テラーノベル
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小さい頃の夢をみた。アイツと過ごした時間がスクリーンに映し出されたかのように、間違いが何一つない私たちの言動だった。
よく、幸せな夢は忘れて思い出せないと聞くが、はっきりと覚えている。じゃあこれは幸せではない夢だったのか?と考えるが、絶対にありえない。アイツと過ごす毎日が、私にとって生きる理由であったから。
私の両親は、どっちも仕事が忙しくて家に居ない日が多かった。誕生日も学校行事も、来てくれる日は一度も無かった。両親が来ないことが原因で、私はクラスメイトに虐められた。
「親に愛されてない。」「迷惑でいらない存在。」
そんな言葉ばかり。私は信じていなかったが、日が経つにつれてそれは本当なのではないかと思うようになってしまった。誰にも愛されていなかったら、私には存在価値がない。ただの”物”になってしまう。そんな想像をしてしまっていた帰り道。夕暮れに照らされて、綺麗な公園は暗く染まっていた。家に帰るまで必要以上に執着して虐めてくる奴ら。そろそろ私の心も限界になってしまって、殴られても暴言を言われても何も感じなくなってきていた。さっさと死のう。どうでもいい。誰に愛されているかも分からない私は、幸せを感じる価値がない。
「お前ら何してんの?」
そんな時だった。私を救ってくれた”神友”が現れたのは。彼は冷たい目で虐めてくる奴らを見て、はあ、とため息をついた。少し小柄な彼は走り出したと思ったら、瞬く間に虐めてくる奴らを蹴飛ばしていく。アイツらは”やめろ!”と言って抵抗いたが、彼が辞めることはなかった。その後、虐めてくる奴らは泣きながら逃げ帰っていた。
私は怖くて動けずにいた。彼は、こちらを振り向いた。同じ目をされるのか、と目を瞑る。
「大丈夫だったか?」
その言葉に、反射的に目を開ける。目の前には、先程と同一人物と言えないほど、優しい目をした彼がいた。彼のおかげで私の未来に光が差した感覚がした。
彼は〈カオス〉と言うらしく、最近ここら辺に引っ越してきたらしい。
「どうして初対面の私を助けてくれたんだ?」
私の質問に少し間を空けて話し出した。彼には弟がいるらしく、少し体が不自由らしい。それを知った彼の同級生が弟を虐めるようになった。弟を助けるために同級生を突き飛ばしたら、その人たちの良いように殴った経緯を改変させられて、カオスが悪いことになった。その学校を転校して、こっちに来たそうだ。
「だから、弟と同じで虐められてるお前をほっとけなかったんだよな。」
「そうだったのか。ありがとうな、カオス。」
「別に大したことないぞ。」
この出来事があってから、私たちは毎日公園で遊ぶようになった。カオスが毎回助けてくれるおかげで、虐めてくる奴らはいなくなり毎日が平穏だった。次第に私たちは”神友”なった。
「お前も虐められなくなって良かったよ。」
「毎回助けてくれてありがとう。カオスは私の守護神だよ。」
「嬉しいけど、大袈裟過ぎじゃね?w」
「・・・なあ、カオス。」
「ん?どした?」
「私と、神友になってくれないか?」
「なーに当たり前のことを言ってんだよ。俺は結構前から神友だって思ってたけどな。」
「え!?本当か!」
「嘘なんか吐かねえって!」
その数日後、カオスは死んだ。弟が車に轢かれそうになったのを庇ったそうだ。弟も、カオスも死んでしまったが。カオスは本当に守護神だった。私だけではなく、私の見えないところで沢山の人たちを救っていた。助けていた。
昔のことなのに、自然と涙が出てきた。でも何で今、カオスの夢が出てきたのだろうか。そんなことを考えながら、少し重い足を上げ、出勤していた。
「すみません。そこのお兄さん。」
突然声をかけられた。路地裏に小さな店を構えている見るからに胡散臭い人だった。
「何ですか?」
「最近、何か突然思い出したこととか、思い出品が見つかったとか、過去に関わる出来事がありませんでしたか?」
私はドキッとした。まるで心を読まれたかのように、私が気になっているカオスについて当ててきた。この人にだったら、話しても大丈夫そうだ。直感的にそう思った。
私はこの人に今日の夢のことを話した。
「お話ありがとうございます。突然お声がけしてすみません。実は、あなたに何か黒いモヤが付いていまして。私の経験上、過去に何か約束したこととか、まだ夢を叶えられてないとかそう言う類の霊なんですよ。しかも結構前からいる霊っぽくて。」
これはもう分かった。カオスの霊なんだ。朝の夢は、カオスが私に見せた夢だったのかもしれない。約束、夢、叶えられてない・・・私とカオスの過去に、何か共通点がある。なにかカオスと約束したこと。
ああ、あったな。そういえば。
「すみません。ありがとうございました。」
「え?大丈夫なんですか?」
「はい。話して楽になりました。ありがとうございました。」
私は早口で話を終わらせ、職場に休暇を伝えてある場所に向かった。
向かった場所は ー公園だ。カオスと初めて会った場所。助けられた場所。たくさん遊んだ場所。私はここで、過去の出来事を思い出していた。
「正式に神友になったんだったら、これからもずっとお前を守らねえといけねえな。」
「じゃあ私もカオスを守る。」
「エクスデスはちょっと弱いからなぁ。」
「はあ!?私は弱くない!」
「悪い悪いwでさ、これ俺ら神友の約束にしようぜ!神友が続いていくまで、さっきの”守る”約束は絶対だ!この決まりを破らない。」
「お互いにお互いを守る!」
「! ああ!そうしよう!絶対な!」
約束。それをカオスはずっと守っていた。守っているから、いつまで経っても成仏できない。だから私自身で、約束を取り消そうと思う。カオスにはここにはいない、私以上に大切な守る人がいるから。
「神友は、ここで終了にしよう。カオス、これからはまた、友達だな?」
ありがとう。約束守ってくれて。覚えててくれて。もう大丈夫だから、私は負けない。虐められないよ。
コメント
2件
投稿お疲れ様です♪ カオスさんが約束を守ろうとしている事、見ていてとても切ないです… きっとカオスさんにとってエクスデスさんは特別な存在なんですね。 でもきっとエクスデスさんは大丈夫ですよ。 投稿頻度が高くてとっても嬉しいです! 素敵な作品をありがとうございました😭