テラーノベル
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ハルカは、受付でネームプレートを受け取って固まっていた。
いつもはゲームの中でしか見ない“ガチ勢”たちが、リアルに存在していた。
機材が並ぶブース、大きなモニター、スポットライトの照明、そして観客のざわめき。
「すご……こんな空気、初めて……」
緊張で手汗が止まらない。
でもハルカの胸の奥には、もう一つ、強く高鳴る鼓動があった。
(この大会に、レイちゃんが来るんだ……!)
数日前。
ハルカはたまたま見かけた告知画像を二度見した。
『初心者歓迎・スプラ交流大会!』
ゲスト解説:レイ選手(ウデマエX)
(本当に……レイちゃんに会えるの?)
即エントリー。震える手で送信ボタンを押したその日の夜、彼女は眠れなかった。
ルールはナワバリバトルの個人戦・即席チーム制。
その場で組まれた4人チームの一員として、ハルカはステージに立った。
(今まで練習したんだ……わたしは、ちゃんと戦える)
ローラーを手に、深呼吸。
「行くよっ!」
初戦。チームはまとまりがなかったけれど、ハルカは裏取りで見事に2枚落としを決め、勝利に貢献!
2戦目は押され気味だったが、最後の塗りで粘って勝利。
3戦目——負け。でも、1キルも取れなかったC-時代の自分とは、明らかに違っていた。
控えめな拍手が会場に響く。
そして、マイクから聞こえたのは、落ち着いた低めの女性の声。
「ローラーの動き、光ってたよ。ちゃんと“味方を見てる”動きだった」
振り返ると、解説席。
そこにいたのは、ハルカが画面越しに何百回と見た人——
レイ。
前髪を無造作に横へ流し、黒のシンプルなジャケット姿。
見た目は静かで無口そう。でも、その一言に、会場の空気がピンと張り詰めた。
(わたしのこと……見てくれてた?)
胸がぎゅっとなる。夢のような気持ち。でも、まだ終わりじゃなかった。
「参加者の皆さんは順番に退出をお願いしまーす」
スタッフの声に促され、ハルカは自分の荷物を抱えてロビーへ向かう。
そのとき——目の前を、静かに歩いていくひとりの女性。
(……レイちゃんだ)
距離が、近い。
本当にいるんだ、この人。
——いま、声をかけなきゃ。
でも、何て言えばいいの?
ありきたりな「ファンです」?「応援してます」?
それじゃ、きっと何も残らない——
「……今日、わたしのプレイ、見てくれて……ありがとうございました!」
出た言葉は、思いがけずまっすぐだった。
レイは立ち止まり、ハルカのほうを向いた。
数秒の沈黙。そして、ふっと微笑んで言った。
「うん。いい動きしてたよ。……ナイスだった」
——たった、それだけ。
でも、その一言で、胸の奥があたたかくなった。
(あ……夢じゃない)
帰り道。
空は静かで、星がひとつ輝いていた。
「……ナイス、か」
口に出してみると、思わずにやけてしまう。
レイとは、もう何も話せなかった。
でも、たしかに“わたしのプレイ”で見てもらえた。
それだけで——十分だった。
「また、会えるように……もっと、強くなるから」
ハルカはローラーのグリップをぎゅっと握った。
「チャージャーに憧れて——“遠い武器”への挑戦」
レイが使うリッター4K。それに憧れたハルカは、ついにチャージャーに手を出す!?
でも、当たらない!当たらない!当たらなすぎて心が折れそう!?
ローラーとは正反対の武器に挑むハルカの“心の旅路”が始まる!
次回「スコープの向こうのわたし」お楽しみに!
コメント
2件
初コメ 失礼っ! フォロー ありがとう!!続き楽しみに してます✨️ 作品作り 頑張ってね🔥