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「ハァハァハァ」
どうして、私は逃げているんだろう。
どうして、私は追われているんだろう。
どうして、こんなことになったんだろう。
どうして、どうして、どうして、…
どうして、Vampireに捕まったんだろう。
「逃げるなんて、よくないな。それでも俺たちのTargetか。」
首元に、牙の感触がする。
「ごめ、ん、なさ、い…」
「昔、お前みたいに逃げ出したTargetが1人だけいたよ。」
そこで意識が途切れた。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
私は今日から、高校生になる。
私が通うのは、平跳高校。
姉も通っていた学校だ。
姉は、ミステリー研究部に所属していた。
そんな姉から聞いたことがある。
ということを。
満月の日に学校の女子が1人、生徒会室に呼び出され、Vampireに攫われるそうだ。
ただ、そんなの、信じられる訳がなかった。
姉の話は、大体が根も葉もない都市伝説なのだから。
「新入生の皆さん、初めまして。生徒会長の山田涼介です。・・・」
入学式で挨拶する、生徒会長の山田さん。
彼からは、なんだかオーラを感じる。
それに、イケメンだ。
「・・・僕は、1年生で生徒会長になりました。この学校は、そんな大きな夢も叶えられる学校だと思います。是非、皆さんもこの学校で夢を叶えてください。」
「あれっ。今日って満月じゃない?」
「満月?だから何?」
「え?知らない?この学校のVampire伝説。」
「あー、信じてないけど。」
「そっか〜。Vampireって、イケメンの9人組らしいよ。」
「へ〜。」
女子たちの悲鳴が聞こえた。
「ちょっといいかな?」
生徒会副会長の、中島裕翔さん。
「どうしたんですか?」
「私たちの中の誰に用事ですか?」
そうやって騒ぐ女子たち。
「噂では、Vampireは、生徒会。」
「えっ?」
「だから、満月の今日、女子たちはあんなに必死なの。」
「そっか〜。」
その時、中島さんが口を開いた。
「私…ですか?」
「そう。絶対ね!」
中島さんは去っていく。
「ゆり!VampireのTargetになったんだよ!」
「え?Target?」
「Targetになったら、しばらくは戻ってこれないって言われてる。」
「私、どうすれば…」
「とりあえず、行きなよ。」
「分かった。」
放課後、私は生徒会室を訪れた。
「失礼します」
「いらっしゃ〜い」
「誰?」
「1年E組の米原ゆりです。」
「あ〜、俺が呼んだ。今回は彼女。」
「なるほど。じゃあ、こっちの部屋で待ってて。」
「はい。」
生徒会室の奥にある、応接室に通された。
そこで待つこと数分。
「入るよ?」
「はい。」
「腕、出して?」
「はい。」
私は腕を差し出す。すると、手錠がかけられた。
「これは!?」
「ごめんな、本当は俺だってこんなことしたくないんだけど…、仕方ないんだ。ごめん、ちょっと大人しくしてて。」
そう言うと、その人は出ていく。
しばらくすると、別の人が入ってきた。さっき、生徒会室にいた人だ。
「これ飲んで。」
言われるがままに、私は出された液体を飲む。
「あと少しで準備ができるから。待っててね。」
すると、少しずつ意識が薄れてきた。
「ごめん、睡眠薬盛った。」
目が覚めると、知らない洋館の中だった。
「おはよう。起きた?」
「ここは…?」
「ここは俺たち、Vampireの館。君にはしばらくここにいてもらう。」
「はい。」
「ちなみに、俺はヒカル。よろしくね。」
「はい。」
「ん?ヒカル、起きたの?」
「うん!」
「じゃあ、みんな集めるか。」
ヒカルさんを含めて、9人のイケメンが集まってきた。
コウタ、ユウヤ、ケイ、ダイキ、ケイト、リョウスケ、ユウト、ユウリ。他の8人はそう名乗った。
「まあ、しばらくすれば帰れるから。安心しな。」
「しばらくって…?」
「まあ、10日くらい?」
「学校は…?」
「心配しないで。俺たちが誰か分かる?」
「えっと…、生徒会、ですよね。」
「そう。だから、公休扱いにしてあるよ。」
「そうですか…」
それから数日。
私は洋館で、何不自由なく暮らした。
辛いことといえば、毎晩9人のうちの誰かに血を吸われること。
「今日は僕だよ!」
そう言って、今夜はユウリさんが入ってくる。
「ゆりちゃんって言ったっけ?名前似てるね!」
「だからなんですか?」
「別に?それだけ。じゃあ僕は、腕にいい?」
「はい。」
ユウリさんが私の腕に牙を立てる。この痛みも、もう慣れた。
血を吸う場所は、皆違う。今までで言うと、
ケイさんは耳。ケイトさんは首。ヒカルさんは顎。コウタさんは腰で、ユウヤさんは手の甲だった。
ある日のこと。
私は、洋館から逃げ出すことにした。
案外、セキュリティは薄かった。
簡単に外に出ることができた。
その頃。
「ゆりさーん。今日は俺で良かったかな…って、いない!?」
ユウトは、部屋を飛び出し、皆のところへ。
「みんな!ゆりさんがいない!」
「えっ!?」
「逃げ出したみたいだ。」
「俺たちのTargetだぞ!逃してたまるか!」
リョウスケが、飛び出していった。
洋館から出て、私はずっと走っていた。
リョウスケさんが追ってくる。すぐ後ろまで迫っている。
「ハァハァハァ」
ついに私は、リョウスケさんに捕まってしまった。
「逃げるなんて、よくないな。それでも俺たちのTargetか。」
首元に、牙の感触がする。
「ごめ、ん、なさ、い…」
「昔、お前みたいに逃げ出したTargetが1人だけいたよ。」
リョウスケさんが、私の喉に牙を刺す。
それからの記憶はない。
飛び出していったリョウスケを追って、俺も空を飛び、ゆりさんのところまで来た。
だが、もう遅かった。
リョウスケがゆりさんを押し倒していた。
「逃げるなんて、よくないな。それでも俺たちのTargetか。」
「ごめ、ん、なさ、い…」
「昔、お前みたいに逃げ出したTargetが1人だけいたよ。」
みるみる間に、ゆりさんの顔から生気がなくなる。
「お前の姉、さくらだ。」
リョウスケは、口についた血を拭いながらそう告げる。
「リョウスケ!」
「なんだ?」
「Targetは殺さない約束だろ。」
「こいつが逃げ出すのが悪いんだ。」
「だからって…、ゆりさんを見てみろ。今に死にそうじゃないか。」
その時、ケイトも到着した。
「大丈夫?」
「救急車呼んで!」
「うん!」
目が覚めると、そこは病院だった。
「おはよう、ゆりさん。」
「ケイさん…」
「リョウスケには、コウタがきつく言っておいたから。」
「ありがとうございます。」
「まだ体調も万全じゃないと思うから。まだ休んでて。」
「はい。」
それから1週間後。久しぶりに登校した。
「ゆり!久しぶり!大丈夫だった?」
「大丈夫ではないかな。」
「そっか…。Vampireだよね?」
「まあ…」
女子たちの悲鳴だ。
「山田涼介…。」
「ゆり!行ってきな!」
「うん…」
連れて行かれた場所は、生徒会室だった。
「あれっ、ゆりさん?」
「リョウスケ、何する気?」
「うるせー。とりあえず応接室開けろ。」
「ダメだ。お前とゆりさんを2人きりにはできない。ここで話せ。」
「分かった。」
「それでいい。」
「えっ!?」
「冷静になって考えたら、俺はVampireとしての禁忌を侵したことになる。本当に後悔している。だから、許してくれ!」
「とりあえず、顔上げてください。もういいですから。」
「俺は、お前を殺しそうになったんだぞ。」
「でも…、」
「あ、ちょっといいかな?」
「コウタさん?」
「今回の件で、リョウスケからはVampireの能力を奪っておいたから。」
「えっ?」
「あー、コウタは世界Vampire協会日本支部長だからね。」
「えーー!?!?」
「そういえばそんなのやってたね。」
「でも、私のせいでそんな能力を…」
「いいよ。お前が責任を感じることじゃない。それに、これでもう嫌いなトマト食わなくてよくなったし。」
「そうですか…」
「じゃあ、そういうことだから。またなんかあったら連絡する。そろそろ授業始まるよ。」
「はい!」
私と生徒会の面々は、教室に向かって駆け出した。
まだ、私とVampireの物語は、始まったばかりだ。