テラーノベル
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#愚痴
発達障害者のADHD僕がアイドルやっと 音楽スタジオの重い扉を開けた瞬間、ずしりと響く重低音のバスドラムが、胸の奥まで直接揺さぶってきた。
「――はい、そこ! ターンが半拍遅れてるよ! もう一回最初から!」
厳格なダンス講師の声がスタジオに響き渡る。
ずらりと並んだ大きな鏡の向こうには、すでに汗だくになりながら完璧なステップを踏む他のメンバーたちの姿があった。みんな動きがピタリと揃っていて、まるで一つの生き物みたいだ。
「あ、やば……」
僕は自分の立ち位置を確認しようとしたけれど、右と左が瞬間的に分からなくなる「左右盲」の悪い癖が顔を出す。
頭の中で『右、左、右……いや、待て、次はどっちだっけ?』とパニックになりかけた瞬間、音楽のテンポに自分の思考がまったく追いつかなくなった。
周りの視線が痛い。
――また僕だけ、みんなの足を引っ張っている。
焦れば焦るほど足がもつれ、バランスを崩して派手にその場でスッ転んでしまった。
スタジオの空気が一瞬で凍りつく。音楽が止まり、講師の冷ややかな視線がこちらに向いた。
「おい、君。しっかりしてくれよ。ついてこられないなら、今ここで降りてもらっても――」
「すみっ、すみません……!」
床に手をついたまま、頭を真っ白にさせかけたその時。
スッと目の前に差し出された大きな手が一つ。
「大丈夫? 立って」
グループで一番の人気を誇るメンバーの先輩が、何でもないような顔をして僕の手を引き上げてくれた。
「こいつ、ちょっと不器用だけどさ、音楽が始まると目つき変わるから見ててよ」
先輩がニヤリと笑った瞬間、僕の体の中で、さっきまでバラバラだった歯車がカチリと音を立てて噛み合った。
――そうだ。頭であれこれ考えるな。音を聞け。
「……もう一回、お願いします!」
えとちゃん頑張れよ
コメント
1件
「第1話」読みました。ADHDの主人公がアイドルとして葛藤する描写、すごくリアルで胸に響きました。特に“左右盲”で混乱して倒れるシーンと、先輩の「音楽が始まると目つき変わる」という一言が印象的。頭で考えるのをやめて音に身を任せる――その切り替えの瞬間を丁寧に描いていて、設定の説得力が高いです。えとちゃんのこれからが楽しみですね。