テラーノベル
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2025年7月4日。夜空を月が照らしている中、船は空を航行していた。
「だめだ!……他に手段が見つからない……」
「願いも届かなかった……」
「諦めるな!希望は……必ずある!」
「……希望?希望って何ですか?……聞こえてくるんです。俺に死んでほしいと願う声が……」
「そんな事はない!俺たちは!……」
「もう……いいですよ……。これ以上皆さんも世界も苦しめる訳にはいきません……」
「何を言っているんだ!」
「俺を下ろしてください。そうじゃないとこの船にも何が起きるか……」
「諦めるな!まだ……」
その瞬間船内にとてつもない轟音が鳴り響く。
「なんだ!?」
「わからない……」
「いや、あれを見ろ……」
「え……月が……」
「……」
直後激しい衝撃が船内を震わせる。
「やばい、敵襲か!」
「ちがう!さっきの破片が降り注いでいるんだ!」
再び爆発音とともに船内が揺れる。
「動力に損傷あり!このままじゃ墜落する!」
「何とか耐えてくれ!その間にセーフティポイントを割り出すんだ!」
「もうやってるよ!でも……」
「メインエンジン機能停止!もう限界だ!」
「……」
そして船は激しい炎に包まれて、地上に落下した。
衝撃から暫くして、彼らは意識を取り戻す。
「ぜ、全員無事か……」
「とりあえずこの船はもう無理だ、脱出しよう……」
1人が扉を開く。
「どうやら、地上みたいだね……」
「不幸中の幸いか……」
全員が急いで船外に避難する。
そして辺りの異様な雰囲気を感じ取る。
「ね、ねぇ周りにすごく人が集まっているよ……」
「あぁ、これだけの爆発だ……」
その時、1人の声が響く。
「あいつ、福永幸太だ」
辺りがざわつく。
「まずい、なぜバレたんだ!」
「全員、幸太を守るぞ……」
「……」
船の者たちは幸太と陽翔を守るように彼の周りを取り囲む。
その様子を見て人々は次々に話し出す。
「やっぱり、あれが福永幸太か」
「後ろの男だな。サタンめ」
「どれだけあんたのせいで私たちは……」
「あいつのせいでお姉ちゃんは……」
「なんであんな罪人をかばうんだ……」
「関係ない皆殺しだ」
「絶対に殺してやる」
「殺さないと」
「殺せ」
「殺せ」
「殺せ」
「殺せ」
人々は周りに落ちている瓦礫の石や棒などを拾い上げ、目線を逸らさずにゆっくりと近づく。
「各隊、準備は出来ているか……」
「装備はありませんが行けます……」
「お前らも行けるか」
「問題ない」
「やるよ……」
「幸太君、君は絶対に守る……」
そしてゼコウは幸太と陽翔に拳銃を一丁ずつ渡して話す。
「え……」
「幸太君、どれだけ絶望的な時でも僕たちは君を守りたい……。でも、この状況は恐らく君を逃がすだけで精一杯なんだ……。だから僕たちが一瞬隙を作るから、君は後ろを振り向くことなくその銃を持って走るんだ……その銃は君を守るお守りだからね……」
「で、でも……」
「僕たちは君を恨んだりはしていない。君と出会えて本当に良かった。だから君には死んでほしくない。それだけは忘れないでくれよな……」
「……」
「僕も戦います!ゼコウさん!」
「陽翔君、君はまだ若い。こんなところで足踏みしている場合じゃないはずだ。君は幸太君の親友なんだろ?なら一緒に走るんだ!」
「そ……」
「今だ!全員道を作れ!」
ゼコウの掛け声で隊員たちは周りの集団に突撃。そしてこじ開けるかのように1つの道が生まれる。
「行け!」
「そ、そんな……」
「く……。行こう!幸太!」
そして陽翔は幸太を引っ張りその混乱の中集団を抜けていく。
「結局最後まで守り切れなかったな……」
「でも、彼らは彼らで答えを出していくわ。それを信じましょう……」
走る幸太達の背後では大きな爆発音が聞こえた。
あれから何時間が経ったのだろうか。2人は暗闇の中必死に走った。訳も分からず走って行くとその道はどんどんと険しくなっていく。
草木をかき分けて山道を進んでいく。
そして夜が明ける。しかし日の光は月の破片でかき消されていた。
疲れ切った2人はその場所に座って、話を始める。
「なぁ、俺のせいでとうとう日の光まで入らなくなったみたいだ……」
「幸太のせいじゃないよ……」
「でも、俺が願ったからだよ……。あの日に……。どうして俺だけってさ……」
幸太はゆっくりと昔の事を話し始めた。
「20歳の時。あの時はいつもどうして俺は上手くいかないんだろうって毎日思ってた。働き出して最初は自分の為にこの人たちは強く言ってくれているんだって、今よりも成長してほしいからって期待を込めてくれてるんだって思ってた。きっと今よりも成長して結果を出せれたらみんな笑顔になってくれるって。他の上司も相談したら今だけだから頑張れとか言ってたんだ。だから俺は休日も休憩時間も関係なしに必死に勉強した、他の人以上に動いて経験を積んだ、いろんな人に仕事を教えてもらってそれを覚えて実践した。そしたら前よりも上手くできるようになったんだ」
「うん……」
「でも、いくら頑張っても、いくら努力しても、いくら結果を出しても彼らには関係が無かったんだ。彼らに言われたよ。お前はゴミだって、なんでゴミが頑張ってんのって?。そう、彼らにとって俺はただのゴミだったんだ。だから彼らはゴミを捨てようと必死だったんだよ。でもさ、それに気づいても生きるためには我慢をしないといけない。だから俺は我慢したよ。これが社会人になる事なんだって」
「うん……」
「彼らの言動に我慢して俺は必死に生きたよ。そしたら彼らは俺と直接話さなくなったんだ。でも彼らの行動はどんどんエスカレートしていってさ……毎日長文のメールが来るようになったんだ。中身は前と変わらないお前はゴミだとかさ、どうせ最後は孤独死して終わりだとかさ。もう、仕事の内容でもない事を長々と書きなぐったような整理されてない文章で書き連ねてるんだよ。俺……辛くてさ、彼女に相談したんだ」
「うん……」
「彼女とは長い事付き合って同棲しててさ、俺のことをよくわかってるから相談に乗ってくれたよ。だから会社ではどんなに辛くても家に帰れば彼女がいるから耐えられたんだ。でも会社での彼らの行動はどんどんひどくなるんだ。メールだけじゃなくて会社にいようといまいと関係なしに電話までしてきてさ。メールと同じような内容を2時間ぐらい延々としゃべるんだよ。謝罪しろとかさお前は俺を裏切ったとかさ……。でもそんな状況を何とか2年は耐えてきたんだ」
「うん……」
「そしたらさ、ある時から会社に行くといきなり頭痛や吐き気、めまいが起き始めるようになったんだ。それでも仕事は何とかしないといけないから必死にやったよ。でも、その症状は悪化していってさ、ついに仕事すらできなくなったんだ。だから上司に言って早退をするようになったんだ。でも病院に行っても原因は見つからなくて、それ以降出社してもすぐに耐えられなくなってすぐに早退をする事が多くなったんだ。そしてある時に受けた病院の先生に診断を受けたんだ。先生は一言でさらっと言っていたよ。鬱です。って」
「俺は再び上司に相談したよ。そしたらなんて言われたと思う?なんでそうなるまで相談しなかったの?だよ。そうか、この人は僕の話を聞いてなかったんだって思ったよ。そしてあの人達からも電話があったよ。鬱とか甘えんなよ、そんなんだからお前は鬱なんてなるんだってさ。僕はその日から会社に行けなくなったんだ」
「うん……」
「そして会社を休職してから1カ月もたたないうちに彼女から言われたんだ。貴方のせいで私の人生は滅茶苦茶よって……。死ぬならさっさと死になさいよって言われたんだ。僕はその時に耐え切れなくなったんだ……。なんで僕だけがこんなに不幸なんだろうって。どうして俺だけって……。みんな不幸だったら俺の不幸も不幸じゃなくなると思ったんだ……。でも、周りの不幸を祈っても僕は幸せにならなかった。何処まで行っても僕は不幸のままだったんだ」
「うん……」
「だから、僕は変わろうとした。不幸が不幸を呼んでいるんだと思ったから。どんなに苦しくても悲しくても笑顔で居ようって。そしたらさ、また陽翔とも会えるようになったし、転職して仕事も出来るようになったんだ。いろんなことを体験できたし、いっぱい笑う事も出来たんだ。でもね……あの時の彼らはずっと脳裏にいたんだ。かき消すためにどれだけ笑おうと、どれだけ前向きな言葉を話しても、彼らは僕を今でも嗤ってるんだよ。それでも僕は忘れるためにいっぱい笑ったよ、いっぱい前向きに過ごしたよ。でも、ふとした時に彼らがやって来るんだ。そして耐え切れなくなった時、思うんだ。どうして俺だけってさ……。それが、まさか本当にみんなを不幸にしてたんだよね……。僕が誰かを苦しめているんだよね。僕の願いのせいで……」
「違うよ幸太は……幸太は、ただ一生懸命生きてきただけじゃないか……。そうしないと耐えられなかったんだよ……」
「うん……。でもね、そうだとしても、これまでに僕のせいで苦しい思いをしている人や悲しい思いをしている人が数えきれないほどいるんだ。俺は贖罪を果たさないといけない。そしてそれは俺の命で果たさないといけないんだ。……本当はすごく怖い。怖いんだ。でも、これまで自分の幸せを探して願った結果周りを不幸にさせた男が、最後にみんなを笑顔に出来るんだぜ!だから……」
幸太は拳銃のトリガーに指を掛ける。
陽翔は叫ぶ。
「僕は笑顔になんてなれないよ!僕だけじゃない、ゼコウさんもフミネさんもアルパさんもジダイさんもイゴエさんも皆悲しむよ!」
幸太はハッとしたような顔をした。
「そうだな……。結局俺は最後まで周りを不幸にしてしまうのか……」
幸太は少し笑った。そして幸太は拳銃を手から放り捨てながら話す。
「わかったよ……。決めた!俺は……」
そして銃声が響き、再び太陽が地球を照らした。
これにて第28話、おしまい。
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