部屋の扉を閉め、ベッドに座る。スマホを出す。ホームボタンを押す。
妃馬さんからの通知に、鹿島、匠、僕、3人のグループの通知が盛り上がっていた。
ローテーブルの上に置いてあるテレビのリモコンでテレビをつける。ザッピングする。
テキトーな番組で止め、まずは妃馬さんからの通知をタップし
妃馬さんとのトーク画面へ飛ぶ。
「あれ?なんか違う?」
そのメッセージの後に猫が頭の上に
「?」をたくさん出し、困っているようなスタンプが送られていた。
「ゲームしかないww失礼すぎません?w」
「たしかに」
つい笑ってしまった。
「でも事実…だ し な…。あ」
と思い付く。返信を打ち込む。
「間違っちゃいないでしょうけど…なんだろう。んん〜ルーティーン的な?」
その後にフクロウが悩んでいるスタンプを送った。
「まだやってんのかなぁ〜…」
そう呟きながら次の返信を打ち込む。
「そういえば、今もかはわかんないですけど、鹿島たしか料理得意なはずです」
送信ボタンをタップする。スマホの後ろ側を人差し指でトントンしながら
「まぁ鹿島にも匠にも聞きたいことあるし、明日の5限休講って知ったら
どうせ今日実況…撮らないにしてもゲームはするだろうし、そんとき聞くか」
とブツブツと長々呟く。トーク一覧に戻り
今度は鹿島、匠、僕の3人のグループのトーク画面に入る。
「マジ?明日5限休講なの?ラッキー」
「明日遊ぶ?それか今日オールでゲームするか」
「5限休講ね。今日ゲームしたら寝そう」
「どした匠ちゃん。絵描きすぎで疲れた?」
「いやデートしてるから」
「デート!?!?」
「堂々と言うんやなぁ〜」
包み隠さない匠の感じに思わず言葉が漏れる。
「デートって、え!?音成さん!?」
「そうそう。冷袋デート」
「あ、結局冷袋行ったんだ」
「マジ!?あ、どうしよ動揺が止まんね」
「なんで動揺してんだよw」
「いや、マジか。そこまで進んでんだ?」
「進んでる?いや、別にあっちはただのおでけけだと思ってんだろ」
「おでけけw」
「あ、気にしないで」
「マジかぁ〜デートかぁ〜今も?」
「もうそろ帰るけど」
「はぁ〜デート。オレもしたぁ〜い」
「すりゃええやん」
「相手がおらん」
「大学で声かければついてくるだろ」
「コミュ障なもんで」
「誰がゆーとる?」
「ま、いいや。今日の夜詳しく聞きまーす」
「はいはーい」
そこで止まっていた。
「匠ー帰ったー?」
送信ボタンをタップする。画面に自分のメッセージが表示される。
すぐに送ったメッセージの時刻表示の上に既読1がつく。
「おうー。楽しかたー」
「そりゃ良かった」
そう言いながら返信を打つ。
「良かったな。うまくいった?」
すぐに既読1がつき、匠から返信がくる。
「どうだろうな。それはわからんな」
「それもそうか」
「ムーンライト水族館行ったことある?」
「あるけど〜…あんま覚えてない」
「クラゲすごかったわ。あとペングイン」
「ペングインwそうなんだ」
「頭の上通ってた」
「あぁ〜。なんかテレビで見た気する」
そんな会話をしていると既読が2になっていてすぐに
「ムーンライト水族館行ったんだ?」
と鹿島が参戦してきた。
「おぉ、京弥きた」
「遅ればせながら」
「オレが提案したのよ」
「え!?なに!?じゃあ怜ちゃん、匠ちゃんがデートすんの知ってたの!?」
「うん。今日大学で言ってた」
「うん。言った」
「うわぁ〜今日行けば良かったわぁ〜」
「やっぱ言った通りww」
「だなww」
「え、なに?なに?いや、打つのめんどいわ。みんな電話できる?」
「できるよー」
「オーケー」
すると鹿島からグループ通話がかかってくる。すぐに匠と僕も参加する。
「おいおい〜」
「おいおい〜」
「おっす」
「じゃぁ〜聞かせてぇ〜もらおうかぁ〜」
「なんその言い方」
「てかなに?さっきのやつ」
「あぁ、あれはね、匠と話してたんよ」
「京弥がこのこと知ったら
「あぁ〜オレも行けばよかったぁ〜」って言うだろうなぁ〜って」
「え、待って匠ちゃん、今のオレのマネ?」
「そうだけど」
「アホそうすぎない?」
「そうかな?忠実じゃなかった?」
「そっくりだった」
「おい」
3人で笑う。バカみたいな何気ない会話が落ち着く。
「で?匠ちゃん今日はどんなデートプランだったの?」
「あ、そうだ。結局どうしたん?」
「結局ね、まずはanimania(アニマニア)行って
音成がロナン好きだから、ロナンのグッズとか見て」
「あ、音成さんてロナン好きなんだ?」
「そうそう。今度3人でロナンの映画見に行くらしいよ」
「あぁそれオレも聞いたわ」
「あぁ知ってる知ってる」
鹿島と僕が被った。
「ん?なんで鹿島は知ってんの?」
「え?いやいやそれを言うなら怜ちゃんもでしょ」
「オレはこないだ妃馬さんと映画行ったときに聞いたんよ」
「あぁ、そういえば怜夢、妃馬さんと映画行ったらしいね」
「そうそう。そんとき鹿島は森本さんとデート行ったらしいけど」
「デート…じゃないですぅ〜」
「今間あったな」
「あったわ」
「違うから。ご飯食べただけだから」
「それも立派なデートになるんじゃねぇ〜の?」
「立派かはわからんけど、まぁデートにもなるよな」
「んん〜…。違う違う違う。今日は匠ちゃんのこと聞こうとしてたのさ」
「完全に脱線したな」
「で?animania(アニマニア)行った後は?」
「animania(アニマニア)で時間潰して、ムーンライト水族館行ったんよ」
「東京でデートってなるとまず思い付くスポットだよね」
「そうそう。オレが真っ先に思い付いたのがそこだった」
「わかるわかる。オレもデートっつったら水族館かテーマパークしか思い付かん」
「だよな。それも匠と話してたんよ」
「あぁ、高校生ならって話?」
「そうそう」
「どゆこと?」
「いや、高校のときデートどこ行ってた?って話になってさ」
「うんうん」
「鹿島は高校んときはどんなデートしてた?」
「高校んときか。んん〜。それこそ水族館とかシルフィーランドとか」
「ゲーセンとか行かんかった?」
「行った行った!」
「んでクレーンゲームしたり、プリパニ(プリント カンパニー)撮ったりしてな?」
「やったやった!それこそ制服で撮ったわ!」
「あぁ〜オレも制服だったかも」
「オレ制服シルフィーもしたぞ」
「ガチか!憧れたわぁ〜」
「へへへ〜」
「でさ!また脱線したけど、成人してからのデートってムズくね?って話になったのよ」
「あぁ〜」
「な?ムズイだろ?」
「ム…ズいな」
「んで、オレが思い付いたのがムーンライト水族館だったってわけ」
「なるほどなぁ〜」
「でもやっぱ水族館はスゴいわ。デートとかじゃないと行かないし」
「水族館…水族館…あぁ、最後に行ったのデートくらいだわ」
「オレは〜…デートでも行ってないかも。覚えてないだけかな」
「オレ弟とは行った覚えがあるよ」
「それはオレもだわ。妹と行った」
「オレはぁ〜お兄ちゃんと家族で行ったな。肩車して貰った記憶がある」
「なんか水族館て…いいとこだな」
なぜか心が洗われるような、しっとりした空気になる。
「まぁ思い出が生まれる場所なんだろうな」
「じゃあデートにピッタリだな」
「まぁ匠はどっちにしろデートで行ってるからな」
「そっか」
「で?その後は?」
「帰った」
「あ、結局夜ご飯は食べなかったんだ?」
「そうそう。水族館がめちゃ楽しくてさ。めっちゃいたんだよね」
「そんな?」
「6時半ころ入ってもうそろ帰るか
夜ご飯食べるかって思ってスマホ見たら8時半近かったわ」
「マジ?2時間もいたの!?」
「いたねぇ〜気づいたらだわ」
「今度行こ」
「なに?森本さんと?」
「おぉ〜?」
「まあ?相手他におらんし」
「「ふぅ〜」」
「うるさっ」
3人で笑った。大学生にまでなってこんな中高生のような恋バナをし
盛り上がるなんて考えてもいなかった。
「怜ちゃんは?」
「ん?」
「怜ちゃんは今後の予定は?」
「なにが?」
「いや、妃馬さんと」
「あぁ。えぇ〜と?来週?の土日どっちかに出掛けるね」
「今度の土日じゃなくて?」
「今度の土日は3人で遊ぶらしいから」
「あぁ、たしか日曜?にロナン見るらしいよ」
「あぁ、それで」
「なにするか決まってんの?」
「雑貨屋に行く」
「そんだけ?」
「んん〜。今んとこそれしか聞いてない」
「ん?怜ちゃんが決める ん じゃ ないの?」
「あぁ、交互にしてるのよ」
「交互に?」
「前回はオレが映画に誘ったから今度は妃馬さんって感じで」
「へぇ〜そんな感じなの?」
「そそ。だから前回映画行ったときに…」
一緒にストラップを買ったから
それをつけるためにスマホケースを買いに行くんだー。と言おうとして止まる。
「次回は雑貨屋さんに行きましょうかって話になったんよ」
「へぇ〜。なんか良いね」
「そうか?」
「オレ音成の行きたいとことかわかんねぇ〜しなぁ〜」
「オレも森もっさん行きたいとこは〜…わかんねぇな。
ユナハー(ユナイテッド ハーツ)好きなのは知ってるけど」
「あぁ、こないだなんかポップアップショップ行ってきたんしょ?」
「あぁ!そうそう!去年ユナハー(ユナイテッド ハーツ) 20周年だったじゃん?」
「だったじゃんと言われても知らんけど」
「オレも知らんかった」
「あぁ、そうなのね。去年20周年だったのよ。
んで、ポップアップストアが1月に開催されたんだけど
そんとき行けなかったらしくて、ちょうど5月始めから6月頭までと11月にもやるらしくて
5月の部に行ってきたって感じなのよ」
「ほおぉ〜。ポップアップストアってどんな感じなん?」
「特設会場があってグッズがドーン!って置いてある感じ?」
「へぇ〜」
「興味ないだろ」
「あるある」
「京弥はなんか買ったの?」
「あぁ、1人で行ったとき買った」
「へ?」
「ん?どゆこと?鹿島は森本さんと行ったんだよね?」
「あぁそうそう。えぇ〜っとね。森もっさんめっちゃグッズ買ってたのよ。
これたぶん匠ちゃんはわかってくれると思うんだけど、使う用と保存用で買ってたのね?」
「どちゃくそわかる」
「だしょ?でね?アイス用のスプーンとか2セット買ったり、タンブラーも2セット買って」
「わかる。わかるわ」
「んで、5千円以上で主人公が使う鍵型の剣をモチーフにしたピンバッジが貰えるのよ。
んでスプーン2セットで5千円越えてて、タンブラーも2セットで5千円越えててさ。
それだけで1万円越えてたんよ」
「わかりすぎるなマジ」
「まぁオレはそんなどっぷりなゲームはないからさ。
基本ゲーム自体に金ぶっ込むタイプだから、あんまグッズは買わないわけよ」
「でも前鹿島ん家行ったとき、ファンタジア フィナーレのフィギュアあった気するけど」
「あぁ、あれは一目惚れで買っちゃったのよ。
んで、まぁ軍資金は3万だったらしくて、ほぼ3万全部使ったのよ森もっさん」
「エグいな!」
「いや、わかるぞもっさん」
「もっさん」
鹿島が笑う。
「んで、リュックがあったのよ」
「うわぁ〜ほしぃ〜。実用と保存用で確実に2つ欲しい!」
「そうなのよ。でもね、リュック高ぇの」
「まぁするだろうな」
「約1万」
「うぅ〜。するねぇ〜」
「そう。でリュックで1万。さっきので1万。
残り1万で1セットでいいやつとかも買って、ギリギリ3万で収まったのよ」
「偉い!そこで留まれるの素晴らしい」
「2セット買わなくて済むやつもあるんだ?」
「シールとかタペストリーは1セットでいいんだって」
「わかるわかる」
「でもタペストリーは1枚4000円だから無理だったね。
シールは1枚1000円で全8種だからそれでギリ3万」
「素晴らしい」
匠が拍手している音が聞こえる。
「んでリュック1つだから使えないだろうなぁ〜って後日1人で行って買った」
「なんの為?いや、なんの為は森本さんの為なのはわかってんだけど
なに?どういう…なんて言ったらいいの?」
「どういう名目で買ったの?」
「そうそれ!いや、それか?」
「うん。2人の言いたいことなんとなく伝わったわ。誕生日プレゼントだね」
「あぁ、そうなんね。いつなの?」
「8月1日だって」
「めっちゃ先じゃん!」
「ね。オレも先走ったなぁ〜って思ったけど
でも、ポップアップストア5月で終わりだし、次回11月だしでな」
「でも、もしもっさんがリュックもう1つ買ったら?」
「たぶん〜…ないと思う」
「そうなの?」
「全部買ったら7万くらいいくらしいんよ」
「オーマイグッネス…」
「まぁいくよね〜。うんうん」
「それでもリュック1つの計算なんだって」
「あぁ〜それは並大抵じゃ無理だね」
「そうなのよ。匠ちゃんクラスの財閥じゃないと」
「財閥ではないがな?」
「だからまぁまずないと思いたい」
「誕生日かぁ〜妃馬さんいつなんだろ」
その後もゲームもせずにただただ話していた。
「ちょ、飲み物取ってくるわ」
鹿島が言う。
「へいへーい」
「あ、この後ワメブロか金鉄やろうよ」
「今何時?」
スマホのホームボタンを押す。
「2時17分」
「2時17分」
ハモリこそしなかったものの、ほぼ同時に鹿島と僕が言う。
「まぁ、明日なんもないし、いっか」
正確には1限はあるのだがこの3人に行く気など更々なかった。
鹿島が飲み物を取ってきて3人で金鉄の実況を撮った。撮り終えたのが4時半頃。
鹿島はそこから編集をするらしい。匠も匠でこれから絵を描くらしい。
僕も動画のストックはすごくあるのだが全く編集していない。
そして今日も編集することなくベッドの上で布団を被る。
窓から微かに朝日が差し込み、微かな光で照らされた薄暗い部屋。
ボーっとしながらも考える。匠は音成さんとのお出掛けのことを堂々とデートだと言う。
鹿島も「好きだ」とは明言してはいないものの
森本さんのことを考え、もはや誕生日プレゼントまで買っている。
なんだかんだで2人とも関係を進ませているように思う。
別に早いのがいいという訳ではないとはわかっている。
わかってはいるものの親友2人を見ていると少し焦る。妃馬さんと僕の関係。
そこから先を考えず布団に潜る。薄暗いから暗いになる。暗いほうがより一層考えが巡る。
僕の妃馬さん対する気持ち。そこから先を考えないように頭を振る。
妃馬さんの誕生日…。
そこだけが明確に気になった。
「今日姫冬ちゃんに聞こ」
そう呟き眠りについた。
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