時刻は夜更け。とある建物の屋上にいるぺいんは遠くに広がる街の灯りを見ていた。
「またここに来るとはなぁ」
今度は空を見上げる。空も地上も静まり返っている。
そんなぺいんに少し離れたところからさぶ郎が声をかけた。
「ぺんぱぁ〜い」
「ん〜?さぶ郎、どうしたのぉ」
「さぶ郎、こっち側見てればいい?」
「そう。オレは反対側見るし、上にドリーもいるから」
「分かったぁ」
さぶ郎のいつもと変わらない様子にぺいんは少し緊張が緩む。
「さて、そろそろかな」
無線から聞こえる声に、背伸びをしながらそう思う。
ここはパシフィック銀行屋上。これからロスサントスでも最難関のミッションが始まる。
話は前日の夜になる。
まるんが帰った後、ぺいんに不破から出前の電話が入った。どうやら不破を含めメンバーに指名手配犯が多く、かつこの日単独で本署襲撃をした犯人もいるためアジト近辺をパトカーが見回りをしていて、ろくに買い物にも行けない状況らしい。
ぺいんはランポにかなりの量の飲食物とジョイントを積み込み、高級住宅街の高台にある不破のアジトにやってきた。連絡を入れると敷地内に隠されたガレージに案内され、そこには不破と彼の仲間数人がいた。
「ミンミンボウの出前ですよー」
「ぺんちゃん、いらっしゃい!」
「助かるぅ!」
かなりの時間、外に出られなかったのか全員がぺいんの出前を歓迎した。
「ランポの中にいろいろ入れてきたから、自分で取ってその後に取った数だけ教えて。請求作るから」
「ぺんちゃん、持ってきたの全部買うよ。請求は俺につけていいから」
「ふわっち、結構な金額になるけどいいの?」
「もちろん」
不破の言葉に彼の仲間たちが喜びの声をあげる。
「ボスの奢りだ!!」
「やったぁ!」
「んじゃ、一旦みんなでキッチンに運んで。カナト任せた」
「了解でーす」
「ぺんちゃんはちょっとこっちきて」
ぺいんは不破に案内されガレージ奥にある薄暗い会議室のような部屋に通された。椅子を勧められ座ると向かいに腰掛けた不破が真っ直ぐに視線をあわせてきた。どうやら真剣な話らしい。
「ぺんちゃん、明日の夜は暇?」
「店以外に予定はないけどなんかあるの?」
「パフィック銀行、どう?一緒に」
───市街地北部にあるロスサントス最大の銀行「パシフィック銀行」。ギャングたちはここの警備が薄くなる日を狙って大金庫から金を奪って逃走する。警備が薄くなっているとはいえ金庫を守るセキュリティは生きておりその解除は難しい。解除に時間がかかると警察に囲まれ逃走も困難になる。
そして、ぺいんはかつての、いや未来の記憶が蘇る。パシフィック銀行の屋上で不破とひたすらヘリと敵を撃ち続けた。
「オケ。屋上は任せろ。逃げ道確保する」
「任せた。ヘリ2台は落としてね」
「まるんが来なければ大丈夫」
「それな」
不破も同じことを思い出していたらしい。どのみち傭兵になるぺいんたちは外の警戒を行うことになるだろうが、不破から頼られていることは嬉しい。
「ちょっと電話いい?一旦、ミンドリーに連絡入れる」
不破に断りを入れ、ぺいんはミンドリーに連絡を入れた。どこに行くかは伝えておいたが、出前にしては時間がかかってしまったため心配しているかもしれない。
「ミンドリー?ぺいんだけど、今大丈夫?」
「大丈夫だよぉ。出前でなんかあった?」
「ふわっちからオシゴトの依頼きた」
「時間と場所は?」
「明日の夜中。7090」
そう伝えられたミンドリーはマップを確認する。少し考えた後すぐ返事をした。
「………オッケー。前と同じで3人で行くって伝えて」
あまりの返事の速さにぺいんも驚き聞き返した。
「フッ軽すぎない?」
「まぁ、今しか出来ないしね」
「ははっ。んじゃ、伝えておくわ」
ぺいんはミンドリーとの電話が終わり、傭兵として参加することを改めて不破に伝える。
「ミンドリーと話ついたよ。前と同じで3人参加で」
「助かるわ」
「配置どうする?うちはヘリも車も出せるけど」
「基本外で金庫漁り終わるまでの警戒と出る時のカバーかなぁ。ギミックはソロパレトの猛者がいるから大丈夫」
「了解した。あとは明日現地ですり合わせしよう」
「ドリさんにもよろしく伝えておいて」
話が終わり、ガレージに戻ると不破の仲間たちが勢揃いしていた。
「出前ありがとうございました!」
「こちらこそ。店にもきて欲しいけど、困ったら出前で呼んでくれたらいいから」
「助かります」
「あと明日の夜、参加することになったからよろしくね?」
「マジっすか」
「前と同じでうちの3人で行くからさ。お互い頑張ろう」
「頼もしいっすわ」
明日の集合時間と場所はまた電話するとのことだったので、辞去の挨拶をしてぺいんは店に戻った。
夜更け。店じまいをし晩酌をしていたミンドリーのところにぺいんがやってきた。向かいに座ったのでどうやら晩酌に付き合ってくれるらしい。
「ミンドリー、マジでいいの?」
「何が?」
「パシ」
開口一番、明日の大仕事について確認してきたぺいんにミンドリーはなんとも思っていない口調で返事をする。
「いいんじゃない?実際出る時の方が人数かけないと厳しいでしょ?」
「それはそう」
「で、どこやるの?」
「詳しくは現地で打ち合わせするけど、外の守りだね。僕は屋上を頼まれた」
「さぶ郎は?」
ちょうどリビングにやってきたさぶ郎も声をかけた。話し声が気になってやってきたらしい。
「さぶ郎は僕と一緒に屋上に居ようか。2段目で室外機とシアター側にいればお互いにカバーできるしね」
「やったぁ」
ぺいんと近い場所に配置されるのが嬉しいのかさぶ郎は喜びの声をあげた。
「俺、ヘリラークしようかな?」
「いいんじゃね?シアター上とかにずっといるより動けるほうがいいでしょ」
「さぶ郎、どこに相手が来ているのか教えて欲しいです」
「じゃぁ、やっぱりヘリ出すか」
「前にパシやった時のミンドリーのIGL凄かったからなぁ」
「そう?」
「僕と川中さんとさぶ郎とで中に詰めた時。配置もだけど突入の声掛けタイミングも完璧だった」
そのまま前の街での思い出話が続く。思い出といっても射線が有利なのはどのポジションだとか、エントリーするポイントや抑えるべき場所、どこから逃げた犯人が多かったかなどフィードバックに近い。
長くなった晩酌兼打ち合わせは細かい配置は現地で打ち合わせすること、準備も明日の早朝にやることにし、この日は就寝した。
コメント
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続きが気になりすぎる...! てか話が好きすぎる!続きはよ!