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≫前回の続き
あの一件から何一つ変わらない。
変わったとすれば前よりライが構ってくるくらいだ。
「ロウ!そっち行った!」
「おっけ、まかせろ!」
今日も安定になって来つつあるライとのゲーム。
ゲームしてれば忘れられるから前より頻度も多くなった気がする。
寝る時間も少なくなった。だって寝るとあの日のことが夢に出てくるから。
人間ではないにしろ睡眠は大事だって分かるけど寝たくない。
「ロウ?」
「ん?あぁごめん。ボーってしてた」
「やめる?てかちゃんと寝てんの?」
「あー寝てるよ」
「絶対嘘じゃん。もしかしてねれない?」
どうやって答えればいいか分からない。
無言を貫くとため息が聞こえる。いや俺が面倒くさい性格なのは知ってんだよ。だからウェンにも…
「ごめん、寝るわ」
「ねれるの?一人で」
「んー」
「家行くからちょっとまってて」
「いいわ、子供じゃねーし心配すんな」
「心配くらいさせてって言ってんの」
プツンとディスコードが切れてさっきまで騒がしかったゲーム音もしない。
ふとピコンと通知音がなった携帯を見れば
『ライとどんな関係なの?』
『付き合ってるの?』
「ッなんなんだよ、!」
アイツの一挙一動に振り回されて嫌いになりたくてもなれなくて、まだウェンの事が好きな自分に心底腹が立つ。
もう好きじゃないなら俺に構うなよ…
ライとのあの一件以来泣くのを我慢していたのに。
ぼたぼたキーボードに水滴が落ちる。濡らしたくなくて立ち上がるままにベットに倒れ込んで枕に顔を埋めた。
濡れていく枕が気持ち悪い
「…っく、、ふざけ、んなっ…」
堪えるように枕にしがみつき、誰に聞かせるでもなく嗚咽を噛み締めた。
頭がぼーっとしてくる。しゃくり上げすぎた喉はきゅぅと締まるように痛くて
起きたら全部忘れててくんねえかな
一緒のグループになってからなぜか目が離せなくて。自分では一匹狼だとか言っているが実際は寂しがりやだし、怖がりだし。全然年上にすら見えない。
好きだって気付いたときには遅くてロウはアイツのモノになってた。
良い奴だしウェンにならロウを任せられると思ったのに
「あんな事なるなら止めておけばよかった」
突然来たロウの顔を見るのは耐えられなかった。普段の切れ長の目尻は紅く染まっていて今にも泣き出しそうで、握りしめすぎていた手は震えていた。
好きなやつには幸せになって欲しいじゃん?なんで俺はロウを幸せにできる立場に居ないんだと何度おもったことか。
ウェンから奪うなら今がチャンスなのに、なんて最低なことを考える。
ロウのマンションのエントランスを抜け、部屋番号を呼び出す。
本当にあの後寝たのか、何度か呼び出し音を鳴らせば心なしか掠れ気味なロウの声
「ほんとに来たんだ」
「うん、開けてよ」
エレベーターに乗り、部屋の前まで行けば見ていたのかと思うほど絶妙なタイミングで玄関が開く。
お前ほんとお人好しだなって鼻で笑われた。
それはロウだからなんて言葉を飲み込んで。
「また泣いたんだ」
「…またじゃねーし」
ほんのり紅く染まってしまった目元から頬を親指でなぞる。少しだけかさかさしてる
猫みたいに少しだけ手に擦り寄って来るロウが可愛くて、愛おしくて…また少しだけ苦しくなった。
「上がれば、なんももてなし出来ないけど」
「それはいつもでしょ笑」
「うざ笑」
意外と綺麗な部屋。大きめのソファに腰掛ける。
2人腰掛けるには十分で、隣をぽんぽん叩いて座ることを促した。
「またウェン?」
「ん、」
深く腰掛け、俯き加減なロウはどんな表情をしているのか分からないが膝の上で握り締めていた携帯が原因なんだろう。
見ても良いみたいで受け取って、通知バーを見ればウェンからのメッセージが何個か連なっていた。
『ライとどんな関係なの?』
『付き合ってるの?』
『ねぇやっぱりロウくんの事がすき』
『会いたい』
「別れたアイツには関係ないのに」なんて強がる声が震えている。
結局好き同士じゃん、なにに迷ってんだよ…なんて。
ロウはこっちの気も知らないであの日のように肩に頭を埋めた。
「…あっちもまだ好きって言ってんじゃん、なにに迷ってんのさ、」
「…は?ウェンの気持ちなんて分かるかよ」
「分かるも何もまだ好きって書いてんじゃん、それともなに?ほんとに俺と付き合う?」
「らい…?っんぅ、!?」
何も分かってないロウに無性にムカついて
寄り掛かっていたロウの肩を押し、ソファに押し付けた。
手首を押さえつけ、唇を合わせる。
「ッ…は、なんで…」
暴れることもせずただ呆然と寝転がったままのロウ。
瞬きをすると静かに涙が流れ、拭いたいのに俺にはそんな資格がなくて
「ねえウェンのメッセージちゃんと最後までみた?」
「さいご、?」
「まだ好きって書いてるよ」
ロウの上から退いて携帯を手渡す。
「俺帰るね、泣かせてごめんね」
「ライ、」
帰り際にみたロウの顔はくしゃりと歪み、また涙が溢れそうだった。
≫また続きいつか出します