初めて経験したのに以前にも経験したことがあるような感覚を抱く現象をデジャブというらしい。
大半は脳の機能が不安定になってたり過去の記憶を鮮明に覚え過ぎていてたり、なんかで特別意味なんかないらしい。
でも、きっとこれはデジャブでも記憶違いでもない。
_私はこの人に恋をしたことがある。
出会いは駅前のカフェ、店員の彼とお客の私。
最初はただの既視感だった。
似た顔なんていくらでもいる、きっとどこかですれ違ったのをたまたま覚えている。
その程度だと思っていた。
日に日に、昔の記憶を少しずつ思い出す。
その中にはいつも彼がいた。
名前も知らない、年齢も知らない。
ただ笑う彼の笑顔は忘れたくない、そう思えた。
今日も彼に会いに行く。
きっと彼は私の事なんか知らない、興味もないだろう。
私はただの客、ただそれだけ。
今日も彼は私にコーヒーを持ってきてくれる。
少し苦くて美味しい懐かしの味。
「なんでずっと付きまとってくるんだよ!もう俺らは終わっただろ!俺もう彼女いるんだよ!円満に解決しただろ!もうどっかいってくれよ!」
あぁそうだ。全部思い出した。
私はこいつに不倫をされた。
不倫されたストレスで解離性健忘になった。
診断を受けたあと、ふらっとこのカフェに来てこいつに会った。
なぜ思い出せなかったのだろう、なぜ今思い出してしまったのだろう。
コーヒーに涙が落ちてしまった。
あぁ、甘くなってしまった。
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