ななもり 「おはよう、莉犬くん」
莉犬「なーく、」
ななもり「ふふ、可愛いんだから笑」
ななもり「朝ごはん食べたら行こ!」
莉犬「うん!」
今日は最高の目覚めだ。
いつもいる看護師さんはどこにもいないし。
目が覚めたらなー君がいて。
莉犬「んー!!美味しい!!」
今日の朝ごはんもサイコーに美味しい。
ななもり「にこにこだね」
莉犬「楽しみなんだもん!!」
ななもり「声も出るようになったもんね!」
莉犬「そう!」
1日で治るなんて自分でも思いもしなかった。
ななもり「みんなもすぐ来るからね」
莉犬「何言ってるの笑」
莉犬「もうみんな後ろにいるじゃん笑」
ななもり「え、あぁ、ほんとだ、笑」
ななもり「疲れてんのかな笑」
莉犬「もう、もりさん笑、」
ななもり「てへへだね、笑」
莉犬「笑えない笑えない笑」
莉犬「まじ骨になるよ?笑」
ななもり「莉犬くんの餌になれる笑」
莉犬「りいぬ様をなんだと思っている?笑」
ななもり「ペット?笑」
莉犬「俺ペットだったんだ」
莉犬「じゃあ、なーくん骨か」
ななもり「あー、開き直らないで?」
莉犬「みんなもなんか言ってよぉ笑」
ころん「なーくん馬鹿じゃないの笑」
さとみ「辛辣笑」
ジェルくんはやっぱりどこにもいない。
みんなでタクシーに乗って俺の家に向かう。
話しながら通る町中は、いつにまして楽しく見えた。
ななもり「お金俺払うからさきでてて」
そう言って皆と先に部屋に向かう。
以前していた異臭や、散らかっていたゴミは
もう跡形もなく消え去っていた。
莉犬「懐かしい…」
るぅと「家、落ち着きます?」
莉犬「そりゃあね笑」
莉犬「あれ、つぅちゃん達は?」
るぅと「皆僕の家にいますよ」
るぅと「多分今頃ミルクと寝てます笑」
莉犬「そっか、それなら良かった」
ななもり「お、部屋回った?」
ななもり「綺麗になったでしょ」
ななもり「皆で掃除したんだよ」
莉犬「そうだったの…ありがとう!」
ななもり「いいのいいの!」
ななもり「お昼どうしようか!」
莉犬「うーん、みんなで食べられるとこかぁ」
ななもり「え、あ、お昼は2人だよ」
ななもり「みんな仕事でね」
莉犬「あー、まじ、?」
ななもり「ごめんね、空けられなくて」
莉犬「あ、全然!」
ななもり「何食べたい?」
莉犬「そうだなぁ、オムライス!」
ななもり「オムライス?それでいいの?」
莉犬「うん、オムライスがいい!」
ななもり「OKー!お店探しとく!」
みんなで仲良く話していたらいつの間にかに時間はすぎていき、
タクシーをもう一度使ってなー君が予約してくれたお店に向かっていく。
莉犬「オムライス楽しみ」
ななもり「あんま外で食べないからなぁ」
ななもり「ちょっと新鮮笑」
莉犬「うわぁ、美味そぉ、、」
目の前には大きくて、温かいオムライス。
ななもり「うわぁ、うまそ…笑」
ななもり「ひとくちちょうだい?笑」
なーくんは、俺と違うものを注文してくれた。
もちろんそれは、シェアするため。
幸せは皆で噛み締めたい。
莉犬「そりゃあね?笑」
莉犬「あーぁ、みんなで食べたかったなぁ、」
ななもり「そうだよね、笑」
莉犬「でも、なー君と二人きり!」
ななもり「そうだそうだ!笑」
莉犬「これこれでいいね笑」
ななもり「いいでしょ笑」
莉犬「うわぁ、これマジ美味い」
莉犬「あ、グリンピース」
ななもり「えぇ俺も食べたい笑」
ななもり「グリンピースは全部食べるから笑」
莉犬「え、マジ!やった!」
莉犬「もう、沢山食べてくださいよ笑」
ななもり「え、うま笑」
ななもり「オムライスに虜だよ?笑」
莉犬「あんま無い笑笑」
そんなこんなで二人でお昼を食べ終わり、
家に向かう。
やっぱり帰りもタクシーを使って帰っていった。
しかし、そろそろ心配になるところがある。
莉犬「ねぇ、お金…」
ななもり「あぁ!いいのいいの笑」
ななもり「今日は莉犬くん特別デーだよ?」
莉犬「でもっ、!」
ななもり「お金なんていらないよ」
ななもり「俺が欲しいのは、」
ななもり「元気な莉犬くんだからね」
莉犬「そっか、」
ななもり「ほら、疲れたでしょ?」
ななもり「そろそろ寝たら?」
莉犬「うん、疲れちゃった…笑」
莉犬「おやすみ…」
長くて短い一日が終わる。
莉犬「んっ、」
いつの間にかに連れてこられた寝室には誰もいない。
置き手紙もないし、荷物もない。
とても殺風景な見た目をしていた。
莉犬「なーくーん!!」
大きい声で声をかける。
リビングからは音がしない。
あ、もしかしてドッキリかな笑
そう思って、リビングにルンルンで向かう。
莉犬「ふふ、もう!笑」
莉犬「ひとりにしないで…ぇ、?」
リビングには何も無かった。
正確に言えば、ゴミしかなかった。
前のように異臭がする元の家。
莉犬「どう…して、」
莉犬「なー君!なー君!どこにいるのッ」
莉犬「こんなドッキリ酷いッ!!」
どんなに呼び掛けても誰も答えてくれる人はいない。
そんななか一通の通知の音がする。
さとみくんからだった。
さとみ「莉犬、大丈夫?最近元気ないから。」
何言ってんのこいつ。
さっきまで一緒にいたじゃないか。
ついに、記憶喪失ドッキリ?
莉犬「は?お前さっきここいたじゃん笑」
そんなの騙されないぞと、少し意地のはった
LI〇Eを送る。
さとみ「何言ってんの?」
さとみ「俺お前になんかあってないけど」
そういうのほんとにウザイ。
莉犬「ウザイんだけど笑」
さとみ「お前、ひとが心配してんのに…」
莉犬「ドッキリやめてよ笑」
さとみ「ドッキリじゃねぇよ」
なんで、どうして?
どうしてそんなこと言うの?
さっきまで見てたものは嘘だったっていうの?
じゃあ俺は誰と話してたの?
誰とあって、、誰と食べたの、?
莉犬「……ねぇ、やめてよ」
手が震えているのがわかった。
スマホを握る指が汗でじっとりと濡れてる。
さとみ「なぁ、今どこにいるの?」
莉犬「家に決まってんじゃん」
スマホの向こうの声がやけに真剣で、胸の奥がざわついた。
コンコン――。
家の玄関の扉が叩かれる音がした。
莉犬「……なに、」
ゆっくり玄関に向かって歩く。
足が震える。呼吸が浅くなる。
扉を開けると――
そこには本当に、さとみくんがいた。
さとみ「ごめん、来ちゃった、」
莉犬「……なんで、」
でも、何かがおかしい。
だって、ついさっきまでなーくんと外にいて……
オムライス食べて、タクシーで帰ってきて……
莉犬「なー君は?なー君はどこ?」
さとみ「……莉犬」
莉犬「さっきまで、いたんだよ……!」
莉犬「俺の目の前で笑ってた!!オムライス食べて!!」
莉犬「なのに、なんでいないの……!」
声が震える。
涙が勝手に頬を伝って落ちた。
さとみ「……莉犬、なーくんは、ッ」
その先を言おうとした瞬間。
部屋の奥から“カタ”と音がした。
莉犬「……今、音した」
心臓がドクンと跳ねた。
奥の暗い廊下に、影が――動いた気がした。
莉犬「なー君……?」
足が勝手に前に進む。
暗い廊下の奥。
寝室のドアの前で、黒い何かが立っていた。
ななもり「……莉犬くん」
確かに、なー君の声だった。
でも、その声は――どこか、冷たかった。
莉犬「……なー君?」
暗がりの中で立っていた影は、ゆっくりと顔を上げた。
その輪郭は確かに、俺が知っている“なー君”だった。
優しくて、あたたかくて――俺をいつも包み込んでくれた笑顔。
ななもり「莉犬くん……」
莉犬「……なんで、いなくなったの」
一歩踏み出すと、床がギシッと鳴った。
なー君は何も言わず、ただじっとこちらを見ている。
いつもと同じ声。いつもと同じ顔。
……なのに、胸の奥がひどく冷たい。
さとみ「莉犬っ!!」
後ろから、さとみくんの声が響いた。
その瞬間――なー君の姿が、スッと揺らいだ。
莉犬「……え?」
歩いた先にはもう道は無い。
ベランダだった。
まるで水の中に溶けていくみたいに、
輪郭がぼやけ、影が暗闇と混ざって消えていく。
俺は、マンションから飛び降りた。
「やだ……いやだ、やだ、やだ!!」
声にならない叫びが喉を突き上げる。
涙で視界が歪む中、なー君は優しく笑って。
ななもり「……ごめんね、」
空間が、ぐにゃりと歪んだ。
急に視界が暗くなって、足元の床が波みたいに揺れだす。
「やだ……なにこれ……」
「ねぇなんなのッ…!!! 」
「いやッいやぁッいやぁぁぁぁあぁッッ…!!」
体がふわりと浮かぶような感覚。
まぶたが重くなって――
意識が、ストンと、深いところに落ちていった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
目 が覚めると、真っ白な天井が視界に広がった。
「……あれ?」
小さく呟くと、頬に涙がすーっと流れ落ちた。
枕は少し湿っていて、泣いていた跡が残っている。
喉はカラカラと乾いているのに、体は妙に汗ばんでいる。
まるで、長い長い夢を見たような気がした。
ひとつの物語のような夢。
窓の外の雨が少し強くなる。
まるで空まで泣いてるみたいに。
「……夢、見てたんだっけ?」
小さな声で呟いて、目をぎゅっと閉じた。
目を開けた瞬間、胸の奥にドクンとした違和感が広がった。
さっきまで確かに泣いていた気がする。
叫んで、手を伸ばして……誰かの名前を。
けれど、耳に届くのは静かな自分の部屋の音だけだった。
時計の針が「カチ、カチ」と動いている。窓の外からは、いつもの朝の光。
ベッドの端を掴んで、ゆっくりと身体を起こす。心臓は早鐘のように鳴っている。
涙の跡が頬に残っていて、それが現実と夢の境目を曖昧にさせる。
けれど——なんで泣いていたのか、もう何も思い出せない。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、やけに眩しく感じられて、 胸の奥がズキズキと痛む。
理由もわからないまま、心の真ん中にぽっかりと穴が空いていた。
「……なんか、変な感じ」
スマホを手に取る。
そこには、なーくんやメンバーとのいつも通りのグループトーク。
昨日と変わらない世界が、そこにあった。
だけど、自分の中だけが「昨日と違う」気がする。
何かが、確かに壊れたはずなのに——それが何だったのか、思い出せない。
全部全部、夢だったら良かったのに。
ななもり「ごめん、みんなに話したいことがあります。」
あの日見た夢の名前を俺はまだ知らない。
コメント
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完結おめでとうございます! 最高すぎました!めっちゃ感動です!!
こちらが、最終話となります。 長く長く、読んでいただき、ありがとうございました! 楽しんで頂けたら、幸いです!!