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あたしが覚悟して目を瞑った、その瞬間。
カンッ!カラカラカラッ…
男が持っていた銃が地面に転がった音がした。
目の前に人が立っている気配がある。
なんだろう、なんか人にしては大きい?
あたしは驚いて目を開けた。
そこには、九弧化した翠がいた。
「ちょっとちょっと、なに物騒な武器持ってんのさ」
『あぁ?誰だテメェ』
『こいつあの女の言ってた翠って男なんじゃねぇか?確かに美形な男だな』
『そこの女にお似合いな金持ってそうな彼氏だねぇ』
「…へぇ?君たち、モモちゃんが金持ってそうって理由だけで襲ったの?」
『それの何が悪いかよ!!!!』
ぱしっ
『なっ…!?』
翠、こんなに強かったの…?
敵の金属バット、指1本で受け止めてる…
「モモちゃん、大丈夫?なんか嫌な予感がしてさ。嫌な予感って当たるもんだよね」
「翠…」
「安心していいよ、こいつらは俺が始末しておくから」
翠はそのまま素早い動きで男たちを翻弄し、1人ずつ倒していく。
1人、また1人と、地面に倒れていった。
翠には先っぽが緑っぽくなっている美しい尻尾が9本。
あたしは気づいた。
見惚れている。
あれだけ嫌っていた翠に、見惚れている。
ざしゅっ
あたしを現実に引き戻すような、嫌な音がした。
翠の肩から血が流れている。
残っていた男のうち1人が、ナイフを持っていた。
「翠!!大丈夫!?」
「俺は平気。モモちゃんこそ平気?顔、真っ青だよ」
正直、翠に守ってもらってる今でもめっちゃ怖い。
本当に4ぬかと思ったし。
なんて思っていたら、いつの間にか全員倒し終わった翠がこちらに近付いてきた。
安心からか、あたしは硬直していた体の力が抜けて、そのまま翠の腕の中に倒れ込む。
「おわっ…どしたの、モモちゃん」
「…うるさい黙れ。いいから今はこのままでいさせて…」
「はいはい。ごめんねぇ、危険な目に合わせちゃって。落ち着いたら俺の家に来てよ、怪我の手当てするから」
そう言い、翠はあたしの頭を撫でる。
あたしを包み込む翠の尻尾はめちゃくちゃふわふわだ。
「…てかあんた九弧だったんだね。アヤシイとは思ってたよ」
「ほんと?どうやら俺が思ってたよりモモちゃんは賢いのかも!」
「それあたしのことバカだって思ってたってこと?」
「エ~、ソンナワケナイジャン」
「バレてんだよ」
「ふふっ。まぁ俺も家族以外の九弧に出会うのは初めてだよ」
「家族以外…?翠は九弧から生まれてるってこと?」
「そーゆーこと。まぁ今は1人暮らしだけど。あとで怪我の手当てのついでに話すね」
「…ありがと。でもどうやって帰るのさ。九弧化してるの、他の人にバレるよね」
「心配はいらないよ。こーすれば大丈夫♪」
ぼわんっ
小さな爆発が巻き起こり、背中が軽くなる。
爆発で起きた煙が消えたとき、あたしの獣耳と尻尾は消えていた。
しかも、制服だった服は(多分翠の好みっぽい)白いワンピ―スに変わっていた。
「…ねぇ翠。九弧化解除されたのは嬉しいんだけどさぁ、この格好ってあんたの好みだよね」
「え~、モモちゃんに似合うからこれにしただけだけど」
「あとなんであんたまで服装変わってんの?」
「だって俺イケメンすぎて制服のままだと女子にナンパされるから」
「聞かなければよかった」
「いや~、やっぱモモちゃんは面白いね。ほら、家行こ。消毒しないと」
あたしの腕を引いて、ちょっと警戒しつつも路地裏から出る翠。
あんなナルシスト野郎だったのに、今日はとてもかっこよく見えた。