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ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜
第128話 - 〇〇は『主人公がショタ化』するのを目の当たりにするそうです その3
29
2023年12月27日
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2023年12月27日
前回の『ダン件』。次の目的地を目指すことになったナオトたちだったが、その直後に彼はショタ化してしまった。
だが、腹が減っていては頭も働かないため、とりあえず朝ごはんを食べることにした……。
「さてと、朝ごはんも食べ終わったことだし、俺がどうしてこんな姿になってしまったのか、みんなで考えよう」
その直後、俺の背後から声が聞こえた。
「その必要はないですよ。本田《ほんだ》 直人《なおと》さん」
「だ、誰だ!」
俺が座った状態のまま勢いよく振り向くと、そこには髪と目と翼《つばさ》が赤、青、緑、黄で均等に染められている、見た目が十歳くらいの『本物の天使』が立っていた。(髪は長い。服装は、メイド服)
俺の部屋にいる十人のモンスターチルドレンとその他の存在たちは、いきなり現《あらわ》れた彼女に驚《おどろ》いたせいなのか、なんの行動《アクション》も起こせずにいた。
「誰だとは失礼ですね。私はあなたの守護天使だと昨日の夜に言ったでしょう?」
「え? も、もしかして、お前があの時の守護天使なのか?」
「はい、そうです。私があの時の守護天使です」
「そ、そうか……。そ、それで? どうしていきなり現れたんだ? 俺になんか用か?」
「バカですか? あなたは」
「え? それってどういう……」
「説明するのが面倒なので、私の思考が伝わるように今から『完全契約』をしましょう」
「なんか、昨日もそんなこと言ってたな。その『完全契約』ってのは具体的に何をするんだ?」
「何って【キス】をすること以外に何があるのですか?」
それを聞いた瞬間《しゅんかん》、俺の周りにいた、みんなが戦闘態勢に入った。
俺は「まあまあ、一旦、落ち着け」と言って、みんなを座らせた。
「コホン……。えーっと、それって今じゃなきゃダメなのか?」
「今回はいいです。今のみなさんの反応を見て、何も考えないほど、私は無能ではありませんから」
「そ、そうか……。それで、俺に何の用だ?」
「同じ質問をされるのは嫌《きら》いですが、あなたの担当である間は我慢《がまん》します」
「お、おう、なんかごめん……」
「……別に謝らなくてもいいです。えー、それでは、あなたがなぜ、そんな姿になってしまったのかをお教えします」
「お前、何か知ってるのか!」
「落ち着いてください。そして、できるだけ近づかないでください。私は人間という種族が一番|嫌《きら》いなので」
それを聞いたみんなが、また戦闘態勢に入るのを阻止するために、俺はみんなの方を見ながら首を横に振《ふ》った。
「えーっと、とりあえず、早く教えてくれないか? 俺がどうしてこんな姿になったのかを」
「それは別に構いませんが、その代わりに私に名前を付けてください」
「え? あー、そういえば昨日、そんなこと言ってたな。というか、お前の体はどんな構造《こうぞう》をしているんだ? めちゃくちゃ、カラフルなんだが」
「それは私がミカエル、ラファエル、ガブリエル、ウリエルの遺伝子を融合《ゆうごう》させて誕生《たんじょう》した存在だからです」
「え?」
「ですから、ミカエル、ラファエル、ガブリエル、ウリエルの遺伝子を融合させて……」
「四大天使の遺伝子を持って誕生《たんじょう》した存在……だと?」
「はい、そうです。そのくらいじゃないとあなたを守護できませんから」
「は、ははは、生きている間に四大天使の遺伝子を持つ者《もの》に会えるとはな」
「……あのー、そろそろ名前を付けてもらえませんか?」
「お、おう……」
俺って、なんかすごいやつに守られてたんだな。
「どうかしましたか? まさか、考えていなかったのですか?」
「い、いや、そんなことはないぞ」
「なら、さっさとしてください」
「あ、ああ、分かった。すまない」
うーん、昨日の夜、名前を考えたはずなんだが、思い出せな……あっ、思い出した。よ、よかった。これでなんとかなるぞ。
俺は昨日の夜に考えておいた名前を彼女に伝えることにした。
「お前の名前は今から……『フィア』だ」
「『フィア』……ドイツ語の四ですね」
『C-キ○ーブ』にも、そういう名前のキャラがいたような気がするが……まあ、いいか。
「ああ、そうだ。四大天使の遺伝子を持って誕生した存在であるお前にぴったりな名前だと思うんだけど、どうかな?」
「人間にしては上出来です。ハグしてあげてもいいですよ」
「本当か?」
「冗談《じょうだん》です。人間と仲良くする気はありません。ただし、協力はします」
「……そっか。その……ありがとな。フィア」
「いえ、一応、あなたの守護天使ですから」
なんとなく空気が和《なご》んだのを感じたため、俺は『フィア』にこう訊《たず》ねた。
「それで? どうして俺はこんな姿になっちまったんだ?」
「それは……あなたが『エメライオン』との戦いの中で目覚めた『第二形態』の力のせいです」
「えっ? そうなのか?」
「白いフリージアの花言葉を知っていますか?」
「えっと、たしか『あどけなさ』……だったよな?」
「はい、その通りです。では、もう分かりましたね?」
「……いや、すまない。俺にはさっぱり分から……いや、待て! もしかして今、俺がこんな姿なのは!」
「お察《さっ》しの通り、あなたは『第二形態』になったことで『あどけない』状態……つまり」
「俺は、その花言葉通りに『幼《おさな》く』なったってことか?」
「はい、そうです」
「どうすれば元に戻れるんだ! 教えてくれ!!」
俺は『フィア』の両手を握《にぎ》りながら懇願《こんがん》した。すると……。
「では……あなたの初めてを私にください」
「さっきから何なのよ! あんたは!」
『フィア』のその発言に、かっとなったミノリ(吸血鬼)が立ち上がり、『フィア』に怒《いか》りの眼差《まなざ》しを向けた。(俺は、ミノリの声に反応してミノリの方を見た)
「何かを得るには何かを失《うしな》うものです。あなたには理解できませんか?」
「そんなの知らないわよ! それより、あんたは人間が嫌《きら》いなはずよね? なのに、なんでナオトとそういうことをしようとするのよ! 意味が分からないわ!」
ミノリに賛同《さんどう》するかのように俺以外の全員が立ち上がり、それと同時に全員の背後から怒《いか》りに満ちたオーラが見えた。
「私はこの人が受精卵の時からずっとそばにいます。それなのに、あなた方《がた》と出会ったせいで、この人は世界の運命を変えかねない旅に出ることになってしまいました……。あなた方に、この人といる資格はありません。ここで処分します」
「なに? もしかして、あたしたちと殺《や》り合おうっての? 上等よ! 表に出なさい!!」
俺は二人を止めようと仲介《ちゅうかい》に入ろうとしたが……。
その直後、俺の体の中は、いくつもの槍《やり》で刺《さ》されたかのような激痛に襲われた。
「あああああああああああああああああ!!!」
何度も、何度も、身体中をいくつもの槍《やり》で刺《さ》されるかのような痛《いた》みが俺の体の中をぐちゃぐちゃにしていく。
その時の俺は、身悶《みもだ》えるというより、暴れ狂《くる》っていた。
ケンカをしている場合ではないと思った彼女らが俺をなんとかしようとしていたその時『フィア』が。
「この苦しみ方は『第二形態』になった副作用ではありません! これはおそらく……暴走です」
「ちょっと! それ、どういうことよ!」
ミノリ(吸血鬼)が『フィア』にそう言うと。『フィア』は。
「この人の体の中には『|夏を語らざる存在《サクソモアイェプ》』という神々も恐《おそ》れるほどの蛇神《じゃしん》の心臓があります。おそらく、それが『第二形態』の影響《えいきょう》で体が縮《ちぢ》んでしまった体に反応して中で暴れているのです」
「なんですって! それで、それを治せる方法はないの!」
「彼の血を限界まで体外に出せれば、なんとかなると思います」
「それなら、あたしの出番ね!」
「た、たしかに、あなたは吸血鬼です。しかし、加減を間違えれば、この人は……」
「何言ってるの? もしかして、あたしが加減を間違えると思ってるの?」
「そ、そうです」
「大丈夫よ。あたしはナオトの……未来のお嫁さんなんだから!」
「……そうですか。それでは、ナオト様のことをよろしくお願いします」
ミノリ(吸血鬼)が『フィア』のその言葉を聞いていたかどうかは知らないが、急いでナオトの元《もと》へ向かった。
彼女は未(いま)だに叫(さけ)び続けているナオトの体を全員で押さえている間に、彼の首筋《くびすじ》に噛《か》み付いた。
あたしはナオトを助けたい! だから出てきちゃダメよ! あたしの本能!!
ミノリ(吸血鬼)はナオトが死なないギリギリまで血を吸い続けた……。
「……はぁ……はぁ……あ、ありがとな。みんな」
ようやく落ち着いた俺の周りには、心配そうな顔をしている、みんながいた。
「あ、あはは、今回はマジで危なかったな」
「あんたは、おとなしく寝《ね》てなさい! あたしがあんたの血をかなり吸っちゃったんだから、まだ動かないで、お願いだから……」
「……おい、そんな顔……するなよ。お前らしくないぞ?」
「……バカナオト。こんな時まで、そんなこと言わなくていいわよ……」
「ミノリ……みんな……いつも……すまないな」
「今はゆっくり休みなさい。いいわね?」
「あ、ああ、分かったよ。それじゃあ、おや、すみ」
ナオトはそう言うと、スウスウと寝息を立て始めた。
ナオトのその様《さま》は母親の膝枕で眠る少年のようだった。
その時、みんなはこのまま、ショタ化したナオトと旅をするのもいいかもしれないと思った……。
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