コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「もう大丈夫よ!よく頑張ったわね、さぁ!赤ちゃんをここに 」
ふわふわの電気毛布を広げた、助産師がアリスに優しく言う
その時アリスが無意識に赤ん坊をしっかり、抱きかかえているのに気が付いた
アリスが震える手でそっと電気毛布の、おクルミに赤ん坊を寝かせた
まだ臍の尾が繋がっている赤ん坊を、助産師はしっかり貞子に抱かせた、胸をはだけさせ裸の赤ん坊と母親の肌と肌を合わせる
その時パッチリ赤ん坊の目が開いて、貞子を見つめた
「ああっっ!あたしの赤ちゃん!あたしの赤ちゃん~~~ 」
あまりの感動に貞子がむせび泣く、アリスも泣く
赤ん坊は安全で温かい素肌の母親に抱かれ、母子ともに電熱シートですっぽり包まれた
頭が冷えないようにピンク色の小さな、帽子を被されている
今はもう泣きやんで小さくクピクピ言っている、もう安心だ
「あ・・ありす・・・アリス、ありがとう・・・あなたは・・・この子と私の命の恩人よ 」
赤ん坊を抱いた貞子がアリスを見て号泣する、アリスが貞子の額にかかった髪をはらい、ボロボロ涙を流し、首を横にふる
しっかり見つめ合い、言葉では言い表せない、地獄の苦しみを味わった同士の感覚が漂う
二人の間に永遠の友情が生まれた瞬間だった
「貞子ぉーーーーー!!ぶじかぁーーーーー!! 」
「なんだこりゃ!いったいどうしたっっ???」
その時外で叫んでいる北斗とジンの声がした
クスッ・・「いまごろお出ましになったみたいね」
『まったく女はこうして死ぬ思いで、人類を増やしているってのに、男はこんな時何の役にも立ちゃしないよ』
まだスピーカーで繋がっている、ネネ婆さんの一言に貞子もアリスも笑った
「さだこぉ~!さだこぉ~!!! 」
「うわ~~~!産まれたのか?産まれたのか?そんな!まさかっ!」
北斗とジンが玄関先で大騒ぎしている
「それじゃお母さんと赤ちゃんを、病院に搬送します、もし胎盤が出てきたら救急車の中で処置します 」
「赤ちゃんを冷やさないように、しっかり抱いていて下さいね」
「ハ・・・ハイ・・・・ 」
勇敢にも自力で自宅出産をした母親の貞子に、救急隊員達が拍手をした、貞子は赤ん坊を抱きしめたまま、エへへへと頬を染めて照れた
そして喉がカラカラの貞子は(それは持っていく)と、ストローの付いた水筒を、ストレッチャーの横に置かせた、救急隊員に我儘を言えるぐらいだから大丈夫なのだろう
お~~い(泣)お~~い(泣)
「さだこぉ~~~~~ぉぉぉ、さだこぉ~~~~~おおお 」
ジンは両肘をついて腰を抜かしたらしく、玄関で半狂乱で泣きじゃくっている
北斗も壮絶となった現場を新聞紙で包まれた、特大のイノシシ肉を持ったまま、大口を開けて呆然と突っ立っている
家に入ってもいいのかどうかも、わからずどうしたものかと悩んでいると、救急隊員にそこにいると邪魔だと怒られている
「殺すのはもうちょっと先にするわ」
「その時は私も手伝います」
『あたしも呼んでおくれ』
無事にお産を生き延びた三人は、高揚感から笑い声をあげた
アリスはこれ以上ない達成感と幸福感で胸が膨らんだ
「うわあーーーーー!!アリスーーー!なんだそれ???」
「あっ北斗さーん!」
北斗がアリスを見て真っ青になって、次に真っ白になった
アリスのチュールスカートは、貞子の血液と羊水まみれだ
一つにくくった髪の毛は、あちこちほつれてボサボサだ、顔も髪も手も汚れてヨレヨレだった
なのに笑顔だけは、どういうわけかとびきり素敵に輝いていた
「だっ・・・・大丈夫かっ!」
「赤ちゃん見た?」
「あ?ああ・・そうだな・・・いや・・見てない・・それにしてもその格好・・・」
北斗が慌ててウエットティッシュを一枚引き抜いて、汚れたアリスの頬をごしごし拭いてやる
拭かれているのでアリスが片目で北斗を見る、その瞳はキラキラしている
「まったく・・・なんて言ったらいいか・・ちょっとここに座って・・・何か飲み物を・・・」
しかし北斗の顔を見た途端、気が抜けたアリスは、カクっと膝から崩れ落ちた
「アリスッ!」
咄嗟に北斗がアリスを抱きかかえる
「どうした??」
救急車に貞子を乗せ終わったジンが、北斗の声を聞いて飛んで来た
「なんだ?何があった?」
北斗に抱きかかえられている、アリスを二人で囲む
「・・・・寝てるな・・・これは」
「ああ・・・寝てるな」
アリスは気を失ったように、小さないびきをかいていた
「ほ・・北斗・・・本当に・・・アリスには何てお礼を言ったらいいか、二階に貞子の着替えがあるし・・・何ならアリスも病院に連れて行って・・ 」
「いいよ、お前も忙しいだろ?アリスの面倒は俺が見る」
それを聞いた余裕のないジンは、慌てて親族に電話をかけまくり、一刻も早く病院に行きたくて母親と新生児の、入院グッズを車に運び込むのに忙しくしている
『その子を褒めてやっておくれ、あたしの助手に欲しいぐらいだよ、北斗!落ち着いたらその子をうちに連れてきな、あんたの嫁さんかい?』
まだ繋がっている電話の、スピーカーからネネ婆さんの声がする
「ああ・・・・自慢の嫁だ 」
アリスは腕の中で小さく寝息を立てている、そんな彼女のおでこに、北斗は優しくキスをして囁いた
「お疲れ様・・・天使ちゃん」
..:。:.::.*゜:.