。ラガソは「早」と呟きつつ、小走りでその店に向かった。
「お疲れ〜!!ごめんお待たせ!!」
「おせえ!!ラガちゃんが遅刻とか珍しく、ね……」
店の前に立つ長身の2人組に、ラガソは手を振りながら駆け寄った。2人は同時に振り返り…そして固まる。
「……うわ」
「は!?お前髪染めたの!?!?!?」
「今染めてきちゃったんだよな〜!どう!?似合う!?」
ネズは顔を顰めて目を逸らし、キバナはラガソに駆け寄ってその肩を掴んだ。ラガソは嬉しそうに笑って、自分の髪を触らせる。
「全然似合わねえ!!なんで紫!?」
「あ”!?お前さあ!言うなよ思っても!!」
「はー…。…大好きなダンデと同じ色にしたかっただけでしょ。気色の悪い」
「ああ!そゆこと?気持ちわり〜!」
「うるせえな!!お前らの意見聞いてませんが!!」
「思いっきりニヤニヤしやがりながら似合う?って言ってましたよね」
「だーー!!お前らみたいなの相手に!!褒め言葉を期待した僕が馬鹿だったよ!!」
ぎゃーぎゃー騒ぐラガソに、ネズは「しぇからしか」と一言だけ呟いた。キバナはそんな2人のやり取りを笑いながら見つつ、ラガソの頭を撫でる。
「ぎゃはは!まあ…良いんじゃね?まじで似合ってねえけど!」
「良くねえですよ。お前それでダンデに会えるんですか?正気?」
「正気ですけど!?僕もう帰ります!!お疲れ様でした!!」
ラガソは髪を手櫛で直しながら、頬を膨らませて2人を睨みつけた。そして、踵を返してつかつかと歩き出す。
「待て待て待て!ごめんってラガソ!」
「めんどくせー…。待ちなさいよ」
2人はそんなラガソを追いかけて、その肩や腕をそれぞれ掴んだ。キバナが宥めるように謝り、ラガソを振り返らせる。
「お前ら嫌い!帰る!!」
「悪かったよまじで!あーー…!ダンデが見たら絶対喜ぶんじゃね!?なんかまあ…よく見たら似合ってる気もするし!とりま飯食お!?な!?」
「いや全く似合ってはねえですよ。まじで気色悪い」
「ネズちょっと1回黙れって!!」
ラガソはキバナに腕を引かれ、ネズに背中を押されながら店に入った。
数日後。
散々2人にこき下ろされたので、ラガソは髪色を元に戻そうかとも考えたが。やはり自分的には大満足なのだ。あいつらに何を言われようが、もう気にしないことにした。
「(別にいいし!!僕のダンデは絶対褒めてくれるもん!!)」
リーグの廊下を歩きながら、ラガソはメッシュをそわそわと弄る。今日の会議にはダンデも来る。ファンサが楽しみな反面、彼は鈍い所があるのも知っている訳で。
「(……。気付かれなかったら…凹むかも…。こんな事思うのおこがましいよな…!?)」
ふと、キバナ達の反応を思い出してしまい、ラガソはなんだか不安になってきた。突然自分と同じ髪色にされたら、 引くのが普通の反応なんだろうか。
「(僕のダンデはそんな人じゃ…いやでも…そんな考えも僕の独りよがりな妄想の訳で…。き、キモい…よな……。ああー!!どうしよう!?)」
ラガソは髪を指で梳き、眉間にシワを寄せて唸った。頭がいっばいで前も見れず、廊下のど真ん中を歩いてしまう。そして、曲がり角に差し掛かった時だった。
「どわ”…ッ!?すいません…!」
「…おっと」
どん、と誰かにぶつかってしまい、ラガソはつんのめる。相手が誰かも認識せずに反射で謝ると、頭上から聞き慣れた声が降ってきた。
「え」
「すまない、大丈夫か?…あれ」
「だ…ッ…だ、…!?だんッ、…!?!?」
ぶつかったのは、ラガソが今1番会いたい相手で。ラガソは目を白黒させながら、口をはくはくとさせる。
大きな蜂蜜色の瞳と目が合って、数秒。
ダンデは、ぱちぱちと瞬きをして少し首を傾げた。
「ラガソ?…やっぱりラガソだよな!髪色が変わったか?」
「…あ、え、えっと…!は、はい…まあ、そ、そッ、染め…たというか……!!」
顔を真っ赤にして慌てるラガソの髪に、ダンデは屈みこんで優しく触れる。グローブを嵌めた右手で手櫛を通しながら、嬉しそうに微笑んだ。
「…俺の色だ。お揃いだな」
「へ、ッ…ぁ、え”…ッ…」
自身の髪を一束取って、ダンデはラガソのそれと見比べる。そして「ふふ」と笑いを溢した。
「う、ぇ…ぁ…ッ、そ、そうだね…!?だんでの色、に…っ…一応…、」
「嬉しいよ。よく似合ってるぜ」
「…ッ、あ、…ありがとう…」
ダンデの笑顔に、ラガソは顔を真っ赤にして俯く。大好きな推しに、夢のような言葉を貰ってしまった。もはや夢なのではないかと、思わず疑いたくなる。
「(ぼ、ぼくの髪…触ってくれたよな……!?ダンデが…っ…お、お揃いって…!!)」
「丁度、会議室を探して迷っている所だったんだ。君に会えて良かった!案内を頼めるかラガソ!」
「え、えッと、わかった…!一緒に行こっ、か…」
「ああ!ありがとう!」
大きな手が離れていってしまうのを目で追ってから、ラガソは顔を上げて頷いた。
ーーーーー
ネズとラガソ②
「ラガソ〜…俺のシャツどこ行きました…?」
「え?タンスしまう位置決めたじゃん」
ラガソの家には、ネズとキバナの持ち込んだ私物が沢山置かれている。バスルームも例外ではなく、ごちゃごちゃと色々な物が散乱していた。
風呂上がりのネズは、タオルを肩にかけたままラガソにそう問い掛ける。
「いや探したんですけど。見当たりません」
「えー…洗濯中か…?」
「もうパーカーだけでいいです…」
クローゼットを漁って、ネズは取り出したパーカーに袖を通した。黒地にピンクのラインが入った、髑髏刺繡の派手なデザインだ。
「んは、その服お前って感じする」
「かっけーでしょ」
「いつまでも厨二病ですね」
「うるせえですよボケ」
ラガソの軽口を軽くあしらって、ネズはリビングのソファにどかっと座った。長い髪からぽたぽたと水が垂れ、ソファに染みていく。
「おーい…髪くらい乾かしてから出て来いよ…」
「面倒です」
「じゃあ切ってくださいその髪」
「嫌です」
「髪長すぎんだってお前」
「これが気に入ってんだからほっといてください」
普段は結って纏めている髪を下ろして、ネズは鬱陶しそうに長い髪を耳にかけた。陰鬱な表情と相まって、その仕草は妙に様になって見える。
「…へー…気に入ってたんだ。ネットでめちゃくちゃ言われてるよ?ネズの髪型変って」
「は。人の容姿をとやかく言うなんてナンセンスですねえ」
「まあ、似合ってるけどさ?これが地毛とか面白いよね」
「お前はわざわざ染めてますよね。大好きなダンデと同じ色にって、気持ちの悪い事を」
「うるさいなもう!!!いいだろ!!ダンデは似合ってるって言ってくれたもん!!」
ラガソの右サイド髪に入った、太い紫のメッシュを摘んでネズは笑う。つい最近染めたばかりで、ラガソはネズとキバナに散々馬鹿にされたのを根に持っているようだ。
「お世辞に決まってんでしょーが。キモオタが」
「嬉しいよって言ってくれたんだダンデは!!もうさあ、そういうとこだぞって感じ…!!く〜〜〜…!!かっこいい!!!結婚して!!!」
「チッ」
「すーぐそうやって舌打ちしてさあ!早く髪乾かせお前は!」
「面倒くせえな〜…クソ…」
「ほら!」
ドライヤーを手渡され、ネズは心底嫌そうに目を細める。まじで目つき悪いなこいつ、と内心思ったが、言ったらキレられそうなのでやめた。
「あ”ー…。お前が乾かせや…」
「はい?なんと…??今僕に乾かせやと仰いました…??」
「頼みますよ。だるい」
「それが人に物を頼む態度か…??」
ふんぞり返ってそう言い放つネズを見下ろし、ラガソは頭を搔く。仕方ないなと溜め息を吐いて、ドライヤーのプラグをコンセントに繋いだ。
「どーも。寝てていいですかね」
「はあ。人に乾かさせて寝るんですか。いいご身分でいらっしゃいますね」
「くく…。お嬢様気分?」
「こんなカスみたいなお嬢様がいてたまるかよ…」
目がチカチカしそうな白黒の長い髪に、渋々ドライヤーの温風を当てる。ラガソ自身は髪が短いというのに、2人の為にわざわざ風量の強い物を買ってやったのだが。こいつは絶対、感謝などしていないのだろうなとラガソはぼんやり思った。
1万字超えた為、これで一旦終わりにします。
めちゃくちゃ色んなの書いてるので、どれを載せればいいか分からなくて…🤦♀️
とりあえず自分が気に入っている奴を何個かコピペしてきました。
ダンデさんの話もっと書いてるんですけど、私がネズさんを好き過ぎるのでネズさんが多かったです。
私はAIのべりすとと言うサイトで、長らく小説を書いてます。AIがお手伝いしてくれる素晴らしいサイトです😸
おまけの補完イラスト⬇
うちのネズさん
レグトとラガソ
名前も付けてない子ですが、ギャルが描きたかったので描きました。
これは今回の小説関係無いです。
ラガソと剣盾主人公の絡み妄想みたいなの
それではありがとうございました👋🏻
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