テラーノベル
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最終回の歓声がまだ消えないステージの上。デビュー組だけでなく、脱落した練習生たちも次々と上がり、抱き合ったり肩を叩き合ったりしていた。
笑い声と涙、歓声が入り混じるその光景の中で、チンウィはただ一人、ユメキを探していた。
見つけた瞬間、身体が自然に動く。
迷うことなくステージに駆け寄り、ユメキに腕を回す。
「…유메키!」 CHING YU
(…ユメキ!)
久しぶりの再会に、二人は無言で抱き合った。
ユメキの背中に手を回すその温もりが、チンウィにとって何よりも安心できる瞬間だった。
だが、ステージの上は混沌としていた。
ボーウェンが笑顔で、ユメキに握手を求める。
「유메키, 수고했어. 같이 무대에 설 수 있어서 행복했어.」 Bowen
(ユメキ、お疲れさま。一緒にステージに立てて幸せだったよ。)
抱き合ったままのユメキが、ほんの一瞬手を伸ばしてボーウェンと握手する。
その光景に、チンウィの胸がぎゅっと締めつけられる。
言葉は出さない。
無言のまま、手にしていたペンライトで――“ちょん”とボーウェンの腕を突く。
びくっとするボーウェン。
驚いた視線をユメキに向けるが、ユメキはただ首をかしげる。
「…천위?」 YUMEKI
(…チンウィ?)
チンウィは答えず、腕を強め、ユメキを胸に引き寄せる。
無言のまま、抱擁だけで独占欲を伝える。
周囲は大騒ぎだ。練習生たちが抱き合い、笑い、泣く。
けれど二人の間だけは、時間が少しだけ止まったようだった。
ユメキは何も知らず、ただ安心してチンウィの背中に顔を埋める。
その無邪気さに、チンウィは胸の奥の感情を噛みしめる。
「…유메키는 내 거야.」 CHING YU
(…ユメキは、僕のものだ。)
呟きは小さく、ユメキには届かない。
けれど、彼の独占欲は確かにこの瞬間に存在していた。
そして、舞台の喧騒の中で、二人だけの静かな時間が流れ続けた。
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